アジア紀行~(続)ベトナム・ホーチミン②~
10年ぶりの町歩き
到着2日目。今日は特別な予定がない。ホーチミンの町が10年前とどれほど変わったのか、それとも変わっていないのか、この目で確かめようと思う。
ということで、ホテルで朝食をすませた後、地図とカメラと水を持って出発する。まずは地図よりも記憶をたよりに歩いてみる。ところが、斜めに交差する道路がけっこう多く、いきなり方向感覚を失ってしまう。まあいいや、と思いつつ、そのまましばらく歩いていると、市場に遭遇。市場といっても、道路の両側に、ずらりと果物屋・八百屋・肉屋・魚屋・乾物屋、さらに日用品や文房具まで、なんでも売っている。市場は活気があって好きなので、時折カメラを向けながら、歩く。しかしぼんやりしていると、人とぶつかったり、バイクにひかれてしまいそうになる!
歩き回って昼近く、ドンコイ通りの北側に位置するサイゴン大聖堂と中央郵便局に到着。この二つの建物は、何度見てもすばらしい。すでに長い歴史があり、10年ぐらいの歳月で変わりようがない。
中央郵便局はフランス統治時代の19世紀末に建てられたコロニアル様式の建築で、アーチ状の天井やモザイク模様の床など、見ていて飽きることがない。正面にはホーおじさんの大きな肖像が、いつもにっこり笑っている。
郵便局の中には、国際電話用のボックスがある。時計を見ると、東京との時差が2時間あることがわかる。カウンターでは切手などを売っている。
椅子に座って、ハガキを読んでいるお年寄りがいた。ベトナム語ではなく、フランス語のようだ。
アオザイ姿の職員のかわいいお姉さんが、にっこり笑いかけてくれた。
郵便局で、思わずのんびりしてしまった。台風が接近しているという予報があり、そのせいか風が強い。時折雨がまじる。雨が止んでいる間に移動する。郵便局前の広場で、子どもが車座になっている。もう学校が終わったのだろうか。
ドンコイ通り周辺は、あちこちで改修工事が進んでいて、10年前に泊まったアジアンホテルも工事中だった。
サイゴン川東岸
ドンコイ通りを南に突き当たり、信号のない広い道路を命がけで渡ると、そこはサイゴン川。
船着き場から川を眺めていると、ガム売りのおばさんや靴磨きのお兄さんが声をかけてくる。
バイクタクシーのおじさんも、道路の端にバイクを止めてやってくる。特に急ぐわけでもないので、しばらく話をする。名前はタウさん。口をあけると下の前歯が2本ない。にくめない顔つきだ。
最近サイゴン川の地下に日本の援助で、大林組がトンネルを作って川向こうに行けるようになったと教えてくれる。そういえば、前回訪れたときは、サイゴン川の対岸はまったく開けていない土地だった。
話をしていると、突然すごい雨が降り出した。あわてて川べりから離れて、ドンコイ通りのほうに避難する。
雨はしばらく降ったと思ったら、急に日が照り出した。もう一度サイゴン川の船着き場に向かう。するとまた別のバイクタクシーがそばに寄ってきた。今度の人はタオさん。名前がよく似ていて紛らわしい。
タオさんもサイゴン川にできたトンネルの話をする。このトンネルを抜ければ、サイゴン川の東側の様子を見ることができる。好奇心に勝てず、タオさんのバイクで行くことになった。
1時間6ドル。安くはないが、1時間だけという約束で、ヘルメットを借りてバイクの後にまたがる。
トンネルは船着き場から少し下流にある。サイゴン川の東側は、未開の地と言ってもいい。最近になってやっと開発が始まり、それまでこの地で暮らしていた人々はみんな立ち退かされたそうだ。確かにトンネルを潜ってやって来た対岸の風景は、「何もない」としか言えない。
タオさんの話では、かつてはこの辺りはスラム街で、麻薬を扱う人がいたりして、一般の人は足を踏み入れなかったという。しかし今は人が暮らす様子も希薄になっている。次に訪れることがあったら、きっと大きく様変わりしていることだろう。
ここから先ほどまでいた対岸の町の風景が見える。まだ高層ビルは少ないが、この風景も10年後には大きく変わることだろう。
サイゴン川東岸の川沿いを北上して、大きな橋を渡る。この附近には高層マンションが建ち始め、一足早く開発が進みつつある。
タオさんには郵便局前まで行ってもらい、約束通り6ドルを払う。
時刻は午後2時半。この近くに以前行った「KIM THANH」という店があるはずだ。あまり食欲はないが、そこで休憩することにしよう。
さて、この後はどこに向かおうか?
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