外国人だから?どうせ分からないから?

「クソが」

私はこの言葉が忘れられない。

自分が言われたわけではないのに怒りを覚えた。

カンボジアのお店での出来事。

「このお金は古いので使えません。他の1ドル札はお持ちですか」

カンボジア人の店員に尋ねられた男性は

「なんで?これ、さっきおつりでもらったんだよ」

との返答。

ここまでは理解できる。

カンボジアではアメリカドルが一般的に使われている。

しかし、ドル札でも破れたお札は価値が低くなる、発行年度が古いお札は偽札の可能性があるということからお店では受け取り拒否をされることがある。

一方で、お店側が平気でこれらの紙幣をお釣りとして渡したり、両替の際に混ざっていることもしばしば。

ネットや旅行誌などに記載されていますが、知らない旅行者の方もいる?

この男性は前の買い物の際に古い1ドル札をお釣りとして受け取ってしまったのだろう。

「なんで?おかしいじゃん。さっきもらったんだよ。さっきお釣りで渡されたの。」

このような言葉を繰り返す男性に

「申し訳ありません。これがカンボジアでのルールなんです。」

と私が仲介に入り、文句を言いながらも新しい1ドル札を投げるように出した男性。

そして、最後に冒頭の一言。

私ではなく、カンボジア人の店員に向かって発した。

自分が受け取った紙幣が、「これは使えない」と言われて混乱する気持ちはよくわかる。

使えないものを渡されたことに腹を立てる気持ちもわかる。

しかし、この店員が悪いわけではありません。怒りの矛先が違う。


また、「キチガイって下手という意味ですか」と聞かれた時も悲しい気持ちになった。

ある日、スタッフに聞かれ、はじめは頭がハテナでいっぱい。

お客様に商品を説明することは難なくできる彼ですが、こんな言葉をどこで聞いたのか。

私は日本で生活していて、キチガイという言葉を使わない。

人に対して発するのは小中学生が言い合いするときくらいではないでは…

「どこでこんな言葉知ったんですか?誰に言われたんですか」

と聞く私に「お客さん」との返答。

どういうシチュエーションで聞いたのかはわからない。彼に直接言われたわけではないのかもしれない。

しかし、下手という意味ですかという聞き方をされたことから、この言葉が少なくとも良くないことを表す言葉であるということはわかり、もしかしたら下手という意味かもしれないと予想したことはわかる。


もちろん日本にいたって、人に対してひどい言葉を言う人はいる。

でも、日本語を一生懸命覚えて、使おうとしている彼らにこんな言葉をかけないで欲しかった。

みんなの日本語を使って、分厚い辞書を使って独学で勉強して、

仕事の合間にたくさん単語を覚えて、読みの練習をして、

知らない言葉や言いたいフレーズがあれば積極的に聞いて、

お客様に説明するために毎日1つ以上は新しい言葉やフレーズを吸収して実践して、

すごく頑張っていることを知ってるからこそ、彼らに向けられた彼らの言葉が悲しかった。


私には「どうせ言っても分からないだろう」という思いがこれら2つの言葉には込められているように思えて仕方ない。

どうせ伝わらないだろうと思っているかもしれないけと、正確に言っていることが分からなくても言葉の調子や表情で、言葉がいい意味を持つのか悪い意味を持つのかくらいは伝わる。

伝わる伝わらないに関わらず人を不快にさせることを言わないのはもちろん、伝わらないからこそ、むしろ言葉の使い方には気をつけるべき。

ましてや理解できないだろうという思いを持っているとしたら、人を見下しすぎ。

旅行先でこういうことをする人がいると思うと同じ日本人としての恥と申し訳なさ、そして同時に怒りと悲しみを感じる出来事だった。






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