【フランス革命を生きた死刑執行人の数奇な運命を描いた幻の一冊が、ついに本邦初訳!】バルザック版『サンソン回想録』

                     文=国書刊行会編集部(昂)

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国書刊行会からまたしても凄い本が出ます。

一部ではすでに話題となっておりますが、『サンソン回想録  フランス革命を生きた死刑執行人の物語』(安達正勝訳)を刊行します!

作者は、『谷間の百合』『ゴリオ爺さん』などの作品群「人間喜劇(人間劇)」で知られ、伝説的な大食いと借金漬けの豪放な私生活のエピソードなどでも有名な、あの19世紀フランス文学を代表する天才的文豪オノレ・ド・バルザック

訳者は、『死刑執行人サンソン ルイ十六世の首を刎ねた男』(集英社新書)『マリー・アントワネット』(中公新書)をはじめ、フランス史関連のすぐれた著作の数々があり、弊社でも木原敏江さんとのコラボ絵本『バルザック 三つの恋の物語』を手がけておられる安達正勝さんです。

実は本書『サンソン回想録』は、これまで出た2種類のバルザック全集(東京創元社版・戦前の河出書房版)や、各社の選集・文庫などにも収録されず、未邦訳のままだった、知る人ぞ知る幻の一冊(!)なのです。

そして、本書の主人公にして、「フランス革命の影の主役」とも言われる死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンは、かつてはフランス裏面史上の人物として一部の歴史通に知られるのみだったのですが、最近日本では人気のポップカルチャー作品にも登場し、広く知られるようになってきました。

このサンソンという男は、反骨変人とも言うべき、かなり変わった人物でした。

果たしていったい、彼はどのような人物だったのでしょうか?
そして、『サンソン回想録』とは、いったいどのような本なのでしょうか?

1.シャルル-アンリ・サンソンとは?

まずは彼について簡単にご紹介しましょう。
シャルル-アンリ・サンソン(Charles‐Henri Sanson 1739-1806)は、18世紀フランス革命期に活躍した死刑執行人で、ルイ16世やマリー・アントワネットらを手にかけたことで知られる人物です。

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Eugène Lampsoniusによるサンソンの肖像

1739年、パリの死刑執行人の家に生まれたシャルル-アンリ・サンソンは、寄宿学校や家庭内での教育を経て、15歳で脳卒中によって倒れた父親の跡を継ぎ、フランス全土を代表する死刑執行人である〈ムッシュー・ド・パリ〉の4代目として、その道を歩み始めます。

やがて1789年、パスチーユ陥落からフランス革命が幕を開けます。
ここから巻き起こった激動の時代の波に、サンソンもまた翻弄されることとなるのです。

さまざまな苦悩と葛藤を抱えながらも、彼は死刑執行人としての務めを果たし続け、その生涯において、ルイ16世、マリー・アントワネットをはじめとして、ロベスピエール、サン-ジュスト、デュ・バリー夫人、ラボアジエ、シャルロット・コルデら、王侯貴族から庶民に至るまで、党派も身分も問わず、のべ3000人余をその手で処刑しました。

この人数は、生涯で3165人の処刑に携わったドイツ最後の処刑人ヨハン・ライヒハート(1893‐1972)に次ぐ、人類史上で2番目のものです。
処刑人の家に生まれ、フランス革命という歴史の転換期を生きることとなった数奇な運命が、彼に、これほどの多くの人々を手にかけさせることとなったのです。
シャルル‐アンリ・サンソンは1806年に死去し、パリのモンパルナス墓地には、現在も彼が葬られたサンソン家の墓所が存在します。

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では、このサンソン、どのあたりが「変わった人物」だったのでしょうか?

