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 20240225国民保護法①

 救国シンクタンクセミナー地方自治体経営研究会による「誰でも簡単に活かせる地方自治体の世論調査の見方・やり方・使い方」と「国民保護」についてのセミナーに参加してきました。
 このセミナーは地方自治体の首長・議員・立候補予定者の方々を対象にしていますが、一般の方も参加できます。
 今回は小川元陸将の「国民保護」のお話から学んだことを中心に投稿します。



1・「国民保護法」成立まで

 
 略称法令名の国民保護法は2004年6月2日成立し9月に施行しました。正式な名称は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」で、所管省庁は内閣官房と総務省(消防庁)になります。

救国セミナー

 この図は、小川先生が約1か月かかって149条ある国民保護法を1枚の図でまとめて表したそうです。
 国民保護法は、国が外交交渉に失敗し戦争が始まってしまったので国の責任で保護しますというものだそうです。朝鮮有事を想定して作られたものですが、国が全部できないので県や市もやって下さいねということで作られているので、国や県がどうするかということが殆どで、国民が自分はどうするかについては殆ど書いておらず権利義務も少ないです。そして避難所を示して、基本的に住民は自分で逃げて下さいねと言う法律です。


 その後、南西諸島有事(台湾有事)が想定され、周辺事態から重要影響事態に変わり存立危機事態に変わりました。でも国民保護は変わらなかったので、朝鮮半島有事が前提で作った法律のままです。

救国シンクタンクセミナー配布資料


 1976年昭和51年9月6日の47年前に、ビクトル・ベレンコ中尉がアメリカに亡命しようと旧ソ連軍の戦闘機「ミグ25」で北海道函館市の空港に強行着陸した事件がありました。低空飛行で来たので解らなかったそうです。ミグ25は最新兵器だったので取り返しに来るのではないかと、自衛隊の一部は訓練名目でその地に行ったが、警察に取り囲まれて取り調べを受けていたので近づけなかった様です。
 
 栗栖 弘臣(くりすひろおみ)統合幕僚会議議長は
、「自衛隊はいざという時に超法規的に動くのではないか」ということを発言し解任されましたが、いざという時自衛隊は超法規的に動く事もあり得るとして、それを前提に研究し始めたそうです。
 それをきっかけとして、防衛庁において有事法制の研究がなされ、1978年「防衛庁における有事法制の研究について
が発表され、1981年有事法制研究に関する第一回報告で第3分類として所管省庁が明確でない事項に関する法令として「有事における住民の保護・誘導・避難等」が入りました。
 何処がやっていいかわからない中、自衛隊が言いだしたので自衛隊がやったらと言う意見があったそうですが、最終的には消防庁が所管してくれたということです。

栗栖 弘臣(くりすひろおみ)
1978年(昭和53年)7月、「週刊ポスト」誌上で「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはありえる」と有事法制の早期整備を促す“超法規発言”を行う。

Wiki


2017年の平成29年版 消防白書 
国民保護法の制定経緯
・平成15年6月「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(平成15年「事態対処法」)が公布・施行。
・平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(平成16年「国民保護法」)が成立同年9月17日に施行。
事態対処法改正、2016年平成28年3月「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」に。


追加:チャンネルくらら 陸海空軍人が見たシリーズで、小川陸将が国民保護法は朝鮮半島有事を想定したままである事を説明してしていました。
国民保護の為に輸送力を増強するという話の様です。
三文書で国民保護を重視すると記載されているから、是非進めて貰いたい。伊藤元海将の追加のご説明では、有事法制は武力事態対処法が平時と有事の二元論でグレーゾーンが無いので、国民保護は有事に成らないと発動できないとなっている。だから、国民保護は地下施設と輸送力を是非強くして欲しいと話されてます。

チャンネルくらら 国民保護について説明在り



2・台湾の全民国防

 全民国防とは、中華民国憲法第20条の「兵役の義務」に基づき、1992年に提唱された国防上の責任を軍人の責任とみなさず、国力のあらゆる分野を動員した体制の確立を目的とした理念です。 
 中華民国(台湾)憲法137条には「第137条 中華民国の国防は、国家の安全を防衛し、世界の平和を維持することを目的とする。 ②国防の組織は、法律を以て定める。」となっています。憲法に国防が明記され、2000年に「国防法」が制定され、国防法3条により2005年交付の「全民国防教育法」があります。

救国シンクタンクセミナー配布資料

 全民国防教育法は、青少年の愛国心と国防に対する意識の向上を目的として2005年に制定され、施行されています
また、中国による侵攻が発生した場合の一般市民の対処法について、平時における準備や避難、敵味方識別、正確な情報入手などを網羅した「全民国防ガイド」も存在します。


  人口当たりの核シェルター準備状況で、スイス・イスラエルは100%以上、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア67%、シンガポール54%、日本0.02%、台湾300%です。

