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コロナを題材にした3分シナリオ

コロナを題材にしたシナリオ書きました。

THE唐突。
行動は唐突なのですが、色々思うことあり、このような奇行に及びました。
世界中でコロナ感染者はどんどん増えるし、リモートワークになるし、お店は閉まるし、自粛自粛の世の中で、本当に自分って無力だなーと痛感し、何が出来るんだろうと考えるものの、何も出来ない日々を過ごす、今日この頃です。

というわけで、何か出来ることをやりたいけど、考えた結果、何もできない自分みたいな人に向けて書こう、ということで書きました。

「一歩踏み出す勇気」という爽やかなテーマです。
シナリオ自体は3分で読めます。多分。


タイトル
カイブツはいない

あらすじ
世界は、突如出現した、人間を襲う謎のカイブツの脅威にさらされていた。
カイブツに関する情報は少なく、日本での出現もあまりないが、犠牲者が出始めていた。
しかし、リモート勤務になった会社員の金田良平には全く関係ないこと。いつも通り家からは一歩も家に出ず、リモートワーク合間にネットサーフィンする日々。ただカイブツが襲ってきた時のために包丁は手放さない。右往左往する政府や企業を見て、非日常感を楽しみながら、評論家たちと同じように、カイブツへの対応がままならない政府や企業をネットで批判していた。そんな時、犠牲者である少女の母親のインタビュー映像が目に入り、「娘を殺したのはあなたたちだ」と訴える。

登場人物
金田良吾(28)…会社員。広告代理店勤務。
岸本美由紀(36)…医療事務スタッフ。シングルマザー。
評論家A
評論家B
評論家C
アナウンサー(声のみ)


本編

〇金田の部屋
荒れた室内。
雑多に置かれた剥き出しの一本の包丁。
スーツ姿の金田、PCを操作している。
SE:キーボード音
SE:特集のOP音
アナウンサーの声「特集です。突如世界の各地に現れ、人間を襲い始めた謎のカイブツたち。依然、彼らの正体は不明。日本は他国に比べて被害が少ないものの、犠牲者は日に日に増えています」
SE:叫び声や逃げ惑う声、大勢の足音
アナウンサー「ニュースワンでは、この謎の多いカイブツについて独自に取材しました」

〇PC画面
ニュースワンのインタビュー映像。
評論家A「彼らは知能が低く、手当たり次第、視界に入った人間を襲います。しかし逆に言えば、人間にだけ反応するので、屋内にいれば、まず安全でしょう」
評論家B「彼らは音に敏感です。屋内に隠れていても、わずかな音に反応して襲ってきます。そうなればもう袋の鼠ですよ。満員電車での通勤なんてもってのほか」
評論家C「思ったほど脅威ではない。刃物などで体を刺して、ひるんだところを逃げられたというケースも意外と多い」
SE:着信音

〇金田の部屋
   動画を止めて、電話に出る金田。
金田「お疲れ様です。金田です。…やはり中止ですか。わかりました。カイブツの被害も増えてますし、仕方ないですね。まあ、見たことないですけど。ええ。本当にいるのかって感じですよ。意外と弱いらしいですよ、カイブツって。ええ。聞きました?カイブツ対策として1世帯に果物ナイフ一丁これから配るって。ええ。本当に。何やってんだっていうね。バカなんですよ。政府って。ははは。はい、では失礼します」
   電話を切る金田、包丁をチラリと見る。
   PCに向かい、動画を再開し、キーボードを叩く金田。
SE:キーボードの音

〇PC画面
SE:キーボードの音
   Twitterに打ち込まれる金田の投稿テキスト。
  『政府が無能すぎて呆れる』

〇金田の部屋
   投稿テキストを打ち込んでいる金田。
SE:キーボード音
評論家Aの声「ここまで被害が大きくなってしまったのは、政府が適切な対カイブツ施策を早急に行わなかったからですよ」

〇PC画面
   Twitterに打ち込まれる金田の投稿テキスト。
SE:キーボード音
『対応遅すぎるんだよ。無能な政治家が日本のトップなのが恥ずかしい』

〇金田の部屋
   PCを操作する金田。
SE:キーボード音
評論家Bの声「カイブツがいなくなった後ですよ問題は。経済は今、壊滅的です。それを巻き返すのに、どれだけの歳月が必要か」

〇PC画面
   Twitterに打ち込まれる金田の投稿テキスト。
SE:キーボード音
『リモートワーク中のサラリーマンの方が政府より仕事してる』

〇金田の部屋
   PCを操作する金田。
SE:キーボード音
評論家Cの声「働き方改革の一番の功労者はカイブツなんじゃないですか。下手な企業家や政治家なんかより、よっぽど優秀です」

〇PC画面
   Twitterに打ち込まれる金田の投稿テキスト。
SE:キーボード音
『一周回ってカイブツさまさま。カイブツ様、リモートワーク中はスーツ着なくて済むようにしてください』
美由紀の声「誰も何もしてくれませんでした。誰も何も…」

〇金田の部屋
   金田、美由紀の声に反応して、動画再生ページを見る。

〇PC画面
   美由紀、辛そうな顔で視聴者に訴える。
美由紀「カイブツが憎い…もちろん憎いです…でも、娘は…娘が死んだのは…あなたたちのせいよ!」
   動画が止まる。

〇金田の部屋
   動画を止めた金田、顔をしかめている。PCを操作し始める。
SE:キーボード音

〇PC画面
   打ち込まれていくTwitter投稿テキスト。
   『自分の身くらい自分で守れよ』
   投稿ボタンを押そうとして―。
(フラッシュ)美由紀の声「誰も何もしてくれませんでした」

〇金田の部屋
   なぜか罪悪感が沸く金田。包丁を見る。
金田「俺は悪くない…」
   金田、動画を再生する。

〇PC画面
   美由紀のインタビュー映像。
美由紀「あなたたちは頭が良くて、立派なのかもしれないけど、何もしない。遠くから素晴らしいことを、それらしいことを言うだけで、何もしてくれない」
   美由紀泣く。

〇金田の部屋
   金田、ギュッと拳を握る。

〇(フラッシュ)PC画面
   ニュースワンのインタビュー映像。
評論家A「屋内にいれば、まず安全でしょう」
×   ×   ×
   金田のツイート。『政府が無能すぎて呆れる』
   ×   ×   ×
   ニュースワンのインタビュー映像。
評論家B「満員電車での通勤なんてもってのほか」
×   ×   ×
   金田のツイート。
『対応遅すぎるんだよ。無能な政治家が日本のトップなのが恥ずかしい』
   ×   ×   ×
   ニュースワンのインタビュー映像。
評論家C「思っているほど脅威ではない」

〇金田の部屋
   金田、拳をテーブルに叩き付ける。
金田「俺は悪くない!」
   頭を抱える金田。
美由紀の声「助けてくれとは言いません」
   金田、PC画面を見る。

〇PC画面
   美由紀のインタビュー映像。
美由紀「今、起きてることを他人の目じゃなく、自分の目で見て、感じて、考えてほしい。自分に何が出来るのか」

〇金田の部屋
   金田、呆然と美由紀の言葉を反芻する。
   PCを閉じる。
   ゆっくりと包丁に手を伸ばす。
   じっと包丁を見つめると、立ち上がり、おもむろに部屋を出ていく。

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