本書やほかの本を繙くと、彼についてのさまざまなエピソードと出会うことができますが、ここでは入門編として、その「変わったところ」がよく現れている、3つの話を見てみましょう。

(1)死刑制度に反対していた

いきなり出オチのような話ですが、サンソンは、死刑執行人でありながら、生涯を通して死刑制度に強く反対していました。
その理由としては、まず殺人を大罪と定めていたカトリック教会の敬虔な信徒であったこと、また死刑執行人の立場ゆえにこそ、残虐で理不尽な処刑に数多く立ち会ってきたことが挙げられます。

理不尽な死を多く見てきたサンソンですが、自身が心から敬愛していた国王ルイ16世や、かつての恋人であったデュ・バリー夫人を手にかけるという悲運に見舞われたこともありました。
(余談ながら、バルザックの短篇で岩波文庫『知られざる傑作 他五篇』に収録された「恐怖時代の一挿話」という作品に、ルイ16世を処刑した後に悔恨を語り、王党派の神父と元貴族の修道女のもとへ、亡き国王へのミサを依頼に来るサンソンが登場します。)

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ルイ16世の処刑(Georg Heinrich Sieveking, 1793)

そうしたこともあってか、ルイ16世の死後、ナポレオンが皇帝の座につくと、サンソンはたびたび死刑制度廃止の嘆願を行った、という逸話も残っています。
また、処刑の際にも、受刑者にできるだけ苦しみを与えないように務めを果たしていました。
たとえば車輪にくくりつけた受刑者の四肢を砕く残虐な車裂きの刑を施す前に、密かに首を絞めてあらかじめ楽に死なせる、といったことをしていたようです。

サンソンは、カトリック信者の立場から、己の責務について、以下のように矛盾した悩みを抱えていたことを、次のように吐露しています。

「汝、人を殺すなかれ」という戒律は、守れはしなかったものの、常に私の念頭にあった。禁じられているにもかかわらず、いつもそれを犯している、という思いがいつも私につきまとった。意思に関しては私は無垢であり、やむをえない「同意」を嘆きさえした。けれども、私は「そのこと」を遂行するように命じられ、それは遂行されるのであった。
(本書第1章「死刑執行人の宿命」より)

こうした告白をはじめとした本作におけるサンソンの述懐の数々は、単にバルザックが想像のみによって創作したものではなく、サンソン自身の日記・手稿といった資料が今日に伝える思想と、同様のものであるそうです。
それらの資料に見出される史実のシャルル-アンリ・サンソンの思想、苦悩、葛藤が、バルザックの健筆によって物語の形で活写されることを通して、より一層の現実味を帯びて、私たち読者の前に投げかけられるのです。

(2)差別や偏見と戦っていた

当時フランスにおいて、死刑執行人は貴族並みの生活を送りながらも、社会の最底辺の存在として、不当に蔑まれて忌み嫌われ、差別と偏見に晒されていました。
少年時代のサンソンが、親元を離れて地方の寄宿学校に通っていた頃、同級生から処刑人一族の出であることが分かり差別を受けた、というエピソードも本作には収められています。本書のいたるところでこうした世にはびこる偏見がもたらす不条理を冷静な反骨精神によって糾弾する場面が見られますが、たとえば偏見の根源について、次のような鋭い分析を語っています。

偏見の源(みなもと)を探るには、感情にさかのぼらなければならない。反感と嫌悪が産み出される根本には、何かしら真実めいたものがあることが多い。今日、真実と誤りを見分ける術(すべ)を誰がわれわれに教えてくれるのだろうか?
(本書第1章「死刑執行人の宿命」より)

差別や偏見が無根拠な感情に根差したものであるという本質を見抜いているなど、今でも古びることのない、驚くほど鋭いサンソンの洞察の数々を、こういったところからも窺い知ることができます。

またサンソンは、死刑執行人の公的な呼び方を、直截的な処刑人(Bourreau)から、婉曲的な刑事判決執行人(Exécuteur des Jugements Criminels)という呼称に変更するよう請願するなどの活動を行ったり、残虐な車裂きの刑が事実上廃止となる契機となった「ヴェルサイユ死刑囚解放事件」に関わったりもしていました。

ただ、フランスでの死刑制度廃止は生前にはかなわず、彼の宿願が成就したのは、その死後から175年も経った1981年のことでした。
ここでその問題の是非については立ち入りませんが、本書は当事者である死刑執行人という立場から書かれた死刑制度への反対の書という点でも、非常に珍しいものです。差別と偏見、また死刑制度といった社会的なテーマについての貴重な議論の題材を提供してくれる、稀有な一冊であると言えるでしょう。
このような意味でも、この『サンソン回想録』は、今日においてこそ、改めて一読すべき価値と意義を有しているのです。

