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T|ツクシ(土筆)【妖精国メルヘン番地へようこそ】 |野草の世界で学ぶ、持続可能な食と生活のAtoZ

Tsukushi
トクサ目トクサ科トクサ属

 前ページのスギナの「胞子茎」です。胞子茎というのは、胞子をばらまくための専用の茎。たとえるなら、スギナは通常勤務員で、ツクシは胞子を飛ばす特命係。
 ツクシのメルヘンチックないでたちは、同じく胞子で子孫を残すキノコに通じるものがあります。野草ワンダーランドのキービジュアルとしてふさわしい存在感。

 うちの近所では、せいぜい丈20cmあればバンザイといったサイズ感覚です。
 しかしながら、野草は田舎へ行けば行くほど強くなるのがセオリー。
 ジムカーナ関係者から「茨城中央サーキット(茨城県石岡市)のツクシは40cm級」とのタレコミがあった日には、茨城が異世界に思えたものです。
 実際に足を運んでみればそのとおり、噂に違わぬ立派な群生を発見できました。ツクシがジャンボに育っている光景は、今も忘れられません。天を衝くその大きさに歓喜したと同時に、茨城を深くリスペクトいたしました。

 春先は、家族と一緒にツクシハントの旅(という名の散歩)に出ます。
 正体はスギナであるから、探そうと目を凝らせば色々なところにあるもの。もしアナタがダークサイドのハンターなら、企業様のフェンスに外から手を突っ込んでの大量ゲットも狙えます。

 味については、各方面から「ほろ苦い春の風物詩」というフレーズを聞くことができます。よくいえば「ほろ苦」、オブラートに包まず発言するなら「ニガッ」。
 ハカマを取るのが大変で、取り残しによる「ハッパ食った!」というダメージを受けるのも、苦さの一端です。

 このようにして、ツクシ愛好家たちは、互いに乗り越えた苦労を語り合っているのですが……。

 平和に見えるツクシ界隈にも、対立が存在します。
 これ実に、派閥問題。食用とするときの好みとして、胞子のあり派/なし派に分かれるのです。

 両者は「きのこ/たけのこ戦争」のように激しい論争を展開中。
 私は胞子あり派です。理由は、歯ごたえとコク。
 これから野草ハンターになろうというアナタには、ぜひ胞子あり派閥に属していただきたいと願っています。

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