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田舎の公立小中学校からケンブリッジに行った話 - その5

今回はイギリス留学の費用について書きます。私が留学した時からかなり時間が経っている(20年)ので、かなり値上がりしています。ただ、どういうものに費用がかかるか、どうやって調べれば良いのかはそこまで変わらないので、参考にしていただければと思います。

イギリス留学の費用

かかる費用は、大きく3つです。

  1. 学費

  2. 寮費(住宅費)

  3. 生活費

高いものから順番に説明します。

学費

具体的な金額の前に、学費を決める要素をいくつか紹介します。

まず、イギリスの大学はほぼ全て公立大学です。なので同じ学部であれば学費は大学ごとにほぼ同じです。

学費に違いが出る要素の1つ目は学部です。医学部と実験器具を使う工学部など理系学部は高いです。理系学部でも数学や理論物理など、実験道具を使わない理系学部は安いです。人文科学(文学部とか、社会学とか)の学部も同じぐらいの値段です。

次に違いが出る要素は、学部か大学院かです。学部は英語でUndergraduateといい、大学院はPostgraduateと言います。大学院は修士 (Master) と博士 (Doctor)に分かれます。学部による学費の差ほどは大きく無いです。

最後の要素は国籍です。イギリス国籍を持っている場合は一番安くて、あとはそれ以外です。昔はEUの国籍を持っていると安かったのですが、EUを離脱したのが理由でどうも無くなってしまったみたいです。それぞれHome Student、Overseas / International Students と呼びます。

学費を調べるには、自分が行きたい学部、大学・大学院どちらかを元に、各大学のサイトで調べます。「大学名 + Undergraduate + Tuition Fee」で検索をかけると学部の学費が、「大学名 + Postgraduate + Tuition Fee」で検索をかけると大学院の学費が調べられます。

例えば私がUndergraduateで通っていたWarwick大学だと、こちらのページで調べられます。
https://warwick.ac.uk/services/finance/studentfinance/fees/overseasfees/

一番上にある"Ancient History and Classical Archaeology"は2020年入学の場合20,210ポンド、2021年入学だと21,220ポンド、2022年入学の場合22,280ポンドです。2022年5月時点で1ポンドは約160円なので、日本円でだいたい350万円です。イギリスの大学は3年で終わるので、3年間で1050万円です。

ケンブリッジ、オックスフォードに行く場合は、さらにカレッジ費というのがかかります。カレッジというのは説明が大変なのですが、ケンブリッジとオックスフォードにはカレッジと呼ばれる数十の学校のようなものがあり、大学生は必ずどこかのカレッジに所属します。授業自体は学部によって行われるのですが、チュートリアルという個別授業が開かれるのがカレッジ内で、寮も各カレッジ内や敷地近くにあり、学食も各カレッジ内にあります。

カレッジ費はカレッジによって微妙に差があるのですが、学部制の場合こちらのリストを見るとおおよそ年間1万ポンドです。学部の費用は他の大学とそんなに変わらないので、人文系もしくは実験器具を使わない理系学部の場合は、350万+160万の510万が年間かかり、3年で1530万円となります。

学費(大学院)

大学院の場合は、taught course (教えられるコース=だいたい修士課程を指す)とresearch course(研究するコース=だいたい博士課程をさす)に分かれています。

これもイギリス国籍を持っている人、そうで無い人で大きく値段が異なります。例えばWarwickの場合だと、"MSc Advanced Economics"という経済学のコースで27,930ポンド(446万)と学部より少し高めです。
https://warwick.ac.uk/services/finance/studentfinance/fees/postgraduatefees

寮費

次に高いのは住居費です。これはまずロンドンの大学に行くのか、それ以外の場所の大学に行くのかでかなり違います。東京に住むか、それ以外に住むか、というのと同じで、ロンドンは住居費が高いです。さらにいうと生活費全般高いです。

Imperial Collegeというロンドン大学の1つだと、部屋のタイプにもよりますが、一人部屋だと一番安いところで週129ポンド、部屋にトイレがついているような高いところでは200ポンドを超えるようです。それぞれ週2万円から3万2千円です。一月4週間として、月当たり8万から12万という感じで、大体東京の家賃と同じようなイメージです。こちらが寮の費用のリストです

もうちょっと郊外にあるWarwickだと、週に高くて200ポンド(約32,000円)、安いところで180ポンドぐらい(約28,000円)です。月に12万です。

こちらのリンクから"Search by Halls"をクリックすると、各寮の外観と値段が出ます。一番安いのは週85ポンドなど、ロンドンよりかなり安くなっています。ただし、結構設備がボロかったり、風呂トイレを共有する人がめちゃめちゃ多いのでは無いかと思います。この中でLakesideというのが私が留学した当時一番新しかった寮で、学生の中で一番人気が高かったです。キッチンなど共用スペースを4人でシェアして、各部屋にトイレと風呂がありました。これで週173ポンドです。