ある日本の研究者との会話
日本:台湾大変ですね。
   中国にいつやられるかわからないし~。
台湾:何言ってんの?日本こそ大丈夫ですか?
   台湾は全民国防教育やってます。
   地下避難所もあります。 
   観光客も地下シェルターに入って貰ってるよ。
   日本ってさらに中国・北朝鮮・ロシアを想定して
   考えるんですよね?
   どう考えたって台湾に北朝鮮が攻めて来るなんて
   考えられませんよー。
日本:・・・


  民間防衛(みんかんぼうえい)とは、武力紛争などの緊急事態において、市民が国民の生命や財産を守り、被害を最小限に抑える活動です。民防とも呼ばれます。

救国シンクタンクセミナー配布資料


イスラエルには民間防衛軍(国防軍の構成組織)があり、HPや作成した国民避難マニュアルの講習動画「Lying down on the ground can save lives」があります。

ロシアにも、ロシア民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省と言うのがある様です(wiki)。

英国は2004年の民間緊急事態法で国の権限が強化された国民保護があります。
ノルウェーには、国防省に置かれた民間防衛局があるようです。

 日本での民間防衛組織はありません。平成16年に「国民保護法」が成立し、これに基づいて各都道府県と市町村が「国民保護計画」を定められています。
 内閣官房の
国民保護ポータルサイトには国民保護計画・国民保護業務計画があります。


 YouTubeには国民保護チャンネルがありました。「Jアラート概要・避難行動の原則」は北朝鮮有事を想定しての動画です。南西諸島有事を想定したものではありませんが。
 愛知県国民保護共同実動訓練(平成31年1月11日)は、不審物の発見による訓練が行われています。しかしそれらは極一部の方の訓練で、国民にお金はかけないんだなぁ~というのが感想です。


 こちらは2018年出版された濱口和久、江崎道朗、坂東忠信、富田安紀子による『日本版 民間防衛』の本です。既に6年が過ぎていますが、テロやスパイ工作、戦争、自然災害、移民侵略、インテリジェンスについて書かれていますので、知識として一通り書かれているのではないかと思います。

民間防衛

   

   国民保護法は、自衛隊の指揮機能で組織で動きます。
日本政府は「事態対処法」により事態対策本部が政府に出来ます。都道府県知事・市町村長は対策本部を作ります。
地方公務員は逃げても何も処罰されません。自衛官は
3年以下の罰則があります。
 支援自衛隊は支援で、公務員でもあるので積極的に命令で従事します。命令に対して動くと言うのは、都道府県が主で、公務員は法律に基づいて行政執行してるので、不正防止型なのでこうなのかな?
(3年以下の罰則と言うのは聞き間違いです。7年以下の懲役または禁錮と書いてありました。)

自衛隊法122条


台湾の若者に聞かれました。
台湾若者:日本がもめてる反撃の定義は何ですか?
小川陸将:反撃能力の議論しますか?
軍隊は反撃も含めて軍隊、自衛隊はこれから反撃能力つけてあげるね・・・、台湾の人には解らない。

3・災害派遣

 
 昭和60年御巣鷹山での日航機墜落事故災害派遣がありました。知事は関係してるのかなぁ~運輸省なのかなぁ~、どうなってるんだろー?
何処が対応するの?自衛隊じゃないの?
自衛隊が自らやる事に成ったのか?エーそうだったの?
要請があって出動しました。

 平成7年に阪神淡路大地震がありました。
兵庫県イタミ連帯と言う所で、県知事要請がなかなか要請がでなくて、大きく変わったのは国会で議論が起こり県知事なんで要請しなったんだ!

県知事が災害派遣を要請する立場という認識が出てきたと言う事。
潮目がかわった!

平成28年熊本地震があった。
熊本城の石垣が1本残っていたのは、加藤清正公が作ったのは残っていた。線状降水帯があって50年に1度くらいの珍しいものが毎年のように出てきた。
国が動いた。
災害派遣が大きく変わった。

 戦後の昭和の時代は自衛隊への誹謗中傷は凄いものでした。「無駄飯ぐらい」は当たり前ですし、「人〇し」とかいう人もいました。母親たちは自分の子供を自衛隊に行かせる事に絶対反対という人も身近にいました。
 憲法9条があり専守防衛の日本で自衛隊が軍隊として活躍する機会はほぼありませんから、正に存在こそ抑止力でした。そう言う中、自然災害の多い日本で有事(戦争・事変・自然災害)に自衛隊が出動するとなれば自然災害が考えられ、実際その活動は素晴らしく、多くの国民に信頼され受け入れられるのは時間の問題でした。
 自衛隊の災害派遣は、1954年昭和二十九年六月九日交付の自衛隊法第83条の規定に基づいて行われます。この規定では、都道府県知事などの要請により部隊などを派遣することを原則としています。
 自衛隊への初の要請は、1951年九州地方に上陸した「ルース台風」後の救助活動であったが、前例が無いということで司令部では応じなかったが防衛大臣直轄の総隊総監部に連絡して総理大臣の許可があり出動したとあります。その後、自衛隊法が出来、1959年伊勢湾台風の災害派遣に出動、そうやって当初の目的に沿って自衛隊は国民から信頼を得るようになっていったのです。(「自衛隊の災害派遣の史的展開」から)国民の心を欺いて軍隊を作ったと悪くとらえられかねませんが、世界の情勢から国防を考えたら普通に軍隊は必要だと分かります。

