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日本フットボールリーグ(JFL) 2019

FC今治

 「FC今治」が、3ゲームを残してリーグ戦の4位以内を確定、Jリーグ(J3)への参入をほぼ確実にした。 "ほぼ" というのは、今後Jリーグ側の審査を経た上で確定するからである。
 審査は、JFLでの4位以内に加えて、「jリーグ百年構想」の認定チームであること、今シーズンのホームゲーム観客数、ホームスタジアムの設備条件、運営企業の財務状態などに対するもので、FC今治の場合問題になりそうな項目は無いことから年内にはjリーグ入りが確定するはずである。
 FC今治は、実はかなり歴史のあるチームで、創設は1976年まで遡る。その後、一時は愛媛FC(現在J2に所属)の下部組織になっていたが、2014年に元日本代表監督の岡田武史氏が代表となって、本格的にJリーグ入りを目指すチームとなった。
 四国のトップから2017年にJFLへと順調にカテゴリーを上げてきてはいたが,、やや足踏みという印象もあった。2019年、元日本代表の駒野友一、橋本英郎、J1札幌のレギュラーだった内村圭宏という強力なベテラン選手を獲得した。バックスでサイド攻撃もできる駒野、ボランチとしてゲームを創れる橋本、ゴールゲッターの内村というJ1レベルの3選手が揃ったことでチームの「柱」ができ、さらに監督に岡田氏と縁の深い小野剛が就任してチーム力が向上、ついに「4位の壁」を突破した。実際、4位以内確定がかかったゲームの唯一の得点者は橋本英郎である。
 ちなみに、JFLからJ3へ参入(昇格)する成績条件が「上位2チーム」ではなく、なぜか「4位以内」となっている点が実に面白い。JFLというリーグは「アマチュアの最高峰」という位置付けと、Jリーグへの登竜門という2つの性格を併せ持っているのだが、このリーグにはプロ化を目指さないものの大変強いチームが2つあって、例年上位を占めている。そのため、条件を1・2位とすると、この強豪アマチュア2チームが文字通り壁となって、昇格が不可能になってしまうからなのである。
 その2チームとは HondaFC とソニー仙台で、いずれも天皇杯ではおなじみのチームであり、今年の JFLでも Honda は既に優勝決定、ソニーも2位に付けている。さらに、Hnda は今年の天皇杯でJリーグチームを3つ破り、準々決勝で鹿島アントラーズ相手に大接戦を繰り広げたほどの強さで、「天皇杯優勝を目指す」と公言していたことが少しも妄想には聞こえない強豪チームである。
 実は、今年のJFLでは「jリーグ百年構想」の認定を受け、現在4位以内にいるチームがもう一つある。それは「武蔵野シティFC」で、4位を確保する可能性も決して低くない。ただこちらは、スタジアムについて整備確約という条件付きであり、観客数でもあと2試合で約1万人上積みしなければならないという高いハードルに直面している。

武蔵野シティFC

 Jリーグ(J3)に参入する条件の一つに「ホームゲームでの観客数が平均 2,000人以上」と言う項目がある。運営組織の法人化やスタジアムの設備基準、育成組織の整備などといった他の条件は、厳しくはあっても基本的に「自己努力」や自治体・スポンサーの協力などででクリアできるものである。それに対して「観客数」は文字通り相手のあることであり、ある意味では最も厳しい条件と見ることができる。
 現在 JFL で4位に付けている「武蔵野シティFC」は、既に「Jリーグ百年構想クラブ」の認定を受けていて、このまま4位以内で終了すれば J3 への参入も基本的には可能となっている。困難と思われたスタジアムについても、Jリーグ側の条件緩和によって言わば先送りする形でクリアできそうなのだが、最後のハードルとなりそうなのが「観客数」である。
 11月20日現在、武蔵野シティFCは全15ゲーム中14ゲームを終えた段階で、ホームゲームの総入場者数が 24,297人、1ゲーム平均では 1,736人となっていて、最後の1ゲームに 5,703人以上の入場者が来てくれないと平均 2,000人には到達できない。しかも、ホームスタジアムの公式収容人員は 5,000人なのである。実は、14ゲーム目の入場者数は 5,284人と(おそらくは芝生席のお陰で・・)これを超えている。最後のゲームということで 5,700人以上の人々が来てくれる可能性もあるが、厳しいことには変わりない。

ホームゲーム観客数という "壁"

 それでは、そのハードルを超えて参入しているはずの現在の J3 の各チームの集客状況はどうなのだろうか。若手の強化を目的に参入が許されている三つの J1 セカンド・チーム(23歳以下)を除く15チームの実績を下に示すが、11月20日現在で平均 2,000人を超えているのは9チームだけで、4割を占める6チームが 2,000人未満となっている。
  北九州 5,769
  熊 本 5,584
  群 馬 3,451
  長 野 2,930
  相模原 2,885
  富 山 2,837
  沼 津 2,372
  鳥 取 2,239
  讃 岐 2,085
  八 戸 1,756
  藤 枝 1,613
  秋 田 1,590
  岩 手 1,446
  福 島 1,177
  YS横浜 1,105
  (2019年11月20日現在)
 最も少ないYS横浜は昨年も平均 1,005人だったという事実を見ると、新規参入チームに課している 2,000人という条件に些かの疑問を感じるところではある。だが、私はこの「観客数条件」は大切だと思っている。この基準を極端に下回るチームには警告を与え、それが繰り返されるようであれば究極的にはJリーグからの退会を迫って良いのではないかとさえ考えている。それは、本当に地域社会に受け入れられたチームであれば、入場料収入が経営の重要な柱の一つであるはずだから。逆に、それが極度に少ないにも関わらず経営が成り立つとすれば、特定の企業や個人からの支援を頼りに経営していることに他ならず、明らかに「Jリーグの理念」に反するからである。
 ちなみに、既に JFL から来季の J3 参入が確定(Jリーグの審査に合格)しているFC今治は、あと2ゲーム残しているが既にホームゲームの観客数合計 39,561人、平均 3,043人と参入条件を軽々クリアしている。それどころか、今季の J3 と重ねれば北九州、熊本、群馬といういずれも元 J2 のチームに次ぐ4番目に相当する観客を集めていることになる。

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