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気持ちを温め合うにはそれなりに時間がかかるんだよ、人間だもの。

『ユー・ガット・メール』を久し振りに。

これも古い映画だ。日本で掛かったのが、1999年だから、20年前ということになる。話としては単純で電子メールを通して男女が惹かれ合うというラブコメだ。

で、当時はwindow95を載せたデスクトップPCや分厚いノートPC(ノートPCといっても重さは余裕で3キロオーバーだった)。PCとは別にタイプライターが現役で、インターネットよりもパソコン通信のアメリカオンライン(AOL)が主流の時代。電話線でモデムを使ってピーガガガピーと繋げると漸くメールが来てるかどうか確かめることができるというものだった。

今みたいに常時ネットに繋がっていて、しかもモバイルで、いつでもどこでもSNSで連絡が取れる環境からみたらまるで石器時代に思えるだろう。でも、20年前、今度成人式を迎える若者が生まれた頃はこんな感じだったのだ。

なので、この作品を観ると、ここ20年でいかに我々のコミュニケーション環境が激変したのかを、改めて知ることができる。

で、パソコン通信でメールのやり取りを通して男女が知り合うという設定の映画といえば、森田監督が撮った『ハル』という作品があり、これもまた心温まるのでオススメしたい。

話が逸れたが、この映画で大事なのは、書簡での文通を重ねる(今やこの話がそもそも理解できない世代が主流?)ような、まどろっこしいメールのやり取りを続けるうちに、徐々にお互いの気持ちを温め合うという、人と人とが心を通わせるのにはある程度の時間が必要だということを教えてくれている点である。

5Gが来る時代だから、今後ますますコミュニケーションのスピードは上がるだろうし、それを遅くすることはできない。でも、人はそんなに高速のコミュニケーションを望んでいないと思う。この辺りが今後問題になるのではないか。

そしてもう一つは、テキストでのコミュニケーションの重要性だ。テキストという、情報が削ぎ落とされ、圧縮されたメディアを使ってのコミュニケーションは、映像や音声やARなどのマッシブなメディアを利用したコミュニケーションと比較すると圧倒的に情報量は少ない。

が、情報量が少ない分は人がそれを想像し補うことで、却って豊かさが増すのではないかと思う。また、簡素なテキストだからこそ一文字一文字を吟味して、その一文字に気持ちを込めて相手に伝えようとするのではないか。

このテキストのコミュニケーションは5Gの時代でも生き残るだろうし、もしかするとわざわざ文通でやり取りをすることが流行る時代が来るかもしれないな。とそんなことを思わせてくれる作品だ。

今度は5G全盛になったときにでも観てみようかな。

追伸

映画の中では、大手の書店チェーンが街の小さな本屋を廃業に追い込む。このときの大手チェーンのモデルは、当然ながらのバーンズアンドノーブル。この頃、アマゾンは創業したばかり。時が経ち、今年バーンズアンドノーブルは大手ヘッジファンドに買収されてしまった。アマゾンの攻勢に耐えられなかったのだ。正に盛者必衰の理りを表すだ。

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