(3)副業が医者だった

シャルル-アンリ個人だけの話ではないのですが、サンソン家は代々、実は医者を副業としてきました。
引き取り手がない刑死人の解剖を行うことによって人体の構造を知り尽くすことができたということもあり、医学に関する高い水準の知見を有していたのです。
サンソン家の治療の評判は非常に高く、市井の医者が見放したような難病の患者に治療を施すなど、その腕の良さが広く知られていました。
『サンソン回想録』でも、サンソン家が医業の一環として、リューマチに苦しむ某公爵の使い走りとしてやってきた少年に金貨十枚で膏薬を売る様子が詳細に描かれています。
これもまた、サンソン家の貴重な収入源の一つでした。

サンソン家の人々は治療にあたり、貴族などの金持ちからは上に掲げたエピソードのように高い報酬を得る一方、貧しい人々からは金銭を受け取らないことを伝統としていました。
本書では、近隣の界隈の貧しい人々に施しをする場面が描かれています。
またシャルル-アンリ自身も、自らが医業によって得た知識を子孫に遺すために、医学書を書き残したという逸話が残っています。

このように、処刑人としての仕事で人の命を奪わざるを得なかった一方で、もう一方では医者として人の命を救っていたのです。

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以上見てきたエピソードからも、処刑人という言葉が抱かせる恐ろしい印象とは相反して、シャルル-アンリ・サンソンという人物は、非常に冷静沈着かつ真面目な人柄で、さらには先進的な人道的思想の持ち主であったことが分かります。
ステロタイプな処刑人のイメージとは異なる、アンビバレントで人間的な苦悩と思想を抱えた姿にこそ、サンソンという人物の特異な魅力を感じられると思います。

2.人気漫画・ゲームにも登場!

シャルル-アンリ・サンソンの名は、最近では日本でも、ポップカルチャーの方面を経由して、徐々に広く知られるようになっています。
ポップカルチャー経由でサンソンの名前を知った方であれば、おそらくそのきっかけに『イノサン』『Fate/Grand Order』の2作品のいずれかを挙げられる方が多いのではないかと思います。
この両作品に、シャルル-アンリ・サンソンが登場します。

『イノサン』(集英社)は、坂本眞一さんによる漫画です。安達正勝さんによる『死刑執行人サンソン』を出典とし、第1部の主人公として、耽美的かつ劇的にシャルル-アンリ・サンソンの数奇な運命を描いた本格歴史漫画です。昨年には舞台化もされており、すでに累計150万部以上を突破している大人気コミックです。

もう一方のスマートフォンゲーム、通称「FGO」こと『Fate/Grand Order』(TYPE‐MOON)は、伝奇活劇「Fate」シリーズのRPG作品です。全世界でなんと2000万件以上もダウンロードされている大人気ゲームです。
この作品で、サンソンは、歴史・伝説上の人物などが現世に召喚された存在「サーヴァント」の一人として登場します。人類史を救うために戦う主人公らと共に冒険したり、あるいは時に、その前に立ち塞がったりもするという大活躍です。

いずれの作品のサンソンも、史実の彼の人となりや処刑人としてのエピソードなどを基として、アンビバレントな苦悩を抱えながらも清廉誠実であろうとした魅力的な人物として、たいへん丁寧に描かれています。

なお、これらの漫画やゲームがお好きな方向けの、有益な情報があります。

『サンソン回想録』では、「シャルル-アンリ・サンソンの関連略年表」「サンソン家関連文献・資料案内」と題した2つの付録資料を収めています。
「シャルル‐アンリ・サンソンの関連略年表」は、サンソンの生涯について見開き1ページで簡潔にまとめたもので、その生涯の軌跡を概観できます。また「サンソン家関連文献・資料案内」では、上で紹介した2作に加えて、サンソンが登場する代表的な小説・漫画・ゲーム作品や、サンソン家に関連した書籍・論文を、簡潔な説明とともに紹介しています。

ここでしか読めないエピソードも含んだ原典であるというだけでもコアなサンソンファンにとっては「買い」なのですが、さらに資料性をも備えた本書を作業デスクの上などに置いていただければ、今後の活動が大いに捗るのではと思います。

3.バルザックの『サンソン回想録』について

そんなサンソンを主人公としたバルザックの『サンソン回想録』ですが、果たしていったい、どんな内容の本なのでしょうか?

