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アジア紀行~ベトナム・ハノイ⑦~

タムコック

前回の「アジア紀行~ベトナム・ハノイ⑥~」の続きです。

ハノイの「Love Planet Travel」で申し込んだOneday Tourの行き先は「Hoa Lu・Tam Coc」(ホアルー・タムコック)。
古都ホアルーを見学したあと、タムコックの、ホテルとは名ばかりの食堂でランチをすませたツアーの一行は、川下りまでの時間調整に、水辺で時間を過ごしていた。

ところどころで人だかりがしている。そっとのぞくと、中国将棋だ。

そっとのぞくと、中国将棋だ。

ベトナムでは「Cờ Tướng(カートゥォン)」と呼ぶそうだ。コマは丸くて、漢字が書かれている。「兵」「卒」「馬」「将」「帥」などの文字が見える。日本の将棋と同じように、「王将」に当たる相手の「将」や「帥」を取ると勝敗が決まるようだ。
将棋盤も、なかなか年季が入っている。対戦している2人以外の観客からも、遠慮もなく手が伸びてくる。
1人でスマホのゲームに熱中している日本の若者と比べると、ベトナム人の将棋はずっと社交的である。

別の木陰では、女たちが集まっていた。彼女たちが夢中になっているのはトランプだった。どうも賭けながらしているらしい。男性の姿もあったが、ほとんど女性ばかりなので、あまり近づけない。

水辺にはたくさんのボートが並んでいる。湖かと思うほど、ほとんど流れのない静かな川の向こうに、水面から突き出したような山が見える。

ボートは個人持ちなのか、ボート屋のものなのか、よくわからないが、お客が来ると順番に漕ぎ手の乗ったボートが出ていく。

橋の下で日射しを避けて休憩している人たちもいる。


タムコック川下りに出発

いよいよ出発の順番が回ってきたようだ。集合がかかり、ツアーの人たちが2~3人にわかれてボートに乗る。
自分は1人参加なので、昼食時に同じテーブルになったインド人の青年に声をかけて、一緒に乗ることにした。彼はボートに乗るときに、こっそり打ち明けるように言った。
「実は、ぼく泳げないんだ!」
でも大丈夫、水深もそれほど深そうでもないし、水の流れもゆったりしている。青年が舳先側に座り、その後ろに自分が座る。船頭は船の最後尾に座っている。
果物や飲み物を積んだ小舟が前からやって来て、すれちがう。物売りのボートだ。器用に足で漕いでいる。

ツアーのほかの仲間も次々に乗船して川を下っていく。

ボートは平均して3人乗りで、乗客2人と漕ぎ手が1人の場合が多い。乗客が3人になると、漕ぎ手が2人に増える。
両手で漕ぐ者、両足を器用に使って漕ぐ者など、いろいろだ。

橋の下を潜り、少し進むと、開けた場所に出る。

進行方向からも観光客を乗せたボートが次々とやって来る。終点から折り返してきた舟だろう。

さっきいっしょにランチを食べたイギリス人の大学生の舟と並ぶ。

山々は川から突き出たように屹立する。これは石灰岩のカルスト地形で、タワーカルストと呼ばれるものだそうだ。中国の桂林が有名だ。
ベトナムのハロン湾は「海の桂林」と呼ばれ、このタムコックは「陸のハロン湾」と言われている。名前をぐるぐる回しているみたいだ。
心地よい風に吹かれながら、しばし風景に見とれる。
インド人青年は、ソニーの一眼レフデジカメで、一生懸命に写真を撮っている。

片道約1時間の行程で、その間に3箇所の洞窟を舟がくぐり抜ける。
「タムコック(Tam Cốc )」という名称は「3つの洞窟」という意味である。
洞窟の天井は低くて圧迫感があり、頭を打ちそうな気がする。

洞窟の進行方向に明かりが見えてくる。

こんな所にも、物売りの舟が待機している。彼女たちは、なかなか商魂たくましい。飲み物やお菓子を強引に売りにくるので、「いらない」と断ると、船頭さんは疲れて喉が渇いているはずだから、買ってやれと押しつけてくる。

往復2時間、船頭さんは慣れているだろうが、確かに楽な仕事とは言えない。帰路、手漕ぎのオールを手渡される。これで漕いで手伝えという意味か?
インド人青年が精力的に漕ぐので、ボートはぐんぐん進んで、前の舟を追い抜いて行く。もっとのんびり戻ってもいいのに、と思ってしまう。

川に浮かぶ島のような所に草を食む牛が一頭。陸続きなんだろうか?
小さな入り江には、たくさんのアヒルが集まっている。

観光ボートが行き交うそばで、漁をしている地元の人も見かける。

2時間前に出発した船着き場が近づいてきた。ボートツアーも間もなく終了だ。
後ろに座っている船頭が、肩をたたいて何度も「チップ、チップ」と要求する。確かにそれがこの舟遊びの習慣のようで、ボートに乗る前にツアーの添乗員からも聞いていた。
「よければ1ドル、よくなければナシね。」
こちらも心づもりはしていたが、請求されるのは興ざめだな。
ボートを下りるとき、それとなく10,000ドンを手渡す。インド人青年は無視して下船した。

後味はあまりよくなかったけれど、この2時間の遊覧は楽しかった。今回のツアーのメインはこの川下りだから、来てよかったと思う。
陽はすでに西に傾きはじめている。時刻は午後5時ちょっと前だ。今からハノイに戻ったら、きっと夜になっているだろう。
一日好天に恵まれて、ほんとうによかった。









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