自衛隊の災害派遣の史的展開

 「出来損ないの軍隊」とか「ただ飯ぐらい」といった批判を受けていた自衛隊が、御巣鷹山での災害派遣に自衛隊が必要とされ、阪神淡路大災害で国会から自衛隊要請に言及する声が出た。正に潮目が変わる瞬間瞬間です。
 その何でもやってくれる便利屋的な災害派遣も多々見られ、危惧する部分ではあります。確かに自衛隊が軍隊の色を薄めるような動きが確実にあったようです
 災害時に、公務員でもある警察や消防そして行政職員の役割と責任をを持たせても良いのではないでしょうか?高度な機器や道具が使えるのですからもっと精度を上げ厳しく扱っても良いように思います。
 

(資料追加:)自衛隊の災害派遣の史的展開P27


 指揮命令で動く自衛隊に、外部(特に政治家)の方が無理難題言われても、受け入れる側がしっかりしていないと自衛隊が大変になってしまいます。災害派遣でこれまで見て経験した事から、「べからず集」と「議会での質問集」が出来たようです。
「べからず集」と「議会での質問集」については、国民保護②に書きたいと思います。

―当日の配布資料―――――
小川清史客員研究員(元西部方面総監陸将)詳細
1.国民保護法の概念図を用いての概要説明
2.国民保護法成立まで
3.自衛隊法にみる有事法制研究成果
4.防衛出動・国民保護措置と日本の態勢
5.民間防衛の定義
6.台湾の全民国防
7.台湾の民間防衛「全民国防」枠組み
8.各国の憲法などの記述(比較)
9.国民保護措置実施のための法制・条例1・2
10.反復できる住民避難=地下避難施設
11.エジプト軍に対するイスラエル軍の対応
12.第4時中東戦争イスラエル軍防御構想
13.国民保護に関する人口特性3枚
14.人口あたりの核シェルター準備状況
15.家庭用核シェルター
16.九州・沖縄地下避難施設数
17.おわりに
18.台湾の民間防衛(参考)
19.都道府県知事などの指揮機能組織
20.指揮機能組織の必要性
21.日航機墜落事故災害派遣(昭和60年)
22.阪神淡路大震災(平成7年)
23.熊本地震(平成28年)
24.九州北部豪雨災害(平成29年)

太字はたぶん講師がお話していた様な事です。
それ以外は調べながら追加で書いてます。
思いだしたら、加筆して行きます。


こちらは小川陸将の国民保護紹介動画です。


4・ミグ25の事件の顛末から学ぶべき事

 こちらの動画はベレンコ中尉が函館に強硬着陸した事件の話をご本人も含め話されています。


  動画は2023年12月に放送されてますが、2023年9月ベレンコ元中尉は亡くなったことが分かりました。76歳でした。(合掌)
 アメリカを通じてソ連が攻撃してくるのを政府は知っていた。でも、自衛隊に出動命令を出さなかった!
野党や国民の批判を恐れて・・・?
三木武夫総理は、日本が攻撃されても良いと?

なお、この抗争中である9月6日函館空港でのベレンコ中尉亡命事件が勃発したが、政府が三木おろしで忙しくてそれどころではなかったので対処に不都合が生じたという。

WIKI

選挙公約のロッキード事件解明だ!
マジですか?国家の非常事態の方が何万倍も大事ですよね?

 ミグ25の強行着陸があった当日、自衛隊は逐一報告するも最高指揮権者から防衛出動の命令が無かった。そこで、自衛隊は自国防衛の為に最低限の警備訓練を実施したということです。
 ところで、自衛隊は目視で敵の姿を確認しないと防衛出動の準備も出来ないのでしょうか?政府から要請が来る前に情報収集等動いているのでは?そう考えたら自衛隊のこの時の行動を、シビリアンコントロールされて無かったと避難するだけではなく、シビリアンが機能しなかったのはなぜなのかを考え、問題を整理し改善する事が大事です。それをきちんとしなければいずれは国民の命や領土領海ばかりでなく、国自体も滅ぶのではないでしょうか?
 この事件をきっかけとして、防衛庁で有事法制の研究がなされ、国民保護の議論が始まったそうです。2006年統合幕僚監部が出来、トモダチ作戦から統合作戦司令部が今年出来るのもその事件の教訓が生かされたからだと思います。地震災害対策もそうですが、事前にこうなるだろうと予測が出来るのに、日本は危機が起き誰かが死ななければ変えられないのはちょっと悲しい事ではあります。

こちらの記事が当時の状況を詳しく書かれていて、実際こうだったのだろう。縦割り行政の弊害が1日も早く解消しますようにと願います。



①おわり。


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