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小説|マフラーは蛇のように

「マフラーは蛇の仲間です」。少年は図鑑に記されたその一文を指でなぞりました。色とりどりのマフラーが頁を彩ります。少年は続きを読みました。「冬にマフラーは冬眠します。人は冬眠したマフラーを首に巻きます」

 冬。初めて買ってもらった青いマフラーは少年の宝物になりました。冬眠しているマフラーは大人しく少年の首に巻かれます。嬉しくて少年は口笛を吹いて町を歩きました。家に帰ると少年はマフラーと布団で眠ります。

 深夜。布団で温まったマフラーは冬眠から目覚めます。少年も起きます。窓外には雪が降っていました。マフラーは初めて冬を見ます。少年も初めて雪を見ます。少年がその夜を懐かしむようになった頃、冬が終わりました。

 春の訪れはマフラーとの別れ。マフラーは食べものを探すため次の冬まで旅へ出ます。残された少年は、窓の外に舞う雪に似た白い蝶を眺めました。家に親がいない夜、少年はまた口笛を吹きます。青い蛇と会うために。






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ショートショート No.340

昨日の小説

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