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本を読む③

本シリーズです。
前回の記事では「影響力の武器」について載せました。
その後、サラタメさんの動画を見たのですが・・・。
一番の違いは、サラタメさんの動画は自分の言葉や考えで説明しているので、とても見やすかったしわかりやすかったです。
要約というか、的を3つに絞ってより強く伝えたいことを述べていらっしゃったのは印象的でした。
勉強させてもいました。自分にいかします。

今回読んだ本はこれ。

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私のような小学生や中学生対象にサッカーを指導をしている者には今後必ず向かい合わなければならない問題。
いや、既に向かい合っています。
公立中学校のサッカー部で外部指導としても指導をしているのですが、地域がらそこまで経済格差を感じることは子どもたちにないのですが、家庭環境についてはものすごく感じることがありまして。
そういった子たちへの対応を自分なりにしてきたつもりではありました。
ただ、この本を読んで自分の子どもたちへの接し方に更なる改善をしなければならないことに気が付かされたのです。

では内容をまとめていきたいと思います。

「経済的格差」

これはアメリカでのデータなのですが(著者がアメリカ人のため)、2013年アメリカでは、公立学校に通う生徒の中で「低所得層」の割合が51%に達しました。
低所得層であるほど将来における収入は低く、富裕層であれば収入は高いことが科学的根拠として発表されています。
低所得層の子どもたちは、学力でも富裕層の子どもたちと比べると成績の改善が難しく、こうした教育上の格差をどうやって縮めていくかが国に課せられた使命となっています。

「非認知スキル」

・粘り強さ
・誠実さ
・自制心
・楽観主義

これらの能力は子どもたちに大きな影響を与えることになり、「非認知能力」が高い子どもほど学歴が高く、健康状態も良いという発表がされています。
こういったことから、子どもの頃から「非認知スキル」が重要であると認識されていながらも、実際にはそれらの能力を伸ばすためにはどうすればいいのかがわからないまま今にいたっています。
この本では、「結局どうすればいいのですか?」という問いに答えようとする一つの試みの内容となります。

「環境」

著者は、様々な分析の後、「非認知能力」は教えることができるスキルであると結論つけています。
理由としては、子どもたちの非認知能力はそれまで過ごしてきた環境によって生み出されたものだからです。
つまり、働きかけるは子ども自身でなく、環境づくりなのだと結論付けています。

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「ストレス」

昨今聞かれる学級崩壊。
授業中に子どもが出歩いたり、授業の妨害をするなどの行為。
学校生活における様々な情報、複数の情報を処理できなくなってしまう要因の一つにストレスがあげられます。
悪い環境で育ってきた子ども程ストレスを強く受け、自己調整・認識の柔軟性に悪影響を及ぼしてしまいます。
こうしたことで「非認知能力」が上手く育たず、学校生活や人付き合いに不満を抱くようになってしまうのです。

「親」「トラウマ」「ネグレト」

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ハーバード大学の児童発達研究センターの研究者たちは

子どもが感情面、精神面、認知面で発達するための最初にしてきわめて重要な環境は、家である。もっとはっきり言えば家族である。

こういった上記の子どもと家族の相互関係について「サーブとリターン」と名付けました。
「サーブとリターン」についてもう少し説明すると、例えば幼児が何か行動を起こします。泣いたり、何か音を立てたり、言葉を発したりする=「サーブ」。
その幼児が起こした行動に対する親の反応=「リターン」とします。

幼い子どもはこういった親の反応を見て世の中の仕組みを覚えていくことになります。「サーブとリターン」を繰り返していき、幼い子どもの脳内における感情、認識、言葉、記憶が発達していくことになるのです。

親から受ける大きな影響として、子どもたちが受ける圧力があります。
研究者たちによると、幼い子どもたちが動揺している時に、親が厳しい反応をしたり、思いもよらない行動をとったりすると、のちのち子どもは上手く感情を処理したり、緊張感に対しての対応することができなくなります。

逆に、子どもが動揺している時にうまく落ち着かせられるような対応ができる親の子どもは、後にストレスに対応できる能力に良い影響を与えることができるのです。

子どもに動揺をさせる何かが起きたとき、大人側は落ち着いて対応することが必要なのだと思います。余裕がない人ほどその場ですぐおさめようと感情に走ってしまうのかもしれません。

子どもに影響を与えるものとして「トラウマ」があげられます。
「子ども時代の逆境(以下ACE)」という言い方もありますが、ある病院で、内科患者の病歴を調べた結果があります。
驚くべきことに、ACEを4つ以上経験している患者は、がんになる確率は二倍、心臓病になる確率は二倍、肝臓病になる確率は二倍、肺気腫や慢性気管支炎になる確率は四倍とのことでした。
ACEは1日のできごとではなく、フラッシュバックなど含め毎日経験していくことになるので、相当なストレスが子どもに毎日かかることとなります。
ACEは数値化することができ、そのスコアが高い人ほど鬱、不安、自殺や自己破壊などの行為に及ぶ可能性が高いそうです。

