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見えていなかったものが見えた瞬間、人の真ん中にある熱を感じる。

<『毎日2分で人生に役立つ気づきが得られる小説』一度広がった視野はまるで止まることを知らない風のようだ。>


行動することに価値がある。

続けることに価値がある。

考えるだけだと意味がない。

行動しないのは、何もしないのと同じだ。

この言葉を聞くといつも彼女の姿を思い出す。

そして、弱く挫けそうな僕を再び前へ突き動かしてくれる。

8年前の冬、4年に一回しかこない彼女の誕生日を祝うために僕は彼女の家にいた。



「はい、誕生日おめでとう。」


「うわあ、ありがとう。開けていい?」


「いいよ。」


「え!?夜根津さんのライブチケット?これ、どうやって、、、」


「いいんだ、気にするな。前に好きだって言ってたから、よかったらどうかなって。」


「え、、うん。うれしい。ありがとう。」


「(ん…?あんまり嬉しそうじゃないな。どうしてだろう?)よかった、喜んでくれて。それで、これからどうする?時間もあれだし、外でお昼にしない?めっちゃいいイタリアンの店があるんだ。そこにしない?」


「えっ!!?イタリアン!!?行く行く!早く食べたい!!」


「(なんか、さっきより嬉しそうだな…)そ、そうだね。行こうか。」



「トマトとナスのピザと、アラビアータを、あと、サキは何にする?」


「小エビのサラダにオニオンスープ、マルゲリータピザに、カルボナーラをください。あ、麺大盛りってできますか?」


「(ラーメン屋じゃないんだよ)」

「あ、できますよ。」

「(できるんかいっ)」

「あ、あとパンもつけてください。」

「(あと食い過ぎな)」

「ここ、すごいおしゃれなレストランだね。」

「でしょー。前から、二人で来たいなーって思ってたんだ。また、二人で来れたらいいね。」

「あー、、うん。そうだね。あ、ところでさ、昨日友達のチカがさー… 」

「(最近のサキはこうだ。将来やこれからの話をすると反応が悪い。確かに、付き合って1年、将来について真剣に話し合ったことはなかった。それどころか、今彼女が好きなもの、熱中してることなど、今まで核心的な部分に触れることは一度もなかった。今まで、上っ面の会話ばかりを繰り返していた。僕はそのことが引っかかっていた。)」

「でさー、トオルは何が好きなの?」

「え?何が?」

「はっ?聞いてなかったの?オリンポス12神の中で誰が一番好きなの?」

「ポセイドンかな…(どういう話の脈略だよ!!)」

「トオルってさ、私のことどう思ってる?」

「え、どう、って。いきなりなんだよ。」

「ふーん。そっか。じゃあ、質問変えるね。私留学しようと思ってるんだけど。どう?」

「(えっ??どうって、どういうことだ?何を答えればいいんだ?何か試されていることだけは分かる。でも、一体何を試されてるんだ?)」

「…。分かった。もういい。それが答えなんだね。」

「えっ?どういうこと?」

「私、疲れちゃった。この関係。留学に行くのは本当。だから、もう終わりにしない?」

「え、ああ、うん。そうだね。(ああ、まただ。またこれだ。僕はいつもこうなんだ。付き合うまではいいものの、僕の恋愛は長続きしない。そして、これをどうにかしたいと思ってるんだけど、どうしたらいのかも分からない。ああ、神様、僕は何か悪いことでもしましたか?どうなんでしょうか、どうかお助けください…。)」

「えっと、勘違いしてほしくないんだけど、別に嫌いになったわけじゃないから。でも、都合のいい女だって思われたくないし、トオルのために一応言うけど、私、将来海外でボランティアに関わりたいと思ってる。今回のはそのための留学で。1年間だし、遠距離になるからお互い辛いのは避けたいから。あと、私、私の夢を本気で叶えたいと思ってる。でも、恋愛も勉強も色々楽しみたい。だから、それで、今までこのこと隠してて。今になってごめんだけど、なんか色々ごめんだけど、そういうことなんだ。」

たどたどしくも真っ直ぐな目をして語りかけた彼女の頬は赤く染まり、恥ずかしさと強い意志が現れているように見えた。

なんだ、こんなことだったのかと今になって振り返ると思う。

でも当時の僕には、ただただ毎度のように振られたという事実だけが頭の中を支配し、彼女の夢など、正直どうでもよく思えた。

でも、今なら分かる。

好きなこととか、やりたいこととか、なりたい自分とか正直に口にできる人は、かっこいい。

自分を持ってるというか、軸があるというか。

8年前の僕は果たしてそんな人だったのだろうか。

8年前の彼女との関係は満足のいくものだったのか。

今の僕で8年前に彼女ともう一度出会いたいと願うばかりである。

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