「好きな本を紹介するプレゼン」の講義資料#2
第1回目の講義の実習パートになります。
今回の実習では,前回説明した方針にそって,PCに向かう前の準備を進めます。作業に迷わないようにこのようなワークシートを用意しました。
以下で,ワークシート上での作業について補足していきたいと思います。
まず,本の情報を正確に調べてもらいます。必要な情報は本のタイトル,著者,出版社名です。これだけあれば,Amazon等で探すことができます。好きな本でも出版社名を気にしたことがない人は多いようで,ここで手間取る人もいます。真面目な参考文献リストならここで出版年とかが入るところですが,学生さんに紹介してもらう本は繰り返し出版されていることがあって(コミックス,文庫版,愛蔵版。。。)かえって本を特定しにくくなるので出版年は割愛しています。
テーマは,「その本のどの部分を強調して説明したいか」を考えてもらいます。本そのものの主題のこともあるし,自分の感じたその本の魅力である場合もあります。結構漠然としていますが,ここが一言でかけているとその後の作業が速い,という傾向があります。
材料,話題のところでは,紹介したいエピソードなどを書き出してもらいます。思い出すためのメモ書きでよく,ここで詳細を詰めなくても良いし,ここに書いたことの全てを発表しなくても良い,ブレーンストーミングの場所として使ってもらいます。
スタートでは話し始めをどこにするかを決めます。「つかみ」じゃないですが,聴衆は全く知らないことを話されても興味の持っていきようがないですし,かといって全員知っている話をずっとするのは時間の無駄なので,聴衆がギリギリ知っていそうなことを考えて,そこから話し始めるように,と説明しています。発表の時は目の前に聞いている人がいるので,その人たちのことを考えながらストーリーを作ります。
ゴールでは,最終的に伝えたいことをまとめておきます。まとめのスライドに書く内容になります。
ストーリーのところは,プレゼンの流れをイメージします。よく勘違いして本のあらすじをまとめる人,まとめようとする人がいました。本の紹介をするのにあらすじは必ずしも必要ありません。また,本を読んで欲しいのにネタバレをしてしまったら本を読む気を削いでしまうことにもつながるので,そこはぜひ気をつけて,と指導していました。
最終的にスライドの下書きを枚数分作ってもらいます。各スライドのタイトルと内容をざっくり書いてもらいます。タイトルが重要です。スライドは下手するとタイトルしか読めないこともあります。その時に,何を話しているかが伝わるようなタイトルにしておくことが大切です。絵コンテの枠を小さめに作っているのは,「スライド1枚の情報量は多くない,多くしてはいけない」ことをわかってもらうためです。
実際に取り組んでもらうと,この課題に対して「何から手をつけたらいいかわからない」というタイプの人と,「書きたいことがすらすら出てくる」タイプの人がいるということがはっきりわかります。何から考えたら良いかわからないタイプの人には,ワークシートに沿って,「自分がその本をおすすめしたいポイント」「その本のことを他の人は知っているか,知らないか,どう思っているか」を想像してもらうと筆が進みやすいようです。書きたいことが出てくるタイプの人にはこのワークシートは特にいらないのですが,スライド6枚分に内容を収めるように,書き過ぎに気をつけてもらいます。
具体例として,私が「BANANA FISH」(作者:吉田秋生 小学館)を学生に紹介した時はこんなことを考えてストーリーボードを作りました。
連載終了が1994年,と聞いている学生が生まれるよりだいぶ前なので,ほとんどの人が聞いたことがない話,という前提(ただし,2018年にアニメ化したのでその後の発表ではここは変更した)
自分が学生の頃に連載を追っていた
作品名の意味などはネタバレになるので触れてはいけない
今でも十分問題提起ができる作品で,「国際」と名のつく勉強をしている皆さんにぜひ読んでおいてほしい
表紙+スライド4ページ
舞台と登場人物:1980年代のアメリカ,アッシュと英二について
作品の特徴:ハードなストーリーと丁寧な心情描写
魅力:時代背景と裏社会に翻弄される登場人物たちの過酷な生き様と国境を超えた純粋な友情の対比
おわりに:気楽に読める話ではない,重いけど,こころに残るストーリー
実習の最後にこのワークシートを回収して終わります。回収時に確認することは
本の情報がちゃんと揃っているか (最重要)
話し始めの話題が決まっているか
絵コンテの枠にスライドの見出しが書いてあるか
の3点です。ほかのところはあまり詳しく見ません。次回実際にPCでスライドを作る,という時に,内容を思い出せるようにワークシートを再配布します。
今回はここまでです。
補足:資料のところに添付してあるファイルはLaTeX形式のファイルになります。普通のLaTeX環境があれば使えるはずです。LaTeXについて詳しい説明は省きますので,使える範囲で使っていただければと思います。
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