「ネグレト」・・・親や世話人からの反応の欠如。
つまり無視、全く相手にされないこと。育児放棄など。
乳幼児のころにネグレトを受けてしまうと、神経システムが大きな影響を受けます。肉体的な虐待よりも長期にわたって害を子どもに及ぼすこともあります。
トラウマと同じようにネグレクトも継続的に影響を子どもに与えていくのです。

こういった影響を受けた子どもたちへの対応はどうしていけばいいのだろうか。経済的なことが原因であれば物資や食事等を与えればいいのだろうか。子どもたちは物理的なことで心の問題が解決されるのではないそうです。

大切なのは雰囲気を、環境を変えること。

それは子どもではなく、子どもを取り巻く大人の接し方を変えていくことです。
変わるのは子どもではありません。
恵まれない子どもたちの人生を変えたいと思うのなら、子どもたちと日々接する大人側の行動や態度を変えることが改善につながるのです。

アタッチメント

環境の改善方法の一つとして介入することがあげられます。
経済的な要因等で大きいストレスを抱えている親は、比較的ストレスを感じていない親よりも子どもに対して配慮した接し方が難しい。そういった親の元では子どもは安定した生活をおくることが困難であると言われています。

しかし、ある研究者が「生物学的行動の回復支援(ABC)」と呼ばれる家庭訪問プログラムを10回行ったところ、子どもたちはよりうまく自分の行動を制御できるようになりました。子どものストレスが改善できるのです。

たとえ経済的に豊かでない家庭環境であってもうまく介入をしてあげることで改善ができます。本書ではこういったことについて

例え逆境そのものの家庭環境であっても、親にうまくできないことばかりを意識させるよりも、たった一つのプラスの瞬間に照準を合わせるのです。
親に伝えたいのは、”新しいことを覚える必要はなく、あなたがすでにしていることを見ればいい”ということ。そういう瞬間をもっと増やせば子どもはかわります。

と述べています。

そういう環境をつくる

ニューヨーク大学の心理学者であるレイバーが開発した教員向け能力開発〈CSRPプロジェクト〉があります。
このプロジェクトを受けた教員たちは、ストレスを抱えた子どもたちに対しての接し方を正しく行うことができるようにされています。

悪い行動をする子どもを罰するのではなく、良い行動の目を向けることができると、子どもたちは脅かされると感じることが少しずつなくなっていき、問題行動が減少していきます。
そういった教室の雰囲気や方針を持った教員たちがいる環境をつくることでが大切なのです。

全てを許し、見逃せばいいかというと、そういうことではありません。しかし、改善するためには悪い行動をとった子どもに罰を与えるよりも、その子がどうして悪い行動をとるのか、家庭環境などを考えてあげ、子どもたちが自ら問題に取り組むことができるような仕組みづくりをした方がより効果的なのです。

やる気になる

では、どうしたら子どもたちは自ら問題に取りくもうとしてくれるのでしょうか。
一つわかっているのは、報酬をあげる形では効果が持続しないということです。
これは、前回影響力の武器でも言ってましたが、物で釣っても(外発的動機付け)その効果は一時的なものということで、長く効果を持続することにはつながらないことが科学的にもわかっています。
動機づけが重要なのです。

本書では、人がやる気になる心の仕組みを「内発的動機付け」と名付けました。
この「内発的動機付け」を維持できるための要素として

①「有能感」ー簡単ではないが、やりきれると感じられる
②「自律性」ー誰かに管理・強制されるのではなく、自分の意志で行う
③「関係性」ー教師に好意を持たれ、価値を認められ、尊重されてると感じ
       る

をあげています。
これら3つの要素が揃うことでやる気が起こり、やる気が継続するのです。
教師(大人側)は、最初から何かを決めつけるのではなく、子ども(生徒)が自ら意見を発し、行動しやすい環境や雰囲気を作ってあげることが求められているんですね。

環境づくりにより、貧困層の子どもでも改善することができます。
改善するためには子どもに直接アプローチをするのではなく、まず家庭に介入し、親を支援するような行動が必要です。
その上で、子どもに対してはやる気にさせられるような「雰囲気づくり」・「居場所」・「環境」が必要なわけです。
悪い行動ばかりに目を向けても問題の解決には遠い。それよりもどうしてそうなったのか、背景に目を向けることで問題解決につながります。

本書では、もう少し続きがあるのですが、それは大人側、とりわけ教員側の目線で書かれているので、次の記事にまとめたいと思います。

私はサッカーの指導者をしているので、この立場としてもとても興味深い内容となっていますので、自分用にあとでまとめたいと思います。

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