と、その前に一つ。
もしかすると気になっている方がいらっしゃるのではないかと思いますので、本書にまつわる重要な事柄を一つ、先に述べておきたいと思います。

最近『サンソン家回顧録』という題名の本が私家版で刊行されたことをご存じの方もおられるでしょう。
最初に申し上げますと、この『サンソン回想録』と『サンソン家回顧録』は、実は、著者からして違う、まったく別の本です。

そもそも、一般に『サンソン回想録』と呼ばれる本には、同じ名前で呼ばれる3つの異なる書物があるのです。

1つ目が、今回邦訳したバルザック版『サンソン回想録』
1829年に書かれたもので、来歴と内容については、後ほど詳しく説明いたします。
2つ目が、『高度作業執行人の回想録、恐怖政治下のパリの歴史に貢献するために』
ロンバール・ド・ラングルという人物によって1830年に書かれたものですが、あまり史料的価値は高くなく、現在のところ邦訳もありません。
3つ目が、『サンソン家回顧録』
サンソン家最後の死刑執行人・六代目アンリ-クレマン・サンソンによって、前の2冊よりも少し後の1862~63年に出された、全6巻の長大なものです。
このアンリ-クレマンは、ギャンブル三昧の浪費の末にギロチンを質に入れて死刑執行人を罷免されたというとんでもない人物ではありますが、本書を書き上げて、当時としては異例の6万部以上を売り上げ、サンソン家の名と事績を後世に伝えた立役者でもあります。この『サンソン家回顧録』には一冊物の簡約英訳版が存在し、現在、それを元に一部を原典から追加で訳出してオリジナル資料を付したものが、大阪大学の西川秀和さんの個人出版によって上下巻分冊で日本語訳が進められています。本書刊行とほぼ同時期に、下巻が刊行予定です。一部は断片的に紹介されていたのですが、こうして一冊の本となるのは初めてです。
僥倖というべきか、今回バルザックのものとは異なる題名で刊行されたことにより、奇しくもこの2冊(『回顧録』/『回想録』)の区別がつきやすくなりました。
『サンソン家回顧録』は当事者アンリ-クレマンが書いたという点や、ボリューム面からも、サンソン家全般、特にバルザックの『サンソン回想録』ではあまり記述のないサンソンの後半生にも詳しく、資料性に富んでいるものです。

2冊を読み比べるのも非常に面白いので、ご興味のある方には、本書と合わせての購入をおすすめいたします(現在紙版は上巻品切・下巻は既刊購入者向けのみの販売中ですが、ウェブ版がnoteにて購入可能です。また、本文の試読もできます)。

さて。
バルザック版の『サンソン回想録』に話を戻します。

冒頭で述べた通り、『サンソン回想録』は、各種全集・選集などにも入っていない、本邦初訳の幻の作品でもあります。
内容としては、サンソン自身の処刑人としての思想の核心、また晩年や青少年時代のエピソードを中心に語られています。
取材に基づいて書かれた、ここでしか読めないテキストも多く含まれているため、『サンソン家回顧録』と並ぶ、今日にサンソンの人物像を伝える、貴重な「原典中の原典」です。

もちろん、バルザックの幻の未訳作品の本邦初紹介であるということだけでも非常に画期的であり、フランス文学・海外文学全般にご興味がおありの方にも注目いただけるのではと思います。

なお、本書の元々の題名は、『フランス革命期の刑事判決執行人サンソンによる、フランス革命史に貢献するための回想録』という、非常に長いものです。
邦訳にあたっては、メインのタイトルを『サンソン回想録』とし、「フランス革命を生きた死刑執行人の物語」という副題を添えました。

そんな本書が、これまで紹介されてこなかった最大の理由として考えられるのは、「バルザック自身の手による確定した原書テキストが存在しないため」であると、本書の「まえがき」でも述べられています。

