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V|ビネガー【脱法、酢の方程式】 |野草の世界で学ぶ、持続可能な食と生活のAtoZ

Vinegar
酸味のある調味料
バラ目バラ科サクラ亜科リンゴ属のリンゴで製造

 これまた難題、頭文字Vです。
 困った時は、横文字に変換してみましょう。

 そうだ「ビネガー=酢」を作ろう。

 野生ハンターたるもの、スーパーの既製品をそのままここに掲載することは許されません。
 拾ったりもらったりできない食品ならば、作ってみようホトトギス。科学実験、錬金術。

 雑に説明すると、酢は、酒を腐らせればできあがります。

 前項の梅酒でも触れましたが、酒の製造には違法性がつきまとうため、注意が必要です。
 酢も同様に、なにも考えずに自家製造してしまうと、やはり酒税法に抵触するおそれがあるのです。

 理由は同じく、発酵過程でのアルコール成分発生。よって、酒税法例外規定による適法な手段で作成しなければなりません。
 そこで、梅酒製造術式の「梅」部分を、酢に適した発酵酵素を持ち、なおかつ合法なブツに変更します。
 「危険ドラッグ」ならぬ「危険酒」のアトモスフィア(雰囲気)を感じつつ、これより術式にとりかかります。

 触媒として用いたのは、リンゴ。
 アダムとイブを楽園から追放した、あの禁断の果実を利用するのです。
 神が赦さずとも、酒税法はこれを許す。

 ジャムの空き瓶の中へ、ホワイトリカーとリンゴの芯を入れて、放置します。
 日が経つに連れて、瓶の中はドロドロのグチャグチャに。表面に厚い膜が張っているのが見て取れます。一体、なんの菌の集合体だ。
 かつてリンゴであった物体にも、青カビが元気よくはびこっておいでです。

 ……これを飲むのか。
 熟成状態の確認のため数週間おきにテイスティングをしていますが……回を重ねるごとに、健康への不安が増長されていきます。
 最終段階では、変な汗が出てためらうほど。

 恐る恐る口に運ぶこと数週間。

 酒から酢へと進化する製造工程は、3ヶ月におよびました。
酢は、フルーティなリンゴの風味で完成しました。
 上質な酢の特徴として、高級品ほど酸味がなくマイルドであるということを聞き及んでおりますが、そのとおりではありませんか。

 さすがに人には勧められないので、自家製酢は責任を持って一人でおいしくいただきました。

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