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本のお仕事 取材に対する取り組み方、考え方

僕は今、風媒社から6月に出版予定になっている、名古屋市の町歩きを楽しむ本の撮影をしている。
Facebookには、ときどき取材の様子をUPしているので、それを見ている人は、一冊分撮るのだろうと思っているかもしれないが、今回僕が担当するのは6ページ分。
内容は、お散歩写真を始めてみたらこうなりました。
皆さんも楽しんでみませんか?
といった感じで、撮り方のちょっとしたコツ、楽しみ方のツボなどを書いて紹介することになっている。
撮影は、とっくに終わり、原稿もほぼ書き終えた。
でも、まだまだ撮り足りなくて、撮り歩いている。

取材中に、撮ってきた無人の魚市場の様子が、思ったよりよい雰囲気だったので、写真とともに取材の経緯、仕事の進め方を簡単にまとめておきます。

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エピソード

もともと、この企画のお話をくれたのは、僕が修行中に写真集の企画を持ち込んだ出版社の編集者さんだった。
その後、三冊の写真集出版、福音館書店の『たくさんのふしぎ』の撮影などを経験させていただいたけれどご縁がなかった。

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それが、去年、相談したいことがあると連絡を受けて、栄の喫茶店で『名古屋の町歩きを楽しむ本』について話を聞いた。
その企画の中で6ページ分、お散歩写真のページをいただいたのだ。


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考え込んでいる僕を見て、内容をもっと絞って指定しましょうか?
と気遣ってくれたけど、何をどう撮って、どう表現するかを考えたかったので、何も制約を設けないことにしていただいた。
打ち合わせの最中に、
「これを作りながら新しい方向性で別の企画を作っていくヒントやきっかけができれば」
と、編集者さんが言っていたのが頭にしっかり残った。

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打ち合わせが終わった後、ボリューム的に文章含めて6ページ。下見も含めて10日あれば十分だと感じた。
撮影については、技術的な難しさは感じられない。

『編集者さんが、新しい企画が思いつくぐらい取材しよう』

そう思った。

必要以上たくさん撮る理由


そもそも町歩きの写真は撮ったことがない。
この分野、面白い写真を撮っている人はキリがないぐらいたくさんいると思う。僕に頼む理由はないぐらいだ。
だから、せめて見劣りしないように、名古屋市内の路地を全て見ることを目標にした。
市内の路地を網羅したと言えれば、町歩き写真初心者の僕でも、説得力が出るだろう。
網羅した様子を編集者さんに伝えれば、何か次の企画のヒントを見つけてもらえるかもしれない。

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最初から6ページ分と思ってやっていたら、どう頑張ってもそのようにしかならないし、そんなものを見せられても、何にも面白くもないし印象にも残らない。
編集者さんが、新しい企画を思いついたとして、それが僕に来ようが来まいが、今の段階で考える必要もないし大した問題でもない(来てくれたらそれは嬉しいことだけど)。

少し頑張れば誰でも撮れるものを、あえて写真家やカメラマンを起用するのだから、やっぱり頼んでよかったと、じゅうぶんメリットを感じてもらえたら、写真家、カメラマン全体の仕事量も増えていくはずだ。

これが、頼んだのに大して変わらないじゃないかとなれば、みんな「これぐらいならいいよね」と自分でやってしまうだろう。どんな場面でも、片手間の人が撮るものを圧倒するぐらいの差をつけることを意識しておいた方が良いと思う。

仕事がない日は、全て撮影に出かける勢いで早朝から取材に出掛けた。
この企画はさらりとした軽さがキモになると思うので、「ガッツリ撮りました」といった雰囲気が出ないように意識はしていたけれど、出掛けているうちに楽しくなってすっかり町歩きの撮影にハマってしまった。

撮影した総量は、場所ごとに小分けしてしまっているので数えられないけれど、撮影を始めた7月で1273枚、8月で1042枚ざっくり選んだカットがある。
ちなみに、先日、原稿を書き終え、打ち合わせをしてきたが、文章の量は半分に、写真は、たっぷり余裕を持って30枚あれば多いぐらいとのことだった。

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下之一色町魚市場

名古屋市内を撮り歩くようになって、数ヶ月のうちに、取り壊されてしまった建物、閉店したお店などに気がつくようになった。
僕の題材にするものは、なくなるから撮っているのでしょう?と聞かれることがある。
でも、ちょっと違う気がする。
本当のところは、美しい、よい、これは残しておきたいと思って題材にしたものが、なくなる運命のものだったり、結果としてなくなってしまったりするのだ。

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今回、撮影している被写体の中にも、近いうちになくなることが決まっている施設がいくつかある。
そのうちのひとつが、下之一色にある魚市場だ。
かつての名古屋の台所、漁師町の面影を残す魚市場も、今年の3月半ばには閉じられてしまう。
素人が買いに行ってはいけない場所かと思っていたけれど、一般のお客さんでも普通にお買い物を楽しめる。
昔ながらの市場の雰囲気を楽しみながら、お買い得で美味しいお魚を買いに行ってみてはいかがでしょう?
面白いと思います。
(水、日お休み。朝だけ営業なので、覗きにいくなら遅くても7時すぎぐらいには市場に入っていて欲しい。駐車場は十分確保されている)

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魚市場へは何度も通っている。
たまたま、取り壊し前に記念になるような写真を撮ってもらえないか?と理事長さんから相談を受けた。
昼間、誰もいない魚市場で待ち合わせをして、たまたま市場の様子を見せていただいたら、とてもよい雰囲気だったので、お願いして撮影のために開けてもらった。

日の出前の賑やかな市場もいいけれど、掃除が終わり、誰もいない昼間の市場の空気感がとても新鮮だった。
日本全国、誰もいない昼間の市場を巡る企画なども面白そうだ。

たくさん撮りすぎたので、写真を選びながら、足りなければ昼間の市場をまた撮りに行きたいと思う。

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