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乃木坂46の卒業ラッシュは悲劇なのか?

「卒業ラッシュ」という言葉にもそろそろ聞き慣れてきましたね。白石麻衣さんの卒業を皮切りに堀未央奈さんや松村沙友理さん等、乃木坂46から卒業するメンバーが相次いでいます。最近では大園桃子さんの卒業が耳に新しいですね。それにしても彼女が卒業して芸能界からも身を引いてしまうなんて、本当に本当に寂しいです。

「寂しい」と述べたように、卒業という言葉からは主に別れが連想されるため、それに付随して悲しい感情が前面に出てきます。それ故、メンバーの卒業は悲劇的な印象が強くなってしまい、マイナスの事象が生じたように捉えられてしまいがちです。

しかし、本当に卒業は悲しいことだけなのでしょうか。今回は、メンバーの卒業が乃木坂46にどのような影響を与えるのか、色々な側面から考えてみます。


ロスの発生

なによりも最初に思い浮かぶのはロスの発生です。ここで言う「ロス」とは、推しメンの卒業に伴う乃木坂46のファン離れを指しており、これは乃木坂46にとってデメリットです。また、乃木坂46というグループそのものが好きな僕にとっても、乃木坂46のファンが減ることは悲しいことです。

乃木坂46の特定のメンバーのみを好いているファンにとって、推しメンの卒業とは乃木坂46のファンをやめるきっかけになりうるものです。「そのメンバーがいるから乃木坂46が好き」という状態であるため、前提条件である「そのメンバーがいる」が否定されると「乃木坂46は好きではない」ということになるわけです。

これまでの記事で何度も述べてきたように、乃木坂46には「乃木坂46の流動性」という性質があります。何度も述べたことなので詳細な説明は省きます。詳細が知りたい方は以前の記事を読んでいただきたいです。

さて、この性質にはファンに複数人の推しメンをもたせる効果があります。

これにより、たとえ推しメンの一人が卒業しても、他の推しメンがいることで乃木坂46全体のファン離れを防止する効果がもたらされています。以前の記事ではこれを乃木坂46の流動性によってもたらされた「乃木坂46の堅実性」と称しました。乃木坂46には一度ファンを獲得したらそのファンを逃しにくい性質があるのです。

しかし、たとえそのような性質があったとしても、全員のファンに推しメンを複数人もたせることは出来ません。推しメンをひとりしかもたないファンも少なからず発生します。そして、その推しメンの卒業を理由に乃木坂46のファンをやめてしまうことは大いに有り得ることです。

残念ながらロスを完全に根絶やしにすることはできません。ロスとは多かれ少なかれ発生してしまうものです。

特に「ファン」という顧客の形式は、非常に移ろいやすいものです。

乃木坂46となにか契約を交わしているわけではないので、具体的な顧客人数を把握することは出来ません。さらに契約期間という概念がなく、ファンであり続ける期間は約束されたものではありません。

そういう意味で「ファン」という形式の顧客をもつ事業は、いつ顧客を喪失してもおかしくないのです。逆もまた然り、いつ顧客を獲得してもおかしくありません。顧客を喪失するにせよ獲得するにせよ、原理上、事業者はそれらを感知しようがありません。

自社事業の顧客人数を把握できないとなると、それによって算出される売上の着地予測等の数値の信憑性が他の事業よりも低くなります。それらの数値の信憑性が低いのであれば、新しい活動をしようにも慎重にならざるを得ません。芸能事業の運営が如何に難しいことなのか思い知らされますね。


乃木坂46の流動性の回復

特に選抜に常連しているメンバーの卒業においては、乃木坂46の流動性の回復が見込めるため、乃木坂46全体、そして選抜経験が少ないメンバーにとってメリットと捉えるべきです。

特に選抜経験が少ないメンバーにとっては、選抜に常連しているメンバーの卒業により、選抜に空席が生じることになるため、他のメンバーが選抜に入れる確率が上がることになります。

どんなメンバーであれ卒業自体はとても寂しいものです。しかし、選抜に常連しているメンバーの卒業は、選抜経験が少ないメンバーにとって理論上のチャンスになり得ることを決して忘れてはいけません。

あれだけメンバー間の仲の良さが顕著なグループです。誰かの卒業を喜んでいるメンバーはいないでしょうが、それは同時に自分が前線に立てるチャンスであることをしっかりと胸に刻むべきです。「あの子のポジションは私が受け継ぐんだ」という強い思いでせっかくのチャンスを棒に振らないように努力し、同じ思いを抱いている他のメンバーに容赦なく勝ってほしいと思います。

それにより、乃木坂46に新しい魅力が生じることになります。このようにメンバーの卒業には、乃木坂46を成長させる効果もあるのです。

だからこそ、乃木坂46の運営陣は選抜常連メンバーが卒業した時、その空き枠を他の選抜常連メンバーで埋めるのではなく、選抜経験が少ないメンバーで埋めるよう配慮すべきです。そうでなければ選抜常連メンバーの卒業は喪失になってしまいます。選抜常連メンバーの卒業を喪失ではなく変化にするためには、新たな人材を起用し続けていく必要があるのです。


新メンバーの加入

「乃木坂46の流動性の回復」に関連していることで、メンバーの卒業は新メンバーの加入をもたらすものです。これも分別するならば乃木坂46にとってはメリットでしょう。

選抜以前に、乃木坂46全体に空き枠が生じればその空き枠を埋めるためには新メンバーが必要です。現在で言う「5期生」ですね。3期生・4期生はいずれも10人以上で加入しています。そして乃木坂46の最大人数は46人です。これらの要素から考えると、卒業が相次いだ結果、在籍メンバーが36人以下になった時が5期生加入の頃合いだと見て良いでしょう。

