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幸せはすぐここにあって、夢を追いかけるとそれが見えなくなる。

<『毎日2分で人生に役立つ気づきが得られる小説』電車の中や隙間時間で視野を広げよう!>

幸せはすぐここにあって、夢を追いかけるとそれが見えなくなる。

おはようございます。

幸せの居場所についてのお話です。「幸せはあなたのすぐ隣にある。幸せは訪れるものではなくて、そこにあると気づくことだ。」なんて言葉が最近になってちらほら言われているようですが、すぐそこにあるのに気づけないのはどうしてでしょうか。また、夢を追いかけているときの僕はすぐそこにある幸せに気づけているのでしょうか。今日はそんな夢と幸せのお話です。


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夢なんか、叶えたことないのに、どうして大人は夢を叶えろなんて言うの?

夢を叶えられた人はいいかもしれない。

でも、叶えられなかった人だって等しく、それ以上にいる。

夢なんか、信じちゃいけないんだ。

僕のお父さんみたいになるから。

僕のお父さんは普通のサラリーマンだった。

朝7時に家を出て、満員電車に揺られながら会社へ行き、なんだかよく分からない医薬品の営業をして夜8時に家に帰ってくる普通のサラリーマンだった。

生活はまあ、これもいたって普通で、食卓にはおかずが一品とご飯とお味噌汁。

お弁当の品数も通常営業。

夜は週に一回外食に行く程度。

可もなく不可もない。

でも僕はそんな普通が好きだった。

普通であることが一番幸せであると知っていたから。

でも、悪夢は急に訪れた。

お父さんが急に会社を辞めてきた。

僕は焦った。

お母さんも驚いた。

理由を聞くと、お父さんはこう答えた。

「ラーメン屋を開こうと思うんだ。」

僕は拍子抜けした。

こいつ、正気か、とお父さんの目を疑った。

しかし、何やら本気らしく、何年も前からさまざまな準備を始めていたらしい。

諸々準備が整った今日、会社を辞めてきたとのことだった。

僕には何もできないけど、応援はし続けること、そしてお店がオープンしたら一番最初の常連客になることを約束した。

それから5年が経った。

お父さんは家にはいない。

なんならお店もない。

お母さんは心の病気を患った。

全部、お父さんのせいだった。

地元では珍しいラーメン屋ということもあり、オープン当時は繁盛していた。

お母さんも手伝った。

お店の売り上げが安定期に入ると、お父さんはたびたび店を開けてパチンコに行くようになった。

昼間の忙しい時間帯はお母さん一人で働くこともあった。

僕も手伝う日もあった。

夜になるとお父さんはいつも酔っ払って帰ってきた。

そしてお母さんにセックスをせがんだ。

みっともない。

そんな感情が出てくるうちはまだいい方だった。

そのうち、お父さんは外で女を作って遊びに行くようになった。

もちろんラーメン屋はお母さんが切り盛りしている。

学校がない日は僕も働いた。


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ある日、お母さんがお父さんにこれからの経営について話を持ちかけた。

お店の経営はまずまずだったが、お母さんの体力が限界だった。

するとお父さんは「アルバイトを雇えばいいだろ」そう言った。

この時僕は気づいた。こいつはラーメン屋をやりたかったんじゃない、ラーメン屋ごっこがしたかっただけなんだと。

こいつの幸せはお母さんと一緒にラーメン屋をやることじゃなく、ラーメン屋を開いた瞬間がピークだったのだ。

夢を追いかけるふりをして夢が叶ったらあとはもう満足。そのあとの辛いことはやりたくない。そんな自分勝手な野郎だった。

実はその時、あいつは愛人との間に子どもができていたらしい。ふざけんな。

お母さんはお父さんの言う通りアルバイトを雇い、仕事を続けた。

しかし、もう疲労は限界を達し、仕事中に倒れた。

過労だと言われた。言われなくても知っていた。

しかし、お母さんはすぐに戻らなきゃと言っていた。お父さんが作ってくれたお店を守らなきゃと言っていた。

それは義務感にも似た依存だった。

お母さんは心からお父さんのことを好きだった。愛していた。

お母さんの幸せはお父さんと一緒にいることだった。

だから、お父さんの一切を拒まなかった。

案の定、復帰してからお母さんは病み始めた。

帰ってこない主人の店を一人で守りながら、一晩中お父さんの帰りを店の厨房で待つようになった。滅多に飲まないお酒に溺れた。心も身体も蝕まれた。

そして現在、大学を卒業した僕はすぐにこの暗黒の店を閉めた。

お母さんは泣いていた。でも、そうするしかなかった。

お父さんとはまだ婚姻関係にあるけど、もう3年、あいつの顔を見ていない。

あいつも、お母さんもお互いに依存していた。だから、お母さんは今でもあいつのことを好きだし、あいつはお母さんに店を任せきりで不倫ができた。

でも、それより、幸せを掴もうとして、追いかけて、走り続けても、掴めなかった。

昔の普通の生活の方が幸せだったんじゃないか、って考えると、本当に悔しい。

夢を追いかけるって、夢を叶えるって、今ある幸せも、愛情も、人間関係も、何もかも捨てて、それ以上の価値がある幸せや愛情や人間関係を手に入れるということだ。

覚悟とは、何かを諦めることだ。

今ある幸せを諦めて本当に欲しいと思わない限り、下手に夢を叶えない方がいい。


今日は以上でーす。明日もお楽しみに!

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