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近年の小学校お受験試験内容の動向3 有名小学校の入学試験 お受験合格への道2022

 今回は近年の小学校お受験の第3弾として、有名小学校の入学試験について掘り下げて伝えていけたらと思います。

近年の小学校お受験試験内容の動向

 コロナ禍の現在、小学校お受験も今後は大きく変化していくことが考えられます。2021年度(2020年受験)では、試験内容が変更(変更を余儀なくされた)となった小学校も認められました。

 また、コロナ禍を契機に教育のICT化はさらに加速し、今後の3ー5年で学校教育の構造が大きく変化していく可能性も考えられます。そのため、家庭においては、それらの教育の現状から将来の日本経済や世界経済を予測して、大切なお子さまに効果的で有意義な教育機会を設ける能力が必要となってきます。

 その様な社会や教育制度の過渡期のなかで、柔軟性や弾力性のある教育機会を提供できる私立小学校の人気は、今後もますます高くなることが予想されます。

 近年の私立小学校の需要の高さを例に挙げてみましょう。以前、埼玉県には私立小学校は浦和ルーテル学院小学校、一校しかありませんでした。

 しかし、現在では
・開智小学校(岩槻市) 4ー4ー4制を導入
・さとえ学園(さいたま市) 水族館とプラネタリウムがある
・西武学園文理小学校(狭山市) 英語シャワー教育で世界に発信を目指す
・星野学園(川越市)中高別学から共学にシフトチェンジ
 が新設され計5校となっています。
 
 また、副都心線を利用することで埼玉の川越から渋谷まで乗り換えなしで片道50分となり、青山学院初等部、東京女学館小学校、慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等科などを受験する子どもたちも増えました。
 
 さらに、東急東横線が副都心線と相互乗り入れを開始したことで、元町・中華街まで乗り換えなしで行けるようになり、東京と神奈川の県境にある多摩川の下流地域に住む人には不利といわれた横浜雙葉小学校などへの受験も増加している現状もあります。
 
 近年のその他の首都圏私立小学校数は、
 東京都:54校[東京農業大学稲花小学校が2019年4月に開校]
神奈川県:28校
 千葉県:  8校
 と、私学の受け入れ態勢の状況は整備・強化されてきています。
 
 一方で、街の書店を覗いてみるとと入学試験問題集も、沢山の種類が販売されています。中には、「こんな難しい問題、本当にできるの?」と、疑問を持つものもあります。

 しかし、問題集を読んでいると、学校側がどのような子どもを求めているか意図もわかってきます。

 都市伝説的なうわさでは、「頭脳明晰、成績優秀、名門家庭の子女」だけを求めている、との話もありますが、そんなことはありません。

学校が求める子ども像

 基本的に小学校お受験に関して学校側が求めている子ども像は、
「知力・徳力・体力・気力が、学齢期にふさわしく、バランスよく育っている子」
 と言えます。

 この4つの能力は、小学校お受験に必要な基本的な能力ですが、短期的に身に付くものではありません。受験準備は、育児と同様、一歩一歩、確実に前進を目指す、地道な努力が必要なのです。
 
 では、学校側は、この4つの能力を、どのように評価・判定しているのでしょうか。少し詳しく掘り下げていくます。

知力

 知能の定義には、いろいろありますが、ここではその中身を、知覚力・記憶力・言語能力・数能力・思考力とします。

 ・知覚力は、見たり聞いたりするものを、注意深く受け止める能力
 ・記憶力は、覚えこむ力・覚えている力・忘れたものを思い出す力で、観察力・弁別力も含む
 ・言語能力は、語彙力・表現力
 ・数能力は、数・量・図形・空間に関する能力
 ・思考力は、推理力・構成力・判断力(洞察力・見通す能力)などを含む。思考力には、答えをいくつも考えられる拡散思考能力(創造的思考力)もある
 ※小学校お受験対策用に知力の解説を分かりやすくアレンジしたものです。

徳力

 これは、社会性や協調性といった「集団生活への適応力」を指します。これらのなかには社会規範(倫理観・道徳観)も含みます。

 小学校生活は原則、集団生活であり、他者との関わりの中で形成されます。そして、それによって、自主的に取り組む姿勢や自身をコントロールする自己統制力が養われてきます。

 子どもは成長過程のなかで、家庭では許されても、集団生活では認められない言動を、幼稚園や保育園での生活を通じて経験し、「共生、共に生きること」を学習し、協調性を身に付けています。

 グループ別に行われる行動観察型のテストや運動テストなどで、日常の生活環境や養育体験が言動として表出します。例えば、過保護であればわがままに、過干渉であれば消極的な態度になりがち(評価・判定)です。

 また、一例として、ペーパーテストでも、指示されたことをきちんと守らないと、大きなマイナス点となります。

 「始め!」 と言われる前に始めてしまったり、「止め!」 と言われても止められなくては、人の言うことを聞く姿勢ができていないと評価・判定されます。

 これは、規則や約束を守ることは、集団生活をスムーズに進めるために、欠くことのできないルールとされているためです。

 公開模擬テストを受けて、「社会性や協調性に問題あり」とチェックが入った場合は、通っている幼稚園や保育園の先生にヒアリングしましょう。
 「少し、問題がありますね!」
 といった返事があった場合でも、「大く問題あり」と受け止め、お子さんを取り巻く環境を、再度、見直すことをお勧めします。多くの場合、ご両親やそれらの周辺の育児姿勢に、原因があることが多いからです。

