日本のジェンダーギャップの根っこを考える【第2回】
こんにちは、こめだまいです。
前回から「日本のジェンダーギャップの根っこを考える」と題し、なぜジェンダーギャップが起きているのかを探っていく企画をしています。
ジェンダーギャップについて「日本って遅れているよね」と言う認識も広まってきましたが、対策についてはメンタル面での指摘ばかりが目立ち、地に足ついた議論がなかなか聞こえてこないなと感じていました。
こめだは一般企業の人事部員で、ジェンダーの専門家ではありませんが、自分なりに勉強しながら分析したことをまとめていきたいと思います。
ご意見やご指摘、アドバイスがあればぜひ教えてください!
第1回では男女共同参画局の統計を用いながら、女性の働き方や賃金格差を生み出しているのは就業率ではなく、働き方の「質」だと言うことを明らかにしました。
これからなぜ「質」の差が男女でうまれてくるのか、日本の人事施策や労働慣行を踏まえて考えていきたいと思います。
日本型雇用システムが女性活躍を難しくしている
※先にお詫びです。
以下の文章のうち、労働政策や人事制度に関する説明は濱口桂一郎先生の『働く女子の運命』『新しい労働社会』を参考にしながら書きました。
少しでも興味を持った方は濱口先生の著作を実際に読んでいただくことをお勧めします。(以下のリンクをクリックしても、こめだには一銭も入りません)
濱口先生によると、日本型雇用システムの特徴は「職務のない労働契約」です。
それに対して欧米など諸外国では、職務を定めたうえで会社と労働者が労働契約を結びます。
「職務がない」ことが長時間労働や転勤、さらには年功賃金や正社員と非正規の待遇差など、男女の差を生み出しているということが指摘されています。
日本で女性活躍が進まず、ジェンダーギャップが縮まらない背景には日本型雇用システムがあるのです。
日本型雇用システムは様々な課題を引き起こしていますが、今回はそのなかでも働く女性のなかで話題になりやすい「長時間労働」を取り上げます。
例:長時間労働
働く女性の悩みとしてよくきかれるのが「仕事と家庭の両立」です。
長時間労働をする男性社員に合わせると子供のケアや家事などに割く時間がなくなってしまいます。
一方時短勤務などでもすれば、一人前として扱われず、責任ある仕事を任せてもらいにくいという職場もあります。
なぜ日本では正社員、特に総合職となると長時間労働が当たり前なのでしょうか。
①付き合い残業
日本では労働契約で職務の定めがないため、仮に自分の仕事がおわっても他の人がまだ仕事をしていれば手伝うことが当然視されてしまいます。
②「やる気」を見せるための長時間労働
欧米であれば職務に対する貢献度や成果に対して人事評価を行いますが、日本では職務が定められていません。
ジョブローテーションで経験がない業務をいきなり担うこともあります。
人事評価では仕事への姿勢や性格も含めた「能力」に対する評価が行われることになります。
長時間労働をすることで上司に「やる気」を見せると言うことがまかり通るのです。
③解雇規制のための調整弁
日本では整理解雇(会社が経営不振の打開や経営合理化を進めるために、人員削減を目的として行う解雇)が欧米と比べて厳しく制限されています。
整理解雇を行う前には労働時間を減らしたり、配置転換をしてできる限り解雇を回避することが求められます。
通常時には長時間労働をしていないと、なかなか不況時に労働時間を減らすことはできません。
解雇されないかわりに長時間労働することはやむをえない、と言う立てつけになっているのです。
④労働時間に対する法規制
EUでは1週間当たりの労働時間は48時間と定められています。
割増賃金を払ったとしても48時間しか働けないのです。
それに対して日本の法規制は緩く、割増賃金を払えば36協定に違反するまで働かせることができます。(③で述べたとおり解雇を防ぐためにはやむをえないと言う事情があります)
男女問わず週48時間しか働かない国と、正社員、特に総合職であれば長時間労働が当然視されている国では、どちらが女性が働きやすいか想像するのはたやすいでしょう。
次回に向けて
今回は長時間労働を取り上げ、日本型雇用システムが女性の働きにくさに加担している様子をまとめてみました。
様々な論点が複雑に絡み合い、長時間労働と言う課題に帰結していることが伝わったかと思います。
次回は終身雇用と年功賃金について取り上げていきたいと思います。
書きたいことが多くまとまらず、連載形式になって恐縮ですが、よろしければ次回もお付き合いください。