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「ハロルドとモード」コリン・ヒギンズ著 読書感想文

自殺の真似事を繰り返す19歳の青年ハロルドは、他人の葬儀に出席する事が趣味の1つ。
ある葬儀で、自分と同じ様に故人と無関係の老女モードと出会う。無邪気に盗んだバイクや車で走り出す79歳のモードと過ごすうち、その天衣無縫ぶりに魅了されるハロルド。

モードの話す言葉はいつも自由で優雅。
凡人の素朴な疑問に地球レベルで返す奇抜な言動にハッとさせられたり笑ってしまったり。
創作の中にいるアウトサイダーはいつだって魅力的だ。

まるで読み手の呼吸のリズムに合わせてくれているような文章の流れは、登場人物たちと伴走している気にさせてくれる。こちらもモードやハロルドと共に盗んだ車に乗っているのだと思うと愉快さが増す。

私が10代の少女であれば、おおらかで常にスリルをくれるモードとのドライブを手放しで楽しんだであろう。
残念ながら、大人の私は自由の裏側にある虚しさや退廃を時折行間から読み取ってしまった。
だからこそ、モードとハロルドの愛の日々がさらに輝いて見えたのだが。

自らの人生をデザインする事。
ままならない人生だからこそ、選択し、自分を取り巻く全てを包むように生きる事。
生まれつき手にしている「幸福追求権」を改めて握りしめたくなった。



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