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関口君が気持ち悪い/「姑獲鳥の夏」京極夏彦

とくに映画版の。


※以下めちゃくちゃネタバレを含む個人の読後感想です

※ミステリ初心者が書いてるのでいろいろ突っ込みどころがあると思いますが、「はじめてディズニーランドに来た人を見る目」みたいな感じで見守っていただけたらありがたいです


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いつか読みたいけどなんか手が伸びない本、っていう棚が心のなかにある。そのなかでも、物理的に圧倒されて二の足を踏んでいたのが、「京極堂シリーズ」。別名「読む鈍器」

そもそも、京極夏彦という字面が最高にくすぐる。しかも主人公は著者と同じ、京極という名前を(屋号としてだけど)名乗っていて、入れ子人形的な没入感というか、書き手と主人公の存在が交錯して、人の私記を見ているような気分になる。この手のやつ、最近好き。有栖川有栖の探偵火村シリーズもそうだ。

で、めでたく京極作品の一発目として購入したのが、「姑獲鳥の夏」。理由は単純。そこにあったどの京極堂タイトルよりも薄かったから!!!結果的にこれがシリーズ最初の話だったからよかった。

結論から言うと、私はこれを「おもしろいミステリだったよ~」と人に勧めることは、ないと思う。おもしろいは真で、ミステリが偽。

6Bの鉛筆で木炭が艶々になるくらい上塗りされた、めちゃくちゃ厳めしい錠前がついててツタがびっしり這ってる鋼鉄の箱の絵って感じ。(どでか抽象イメージです)

以下、オッホホイと思ったところをかいつまんで振り返ります。


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教訓:地の文を信用してはいけない


冒頭からちょっと話逸れるんですが、賛否両論喧喧囂囂の映画版。読了後に観たんですけど、何をさしおいても榎木津が阿部寛なのおもしろすぎんか??個人的にはこう…FGOのホームズみたいなビジュアルを想像してた。したらローマの彫像みたいなのきた。「中性的」「人形」みたいなキーワードはどこへ……いや空軍スタイルはめちゃくちゃ似合ってたんですけど。

でもってあべ木津さんでちょっとかすみましたけど、京極堂(堤真一)もなかなかだな??FFⅪのホメロスとか刀剣乱舞の長谷部とかに近い、ちょっと色素薄い系切れ長メンで冒頭の超長回し講釈再生してたんですけど、普通に出不精な感じのイケオジがきた。内藤もさ…もう言わずもがなだけどさ……私には金カムの鯉登少尉が見えてたよ…で久遠寺姉妹はFGOの紫式部。オタクの嗜好が割れる。

で、そんな個性☆5の登場人物に囲まれた、語り手・関口氏なんですけど……

地の分が嘘つくって斬新すぎんか??

読み手、ハナから捨て置き前提だよね。☆1コモンキャラかと思ってた関口君(のアタマ)がお盆あたりの沖縄の天気並みに不安定だったことがわかったときの、「わかるわけね~~~~!!!」って気持ちと、「してやられたぜ~~~~!!!」って気持ちね。作中一番の困った君が語り手って。地の分が話の核になるところを隠してるなんて、そんなもんミステリとして破綻してるだろって怒ってる人もいたけど、私はミステリじゃないと思ってるから、ただ単純にそんなんもありなんね~~~ってなった。

なんていうか、最初にミステリとしてすすめるか否かみたいなこと書きましたけど、カスク強めのウイスキー的みたいな、口内から鼻から噎せるほど燻されるみたいな、文章の濃さに浸たされて思いっきりコテコテの怪奇譚ワールドにトリップしたい人にはぜひオススメしたい。

あと映画版関口君、元研究者っていう大事な大事な肩書きが消失して、神経がどうこうっていう返す刃がまったく死んでたので、ただシンプルにやばい人になっててすっげー気持ち悪かったです!!!!!(永瀬正敏さんの演技はすごかった)


牧朗爆誕のシーンがよくわからない


これ私の空間把握能力が低いだけかもしれないんですけど、沙汰があった書庫、ぜんぜん思い描けなかったよ…

まず書庫っていうからには主に本棚じゃん?そんなにデッドスペースというか、ひらけた空間がないと思うんだ。いやバカでか書庫ならいざ知らずだけど。しかもそこにベットを無理やり押し込んでるわけだから、さらに狭い印象を受ける。そのちょっとしかないところに、椅子を数脚並べて、しかも簡易的な儀式までするわけじゃないですか。

いや牧朗どこに転がってんの???