というのも、この『サンソン回想録』は、そもそも1829年に元々の原書が刊行されたときは、レリティエ・ド・ランという人物との共著だったのです。1829年、まだ30歳で当時は売り出し中だった気鋭の作家バルザックとレリティエ・ド・ランが、サンソン家に代々伝わる史料や、シャルル-アンリの息子であるアンリ・サンソンに直接に取材を行ない、4代目シャルル-アンリ・サンソンに成り代わって、本書『サンソン回想録』を書きました。
しかし後年、どんどん有名になる文豪バルザックの書いたものと、レリティエ・ド・ランの書いたものの間とでは圧倒的に評価が分かれ、後者は価値のないものとみなされてしまいます。

バルザックの死後、フランス語の初めてのバルザック全集の編纂時、『サンソン回想録』が収録されることになりました。
この折には、両著者の知人で、執筆過程について非常に詳しかったマルコ・ド・サンティレールという人物が、共著者レリティエ・ド・ランのテキストのみを省き、バルザックの手による部分だけを振り分けて抽出したテキストが収録されました。
サンティレールによるこのテキストの振り分け作業については、編集人に宛てた具体的な分類指示の手紙なども残っており、ある程度は信が置けると思しきものなのですが、その振り分けに対するバルザック自身によるコメントが無いことから、のちの研究者から、当然、疑義と異論も出ます。その後に出たプレイヤッド版バルザック全集は、テキストや章立ての作り方などがコナール版と一部異なるヴァリアントになっています。

ことほどさように、研究者にとっても手強い、込み入った事情があったことから、なかなか本邦での本作の紹介は難しかったものと思われます。

今回の邦訳では、バルザック・フランス革命史の双方に通暁した訳者安達さんの手により、2種類のフランス語版バルザック全集(コナール版・プレイヤッド版)のうち、コナール版を底本として、一部プレイヤッドを参照する、という形態をとりました。
一部の異なるテキストを較べてより相応しいものを選び、適宜見出しをつけるなどの工夫を施して、最大限望みうる厳密なテキスト選定と訳出を行ったものです。

また、今回は訳者安達さんの手による豊富で行き届いた訳注&詳細な解説を付しており、バルザックを初めて読む方、18世紀フランスの文化や歴史に詳しくない方でも、読み進めながら、物語の内容を充分に理解することができるようになっています。

複雑な魅力を持った本書について、訳者安達さんは、あとがきでこのように表現しています。

この『サンソン回想録』という本は、不思議な本である。歴史であり、物語であり、思想である。
バルザックはサンソン家一族がどれほど苦しい思いで生きてきたかを克明に描いている。その合間合間に、様々な事件・出来事を取り上げ、二百年以上前の時代の様相を具体的に描いてみせてくれてもいる。今では信じられないようなことが起こっていたことをわれわれは知る。

いわば本書は、フランス革命の裏面を克明に描き上げた豊饒な歴史書であり、死刑執行人サンソンとその一族がたどった数奇な運命の物語であり、差別と偏見に抗ったヒューマニズムの闘いの記録を伝える不朽の思想書でもあるのです。 

4.【告知】発売日&関連企画お知らせ!

『サンソン回想録』の発売日のお知らせ。
2020年10月16日(金)取次店搬入発売です。

これは偶然なのですが、10月16日は、1793年に37歳でサンソンの手によって処刑されたマリー・アントワネットの命日に当たります。

書店店頭には、全国の大型書店・一部書店を中心に、早ければ翌17日(土)~翌週頃にかけて、また各ネット書店でも入荷次第、順次発売開始。
弊社の本は、恐縮ながらお近くの書店さんには在庫がない場合もございますので、事前に店頭にてご予約・あるいはお早めにご注文いただけますと、確実に入手できます。

スマホから本稿をご覧の方は、以下の枠内のスクリーンショットを撮影して書店員さんにお見せいただければ、全国の書店でスムーズにご注文可能です。

書名:『サンソン回想録 フランス革命を生きた死刑執行人の物語』
著訳者名:オノレ・ド・バルザック著/安達正勝訳
出版社:国書刊行会 
発売日:2020年10月16日
ISBN:978-4-336-06651-0 C0022
体裁:四六判上製・総336頁 
定価:本体2400円+税