留学生の場合家探しが大変ということもあって、早めに応募すれば寮に入れることが確約されていることが多いです。

寮の費用を調べるには、「大学名 + accommodation + fee」で検索すると出てきます。

生活費

最後に生活費です。これは切り詰めようと思えば結構安くすることもできます。一番でかいのは食費ですが、私の場合月に6千円ぐらいで済んでいました。イギリスは野菜や肉がかなり安いので、贅沢をせずに自炊をすれば、1万円かからずにすむと思います。もっとも最近はEUを離脱したこともあって、もうちょっと物価が上がっているかもしれません。

また、寮に入れず自分で家を借りた場合でも、イギリスの住宅では家具がついていることが普通です。なので電化製品を買ったり、机や椅子などの家具を買う必要はありません。

電化製品についても、卒業していく学生が引っ越し前に売却していくことが普通で、大学内の至る所でチラシが貼ってありました。今ならネットで検索できるのかもしれません。これで電化製品やそれ以外の教科書なども、中古で安く手に入れることができます。

毎月の生活費はどれぐらい切り詰めるかにもよりますが、月に5万円もあればかなりリッチな生活、3万でちょっと貧しい生活ができると思います。

ちなみにWarwickのサイトに生活費の見積もりが紹介されていました。
食費が3050ポンド、本などが520ポンド、その他服、携帯、洗濯、娯楽費など諸々2775ポンドで合計6345ポンド(101万)となっています。娯楽費が多すぎる気がしますが、年間100万ぐらいかかるのでしょう。

留学費用合計

まとめると、学部生で3年間行きたい場合は、

人文系+実験器具使わない理系:
学費1050万 (350万 x 3)
寮費432万 (12万 x 12 x 3)
生活費303万 (101万 x 3)
合計 1785万

さらに大学院の修士課程に1年行きたい場合は
学費 446万
寮費 144万
生活費 101万
合計 691万

です。

奨学金について

留学費用はかなり高くなっています。全額支払れば良いですが、そうでなかったとしてもまだ諦める必要はありません。

日本の奨学金は貸与型が多い(=借金)ですが、イギリスでは給付型の奨学金制度が多くあります。大学が個別に持っている奨学金も多くあります。

私は利用したことがないので、細かな申請方法や、どのような奨学金があるのかについては詳しく紹介できません。ただし、奨学金を調べる方法として、大学名とScholorshipで検索すると、各大学の奨学金制度を調べることができます。

例えばこちらはWarwickの奨学金のページです。学部(Undergraduate)、大学院修士(Postgraduate Taught)、大学院博士(Postgraduate Research)と分かれています。

Undergraduateの奨学金を調べると、Warwick Undergraduate Global Excellence Scholorshipというのがあり、これは留学生のみが応募できる奨学金です。250人の枠があり、20人が学費全額免除、160人が年間13,000ポンドの給付、70人が年間2000ポンドの給付、という内容になっています。

個別の大学以外でも奨学金制度があるので、ぜひ調べてみることをお勧めします。また、以前紹介したatelier basiなど留学をサポートしている団体に問い合わせるのも良いと思います。加えて、どの大学も財政的なサポートについて相談に乗ってくれる窓口があります。"Financial Support"で検索すると窓口がわかります。

これは安宅和人さんの「シン・ニホン」という本に書かれていたことですが、日本は「主要国で唯一PhD取得に費用がかかる残念な状況」だそうです。この本で紹介されているのはアメリカに留学した場合ですが、PhD(博士課程)の場合、「学費も生活費、医療保険も大学側からサポートしてもらえる」のだそうです。イギリスはそこまでではないとは思いますが、博士課程の場合何かしらの奨学金が出て、出費が抑えられるのは間違いないと思います。傾向としては、学部生よりも大学院生の方が手厚い財政的支援を受けられる傾向にある、というのはその通りだと思います。いずれ研究職に進みたいと考えているのであれば、学部から留学したとしても、博士課程の費用の安さを考えたら日本の大学に通うのとそこまで費用的な差は出てこないかもしれません。

まとめ

今回は留学にかかる費用についてまとめました。今回久しぶりに自分でもいくつかの大学の学費を調べてみたのですが、自分が留学していた時より驚くほど値上がりしていました。学費だけでいうと、2倍以上になっています。今後も値上がりの傾向はあるかもしれません。

金銭面で以前より留学のハードルが上がっていると言えます。ただし奨学金制度は日本よりはるかに充実しているので、お金がないからと簡単にあきらめない方が良いと思います。

次回はどうやったら留学できるのか、個人的な経験から思うところを紹介する予定です。

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