ぎっちぎちじゃん。ベットのすぐ脇、ってことだったけど、見え…るよね。いや、実際京極堂とか榎木津には見えてたんだから、狭い部屋のそこらに転がってたと思うんですけど。しかも榎木津なんか最初に来た時に入ってすぐアチャーってなってるわけだから、けっこうすぐ見えるところにあったわけじゃん。

そんなわけで、なんか部屋の全貌というか、位置関係というか、ようは肝心の牧朗爆誕シーンのイメージがまったくつかめなかった。見せ場で???となってしまった。いや視点になってる関口君が見えてなかったんだから仕方ないというか、むしろそれがこの話のトリックの妙なのかもしれないけど。でもババーン!となるはずのシーンで「待って待ってどういうこと???」ってなってしまったのはついに来たぜ大波!ってタイミングですっこけたみたいで、なんかしょんぼりした。しかも、こっから奥にさらに謎の小部屋があるわけだから、もうさっぱりわからん。間取り図をくれ。


関口君がひたすら気持ち悪い


別にディスを書きたいわけじゃないんですけど。どうしてもここに帰結してしまう…

この本、話の緩急と関口君のメンタルがかなり密接に癒着してるので(語り手なのでさもありなんなんですけど)、ぐじぐじに膿んで落ちてったかと思えば、描写が急に抽象的になって感情炸裂したりする。私は時々そのジェットコースターについていけず、何ページか前から遡って再読しました。

なので彼がやべーのは通常運転なんです…が!

牧朗に託された手紙を京子(涼子)に渡すくだり。

犯しちゃうのかよ…………

なんか狂人って言われてパニクってたのはわかるけどさ…ってか、その狂人よばわりされてダッシュで逃げた、みたいな記憶も、はたまた在学時から何かと鬱でふさぎこみがちだったみたいな記憶も、そもそもこの京子強姦の記憶を抹消するためのフェイクなんじゃないか……??追々の京極堂の話のなかで、それ以来彼は精神を病んで~的な描写があったと思うけど。関口君の鬱とか精神不安定はここに起因してるってこと??

という「関口、京子とエンカウントするまで鬱じゃなかった説」を主体にすると、いろいろ怖さが増す。

要は、京子に「遊びましょ」と言われた時、関口君は健やか君だったわけです。それが、太腿から経血を垂らして妖艶にほほ笑む少女(少女ですよ)に、うわ言のような誘いを受けて、普通やっちゃうか……???だって先輩の好きな人でしょ……で、あんたは初対面でしょ……どんな神経してんだ。

とにかく関口君のお脳の自己防衛本能すごすぎ。たぶん、彼が主要キャラクターのなかで一番のジョーカーというか、やべーやつだよ…☆1コモンと見せかけてね!関口君の視点や語りに違和感を持ってもう一度読み返すと、なんか初見とは違うヒエーっとなる部分が多々あるので、これは2度おいしいと言えば2度おいしい。あと、それを知ってて関口君を“友人”と留め置いてる京極堂、器でかすぎんか???倫理感とは……


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とりあえず、個人的に気になった大きいトピックはこのあたり。

やんや言いましたが、基本的に京極堂の情報量で殴ってくる語りがけっこう好きなので、続きも読みたいと思います。あとエノさんが好きなので今後の活躍に期待。

映画未視聴の方はぜひ観てみてください。レビュー散々でしたけど、私はおもしろかったですいろいろと。建物の感じとか、登場人物の衣装とかはすごくイメージ通りだった。京極堂につづく坂シーンの、エッジの効いた照明づかいはある意味必見。あと雑すぎるホルマリン漬けの赤子。リアリティ皆無でいっそコミカルでした。

それではまた。








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