 また、以前のコラムでも取り上げましたが、乳幼児教育で最も大切なのは情操教育だと感じています。そして、情操教育とは正しい知力と、正しい徳力が合わさって効果を持つものです。

 つまり、徳力とは単に集団生活を円滑に送ることのみならず、社会規範である倫理観や道徳観念を正しく身に付けることによって養うことができます。

体力

 他者からの指示を理解し心身で表現する理解力、機敏性や俊敏性を問う単純な運動能力と、どれだけ頑張れるかといった忍耐力や持久力、耐久力などが判定されます。
 ※通学に必要な体力が養われているかも重要なポイントになります。

 体力不足は、単純な運動的な面だけではなく、忍耐力や持久力、耐久力が影響する「意欲」などの学習マインドにも、大きな影響を与えています。集中力に欠け、すぐに飽きてしまうお子さんは、体力不足にも原因があるとも言われています。

 小学校お受験では夏休みから秋の試験当日まで、大変なエネルギーを必要とします。体力や気力は早めに養っておきましょう。

 ボールつきや縄跳びは、バランス感覚を養う全身運動です。目標を立てて挑戦し、「持続力」を育むことを、生活体験や遊戯活動を通じて養うと効果的です。また、子どもの運動能力をチェックし、バランスの良い運動能力・感覚を身に付けましょう。

気力

 小学校お受験の成否は、「気力」にあります。そして、これだけは、何十冊の問題集をこなすだけで身に付くものではありません。

 お受験の動機づけをどの様に行い、如何に整えていくのか。そして、どの様に自身に自覚させ、維持していくのか。これも、家庭での養育環境や姿勢と相関関係があります。

 早稲田実業学校初等部の説明会では

 「学校見学会には、是非、お子様と一緒に来てほしい。この学校へ行きたいとお子さんのモチベーションを上げることができるからです」

 との発言がみられました。コロナ禍の影響で状況は変化していますが、オープンスクールを実施する学校が増えてきたので、この様な機会を利用することも少なからず効果があります。

 気力を充分に養っておかないと、白百合学園小学校、立教女学院小学校、光塩女子学院初等科のように、ペーパーの枚数が多く、限られた時間内に取り組む試験には、対応できない恐れがあります。

 また、かつて慶應義塾幼稚舎が出題した、イーゼルを立てて絵を描くといった、未知の経験には戸惑うことも予想されます。

 その他にも、成蹊小学校のように、反復運動を繰り返したり、「止め」と言われるまで続けるような運動テストにも耐えられないかもしれません。

 ここで言う気力とは、自分一人でやり遂げた体験や体験学習を積んでいくことから身についた「意欲」や「自発性」のことです。

 これらは、ご両親が失敗を恐れずに、物事に積極的にチャレンジさせ、自立心を身につけるように養育していけば、自ずと備わってくるものです。子どもがチャレンジをしている時は、叱ることを少なく、励ます言葉が多くして、大らかな心で見守りることが重要です。

 そして、そういった姿勢で取り組むことにより、お子さまもできないからと言い訳をすることもなく頑張り、相手を思いやる心も育っていきます。

 子どもを叱ってはいけない、と言うわけではありません。人としてあるまじき行為をした時や、約束を守らない、嘘をついたときなどは、真剣に叱ることはとても大切です。「叱るべきときは叱り、褒めるべきときは褒める」と言ったメリハリが大切だと言えます。
 ※「叱ると」「怒る」は違います、次回以降のコラムでも取り上げていきたいと思います

 子ども自身が、自分でやり遂げた経験がたくさんあると、達成感を得られ、物事に取り組もうとする意欲が育っています。そして、その様に養われた能力が小学校お受験での本人の支えになっていきます。

まとめ

 幼児を対象にした試験は、大学などの入学試験とは違います。誤解を恐れずにいえば、必要なのは、記憶だけに基づいた知識の量ではなく、体験をふまえて培われた知力の総量と表現する能力だと思います。

 すでに、公開模擬テストを受験した方はご存知の通り、ペーパーテストの出題範囲は、ほとんどの場合、以下の10項目になっています。

1.  話の記憶
2.  数量
3.  常識
4.  推理・思考
5.  記憶力
6.  構成力
7.  巧緻性
8.  社会性
9.  言語
10.運動

 前述した4つの力を、ペーパーテストや行動観察、面接を通して、10項目に分けて判定しています。

 小学校側も、この10項目内で評価・判定していると思います。10項目については、次回以降、順次解説していきます。

 そして、以上の4つの力に加え、私立小学校では慶應義塾幼稚舎、桐朋小学校、桐朋学園小学校などを除き、ご両親には面接があります。志望した理由をきちんと話すことで、合否の評価・判定が行われます。

 小学校の入学試験は、試験を受けるのはお子さま自身ですが、「判定されるのはご両親の育児の姿勢である」と言われるのは、こういった仕組みになっているからです。推薦制度を取り入れる学校も増えてきましたが、その条件は、やはり、育児の姿勢を重視していると言えます。

 次回からは、実際に行われている入学試験についてお話します。
近年ではかなり難解なことを実施していますが、きちんと段階を踏んで学習し理解していけば、そんなに心配するものではありません。そのためにも、次回は、試験の形式を説明していきます。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 今回のコラムも私の個人的な知見に基づくものですので、必ずしも正しいとは言えませんし、他で主張されている理論を批判するものではないことをご理解いただいたうえで、一考察として受け止めて頂き、大切なお子様のお受験に役立てて頂けたらと思います。

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