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『君たちはどう生きるか』

公開2日目、 宮﨑駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』を観てきました。事前情報がポスター1枚のみという現代では考えられないスタートでしたが、公開初日から満員の映画館も出たようで、多くの日本国民が宮﨑駿という人間と彼が創る作品に期待と信頼をおいているのだなと感じました。

以下、映画本編の内容を含む諸情報や感想を記述します。未観賞の方はぜひ作品を観てからお読みください。

まずは感想から書いていきます。
「これぞジブリ、宮﨑駿。」
映画を観終わって最初に出てきた感想です。ジブリだなあという要素が作品全体に散りばめられています。家族、ちょっと変わったおばあさんたち、森、異世界、謎の生物(オウム?インコ?)、ごはん、ワラワラ(上の世界に行くと胎児として女性に宿る)。これまでの宮﨑駿作品に登場したものすべてを集結させたような感じです。宮﨑さんは生涯かけてこれを描きたかった。その思いや信念がひしひしと伝わってきました。このような感想を持つことにより、この作品こそが、宮﨑駿の生き方、考え方、価値観なのだと考えることができます。

私が考えるこの作品のテーマは
①生/死
②悪意
③創造/破壊
④選択
⑤社会構造
⑥「君たちはどう生きるか」
です。これらについて1つずつ書いていこうと思います。文章としてまとまりはないと思いますが、それでもよければ読んでみてください。

①生/死
作品の初め、主人公の少年眞人の母親が火事により死亡してしまいます。父親は母親の姉(眞人の叔母:なつこ)と再婚し、なつこは子を授かりました。
なつこは「死の世界」である下界に行きますが、そこには前述のワラワラがいます。ワラワラはぷかぷかと上にのぼっていきますが、ペリカンが彼らの上昇を妨げます。食べてしまうのです。無事胎児になれるワラワラとペリカンに食べられてしまうワラワラ。
また、下界には若き母親が火を扱う能力「ヒミ」として存在しています。作品終盤、ヒミが上界に帰るとき、眞人は「火事で死んじゃうけどいいの?」というようなことを言っています。
このように、作品全編に渡って「生/死」が描かれています。これはテーマの1つとして見てよいでしょう。

②悪意
眞人は自ら頭に傷をつけ、父親の怒りを学校へ向けさせました。そして、学校に行かなくてよい理由を作り上げたのです。これが、彼の悪意です。眞人は大叔父から下界を継ぐことを頼まれた際、「悪意のしるしを持っている人間はこの世界を守るに値しない」というようなことを言いました。悪意のある人間は世界を運営してはならない。そうするとどうなるか。世界が壊れる。王様インコは眞人にこの世界を継がせまいとし、自分で積み木を組み立てました。しかし積み木は崩れ、彼は机ごと破壊し、同時に世界も壊れていきました。ヒミを献上する代わりに自分がこの世界の支配者になろうという悪意を持った王がこの世界を奪い取ろうとした瞬間、世界は崩れていきました。
悪意。これはキーワードであり、テーマであると考えられます。

③創造/破壊
ある日突然降ってきた塔により想像されたと考えられる裏世界(下界)ですが、先述の通り、破壊の道をたどります。そしてこの創造と破壊がいかにして起こったのかと考えると、これが1つのテーマになりうると思います。だれが何のために塔を空から落とし、なぜ下界と繋がり、その世界がどうできてどう壊れたのか、その間何があったのか。この考察のために本作を何回観る必要があるだろうか。

④選択
人生は選択の連続である。これを再認識させられました。もし眞人がなつこを探さなかったら?もし下界を大叔父から継いでいたら?もしあのとき上界に帰ってきていたら?
眞人が採った選択の反対を想像せずにはいられません。

⑤社会構造
支配者と被支配者、創造者と被創造者、上に立つものの性格による世界の変化…。このようなことを考えさせられました。我々の世界に置き換えると、議院内閣制と大統領制、独裁制ですかね。作中では独裁制が描かれているのかな、と思います。周りのインコに支えられているように見えるが実は彼らはついてきているだけの王。強権といえるかは微妙ですが、独裁的な感じですね。そして創造者としての大叔父。創造者と聞こえはいいですが、実際のところ、下界を操っている人物です。独裁的ですね。
上界の日本も当時は軍国主義真っ盛り、時期的には近衛文麿内閣、東條英機内閣あたりでしょうか。
過去と現在の社会構造。いい対比ではないでしょうか。

⑥「君たちはどう生きるか」
さて、タイトルです。本作において、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』は2度登場します。頭を自傷した後と戦後引っ越す直前ですね。一つ言えるのは、『君たちはどう生きるか』を読んだ眞人が採った選択が、それ以降の本作のストーリーであるということです。確実に影響されているだろう、と思います。
宮﨑駿監督が、これを観た我々に「どう生きるか」と問うているかは微妙なラインだと思います。問うているとするならば、あまりにメッセージ性がない。ヒントがない。問の手がかりが無さすぎます。
ここまで書いておいて、ではありますがこの映画を見て私が感じた生き方は
どのような選択をしたとしても、一度きりの貴重な自分の人生。悔いなく生きることが、人生を全うするということだ。
です。

以上、考察まではいかない私の考えたちでした。私はテーマを投げかけただけですが、これを読んで、みなさんがどう感じてどう考えたか、ぜひコメントに残してくださると嬉しいです。


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