なお本書の値段を、『FGO』の聖晶石(ゲーム内アイテム)に換算すると約20個分。しかも確定で手に入るので、大変お買い得です。

装幀は、弊社でも人気のポーランドの怪奇小説家ステファン・グラビンスキの作品の装幀をはじめ、スタイリッシュで時に度肝を抜くインパクトのある仕事の数々で知られる、SURFACEのコバヤシタケシさんによるデザインです。
装画には、冒頭でも掲げたEugène Lampsoniusによる、もともとバルザックの短篇小説に添えられていた、今日残る最も著名なシャルル-アンリ・サンソンの肖像を使用しています。
「フランス革命の影の主役」サンソンの数奇な運命と人生を想起させる、白黒を基調としたデザインは、特色ブラックインキによる印刷に加えて、タイトルに黒艶箔押し加工を施しました。

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『サンソン回想録』カバー&帯&別丁扉校正紙

手にして棚に収めるだけでも心を満たしてくれる、非常に美しい仕上がりの単行本になっています。

なお、今回はKindle版も、発売日と同日10/16(金)に配信予定です。
紙版がオススメですが、お値段は少しお安くなっていますので、電子派の方は、こちらもぜひご利用ください。

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さて。
最後に、本書に関連した企画のお知らせがございます。

【無料試し読み】まえがき&本文第1章を期間限定で公開します!

本書『サンソン回想録』の概要を紹介する訳者安達さんによる「まえがき」と、本書のプロローグ的な内容の第1章「死刑執行人の宿命」の無料試し読みを、期間限定で公開します!

第1章「死刑執行人の宿命」には、以下の2つのエピソードが収められています。

※当時の司法制度と死刑執行人の置かれていた状況を明かしながら、死刑執行人としての宿命によって生まれ出る苦悩と葛藤をサンソンが語るプロローグ「司法制度と世間の常識」

※フランス革命終結後、皇帝ナポレオン1世が、建設中の「栄光の殿堂」の現場で、老いたサンソンと偶然に邂逅する衝撃的なプロローグエピソード「ナポレオンに会う」

「司法制度と世間の常識」から分かるサンソンの思想は、フランス革命から200年以上が経つ2020年の「今」と変わらない、いや、このレベルの清新なリテラシーや論理を持っている人は現在でもなかなかいないのでは、と舌を巻くほど驚異的なものです。

また、「ナポレオンと会う」で描かれる老サンソンとナポレオンとが偶然に出会う瞬間が、実にドラマティックで、物語としても出色の出来です。
ここでは、ナポレオンに対してサンソンがある意図を持って取った行動が描かれており、ナポレオンとサンソンの関係にご興味がある方は必読です。
(バルザックは「元祖大衆小説家」と言われているだけあり、こういう劇的な場面作りがえらく上手くて面白いのです)

ご購入を迷われている方、ここの「はじめに」と第1章「死刑執行人の宿命」だけでも、ぜひ、ご一読下さい。

こちらの『サンソン回想録』無料試し読みページよりご覧いただけます。
【2020年10月2日(金)~11月1日(日)まで】

すでにご予約の方も、ぜひこちらで予習いただいた上、刊行までお待ちいただけましたら幸いです。

そしてこの他にも、本書に関連したいくつかの企画を密かに進行中です。
決定次第、続報いたしますので、どうぞご期待下さい!

フランス革命史・フランス文学史における重要な一冊にして、知る人ぞ知るバルザックの幻の未訳本が、ここに、待望の本邦初訳と相成りました。
歴史を愛する人。
サンソンを愛する人。
バルザックを愛する人。
『イノサン』や『FGO』を愛する人。
フランス文学や海外文学を愛する人。
そして、本稿をお読みいただいたすべての人へ。
この『サンソン回想録』を手に入れて、フランス革命を生きた死刑執行人シャルル‐アンリ・サンソンの数奇な運命の物語をともに辿りながら、驚くべき思想の数々と、激動の歴史の瞬間に、ぜひ触れてみて下さい。

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『サンソン回想録 フランス革命を生きた死刑執行人の物語』
オノレ・ド・バルザック 著/安達正勝 訳
2020年10月16日刊
ISBN978-4-336-06651-0
総336 頁 定価:本体2,400円+税

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