保育園にも幼稚園にも行ってない約14万人の「無園児」の実態が研究で明らかに!

 余り知られていないのですが、現在、3歳以上で保育園にも幼稚園にも行っていない子ども達は、約14万人います。

 一般的な感覚だと、保育園や幼稚園に「普通は」通わせます。

 が、保育園や幼稚園は制度上は、行かせても行かせなくても親の自由なので、割合は少ないですが保育園にも幼稚園にも通わせない、という選択肢もある状況です。

 ただ、どんな家庭の子どもが保育園にも幼稚園にも行っていない、「無園児」なのか、よく分かっていませんでした。

 ある自治体の首長さんに聞いても「うーん、外国の方かなぁ。でもそんなに人数が多いとも思えないし・・・」と首をかしげていました。

 今回、北里大学医学部の 可知 悠子 さんの調査( https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20190327-01.html )によって、それがどんな家庭の子ども達なのか、初めて見えてきました。

社会的に不利な環境の子どもが不登園児に

 北里大学からのプレスリリースを引用します。

 子どもの貧困が社会問題となっている昨今、幼児教育が貧困の連鎖を断つ鍵として注目されています。アメリカの経済学者ヘックマンによると、質の高い幼児教育は、低社会階層の家庭の子どもの非認知能力(社会性や忍耐力など)を伸ばすことで、成人後の経済状況を改善する効果が期待されています。
 しかし、その一方で、海外の先進国の研究では、社会的に不利な家庭ほど幼児教育を受けていないことが指摘されており、日本でも同様の傾向が懸念されています。
 そこで、全国から抽出した子ども(平成13年生まれ17,019名、平成22年生まれ24,333名)を対象に、3、4歳時点で保育園・幼稚園・認定子ども園に通っていない(未就園)の要因を調べた結果、3歳以降の未就園は低所得、多子、外国籍など社会経済的に不利な家庭や、発達や健康の問題(早産、先天性疾患)を抱えた子どもで多い傾向が明らかになりました(下グラフ)。この傾向は平成13年、22年生まれの子どもの両方で一貫して見られました。

 僕はこの研究結果を見たときに、僕の胸には「やはりな」という思いと「まずいぞ」という思いが同時に湧き上がってきました。

 自分が医療的ケア児のための保育園をしているので、一部の障害児は保育園にも幼稚園にも通えていない状況であることは知っていました。

 ただ、障害児だけでなく、低所得世帯や多子世帯、外国人世帯等の子ども達も「無園児」になっていたことは驚きでした。

 本来無料で保育園や公立幼稚園に通える低所得世帯まで「無園児」になっている理由は、母親が就労していなくて公立幼稚園が近くにないパターン、保育料以外の費用(課外活動費や給食費など)が負担になっている、親がメンタルヘルスの問題を抱え、入園手続きや通園ができない、などが推測されます。

 そして「まずいな」と思ったのは、保育園や幼稚園という「セーフティネット」を最も必要とする人たちが、そのセーフティネットから漏れてしまっている、ということを意味するからです。

保育園・幼稚園というセーフティネット

 保育園や幼稚園は、子どもにとっては大きなセーフティネットです。

 低所得世帯でも給食があることで栄養をカバーできます。また、不適切養育世帯ならば、虐待やネグレクトの兆候を、いち早く気づくことができます。

 発達障害等の傾向も、毎日触れている専門職の先生が気づき、適切な療育や支援に繋ぐことが可能になります。

 しかし、こうしたセーフティネットを最も必要とする家庭に保育園・幼稚園が「通わせても通わせなくても自由」という、親の意志や能力に依存する仕組みになってしまっていることが社会的に正しいのか、という問題を改めて当研究は問いかけているように思います。

幼児教育無償化したなら、義務化へと移行すべき

 先日、幼児教育無償化法案が国会を通過しました。ただ、幼児教育が無償化されても、保育料以外の費用はそのままかかり続けますし、親のメンタルヘルスに問題があって通園が難しい場合は、引き続き子どもは無園化するでしょう。

 幼児教育無償化まで行ったのならば、「親は、子どもが3歳以降になったら、保育園か幼稚園に通わせなければならない」という「義務化」に歩を進めるべきです。

 今回の北里大学医学部可知先生の研究は、「保育園等義務化」の必要性の、強力なエビデンスになったと思います。

 この研究結果が、多くの人に知られますことを。

 https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20190327-01.html
 

注)可知先生の研究では保育園にも幼稚園にも通っていない子どもを「未就園児」と表現していますが、近接した「未就学児」という言葉のニュアンスは、「行く予定だけどまだ行っていない」というものです。

 一方で、この子ども達は、低所得や障害等、社会経済的環境によって「通う自由が奪われている」という状況です。よって「無園児」という言葉を意図的に選択しています。

 子ども達にとって「無園」は地域との繋がりを断たれた「無縁」でもあるのです。

注)誤解が多いので追記しますが、保育園等義務化は週5フルタイムということではなく、現在の一時保育がそうであるように、週1から週5まで幅のある利用の仕方を想定しています。

 また、義務教育年齢引き下げは先進諸外国で既に実施されているので特に珍しいことではないのですが、いわゆる小学校的な「教育」がそのまま低年齢化するのは僕は抵抗があるので、子どもの育ちに個別に寄り添う「保育等義務化」という言葉を選択しています。

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