誰のしわざ

僕のクラスでいじめが発覚した。

いじめられていたのは信二。

いじめていたのは健とその一味。

僕はそれを知っていた。

でも黙っていた。

先生がホームルームの時間を使ってみんなで話し合うようにと言った。

先生はただ、見てるだけだった。

信二は喘息持ちでいつもマスクをつけている。

よく咳き込む。

健たちは信二が咳き込むたびに信二を見て口と鼻をふさぐそぶりをした。

「病気がうつる」そう言っていつもいじめていた。

僕は信二や健とあまり仲がよくない。

健のやってることは悪いことだと思うけど、病気はうつされたくない。

勝手だと思うけど、本心だから、信二には近づかないようにしている。

学級委員の桜が手を挙げた。

「健くんが率先していじめていました」

だからなんだ。

健は少し焦って

「俺だけじゃない、ユウヤもタカシもいじめてたぞ」

だからなんだ。

お前は信二をいじめてたことを認めてるのか、罪をなすりつけてるのかどっちなんだ。

桜は

「っていうか、いじめを見てて止めないみんなも悪いじゃん！」

こいつは一番アホだ。

自分が一番かわいくて、一番周りが見えてるとでも思っているのか。

自分しか見えてないじゃないか、いや、自分しか見えないのか。

誰もこの問題を解決しようとしていない。

しているのは犯人探しだ。

誰が一番悪いのか。

この事態を招いたのはいったい誰なのか。

みんな揃ってそんなことしか考えておらず、誰も自分が悪いとは思っていない。

そして、信二のことなど誰一人考えていない。

信二は今どんな気持ちで何を思っているのか、誰も考えていない。

先生は

「結局、誰が信二をいじめていたんだ？全員か？じゃあみんなで謝りなさい。」

こいつが一番の大アホだった。

仮にも大人であるお前がどうして率先して話し合いを進めようとしないんだ。

こんなクソみたいな話し合いを子どもたちだけで収集できる訳がない。

自主性だの、自治だの便利な言葉を使ってめんどくさいことや責任から逃れようとしている。

よく先生を名乗っていられるな。

そして、今この状況を理解していて、声を上げられない僕が一番の大バカ野郎だ。

批判ならいくらでもできる。

でも行動を起こさないとただ黙っているその他大勢と同じなのだ。

このまま蓋をして見なかったことにすることもできる。

でも、この事態や意識が変わらないとまた信二はいじめられる。

手が震えている。

背中に冷たい汗が流れた。

怖い。

見えない大きなものに僕は押しつぶされた。