乃木坂46の公式サイトにあるメンバー紹介ページを参照してみました。現時点で卒業を表明しているメンバーを除くと、現在の乃木坂46在籍総人数は39人です。参照した画面を記録のために以下に残しておきます。

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ボーダーラインの36人にはもう少しで届きそうですね。誰かの卒業は寂しいことに変わりはありませんが、同時にそれは新メンバー加入を期待させます。

そして新メンバーの加入により、乃木坂46は新たなファンを獲得できる可能性が高くなります。それまでのメンバーの訴求では乃木坂46に興味をもてなかった人が、新メンバーの加入によってまずはその新メンバーに興味をもてば、最終的には乃木坂46に興味をもつようになるでしょう。

繰り返しですが、やはりメンバーの卒業には、乃木坂46を成長させる効果がありますね。あとは乃木坂46の運営陣がその卒業をうまく活用できるかどうかです。

メンバーの卒業でグループが進化した例としては、EXILEが挙げられます。SHUNさんの卒業、当時は脱退と称していましたが、それによるTAKAHIROさんやAKIRAさんの加入、2代目J soul brothersとの合体により、グループの活動やパフォーマンスは幅を広げました。

個人的にはオリジナルメンバーのEXILEが一番好きなのですが、オリジナルメンバーのEXILEよりも、メンバーが入れ替わったEXILEの方が圧倒的な人気と売上を獲得していることは明らかです。メンバーの脱退を上手く活用し、それまでのEXILEらしさに固執せずにオリジナルでなくなっていくことを推し進めたHIROさんの手腕に敬服します。

EXILEの例を参照すると、自ら変化を起こしその変化に自ら順応していく組織こそが強い組織だと思います。

乃木坂46は流動性を身につけていることから、元来オリジナルでなくなっていくことに抵抗がないグループでしょう。また女性アイドルグループにおいて、メンバーの加入には「メンバーはいずれ卒業する」という特有の前提があります。これらの要素は、上記の強い組織の素養だと思います。


まとめ

メンバーの卒業によってもたらされるメリット・デメリットをざっくりと挙げてきました。僕の主観で分別を行いましたが、いずれも乃木坂46の運営陣の手腕に依るものです。特にメリットにおいては、それがメリットになるためには「乃木坂46の運営陣が上手く活用すれば」という前提条件が付きます。

つまり、卒業ラッシュが悲劇になるのかどうかは乃木坂46の運営陣に懸かっているのです。

乃木坂46の運営陣は、メンバーの卒業と新メンバーの加入がファンの祝福のなかで行われるように努力しなければなりません。ファン、メンバー、そして乃木坂46そのものをサヨナラに強くしていく必要があります。

ファンにせよ他のメンバーにせよ、卒業するメンバーに対して「寂しい寂しい、行かないで」といった言葉をかけられるうちは、ロスの発生規模は大きく、そのメンバーへの乃木坂46からの依存は強い状態です。

それよりも、ファンや他のメンバーから卒業するメンバーに対して「卒業おめでとう!」や「ソロになっても応援しているよ!」といった言葉を自然にかけられるようにしていくべきです。これこそが卒業を上手く活用できている状態だと思います。

白石麻衣さんの卒業は、まさにこれに合致するものだったと思います。彼女の卒業コンサートやその後の活躍を見る限り、卒業するべくして卒業したような節が強く、誰しもが彼女の卒業に納得していたと思います。どのメンバーが卒業するにせよ、このような状態が目指すべき卒業の形だと思います。

メンバーの卒業によるロスの発生を最小限に抑え、組織に変化をもたらし、その変化により組織を進化させて新たなファンを獲得していく。

若輩者の僕が偉そうなことは言えませんが、アイドルグループを運営していくとは、そういうことなのだと思います。

幸いなことに、乃木坂46の多くのメンバーは「卒業」しているのです。これはメンバーが組織を脱退することにおいて最も円満な形でしょう。

スキャンダルを起こしてファンへの説明もないままに脱退したり、突如として事務所との契約を破棄して活動を辞退したりせず、この組織での活動を満了したという、組織と卒業メンバーの双方が感謝し合える最善のサヨナラです。あれだけの大所帯のグループで誰しもが卒業を迎えていること、これは奇跡的なことなのではないでしょうか。

だからこそ、ファンは乃木坂46を安心して応援し続けられるし、卒業したメンバーのことを忘れたり、嫌悪を抱いたりすることはありません。むしろ卒業していったメンバーに対してもその後の活躍を期待し応援し続けています。

LIVEで会場全体のサイリウムが「サヨナラの意味」を披露する時に緑一色になったり、「帰り道は遠回りしたくなる」を披露する時に緑×白になったりするのは、その証拠です。

卒業したメンバーがどんな形であれ幸せになり、そして乃木坂46が進化し続けていけば、卒業ラッシュは決して悲観されるものではありません。とにかく僕は、乃木坂46を卒業していったメンバー、そして乃木坂46に在籍し続けるメンバー、そして全てのファンが幸せになれることを願っています。

乃木坂46の運営陣がメンバーの卒業を上手く活用できなければ、卒業ラッシュは悲劇になってしまいます。どうかそんなことにはならないように、乃木坂46の運営陣には今後も細心の注意を払いながら、各メンバーがどうしたら最高に幸せな卒業を迎えられるのかということを考え続けてほしいと思います。

以上、「乃木坂46の卒業ラッシュは悲劇なのか?」でした!!

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