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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/02/19-2021/02/25_8w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信
することにしました。
まずは事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることは予めご了承ください。
※本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
※本noteは速報の位置付けとしています
※投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください

このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

2021年の第8週目である2月19日〜2月25日における、
日別の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
2月19日〜2月25日の週は、合計119件となりました。
中国の旧正月後の初週だからか、投資件数が増加しています。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は746件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、2月19日〜2月25日の週では、
公開金額合計で408億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は1,308.8億元となり、
わずか8週間で1,000億元(約2兆円)を超えました。

なお、今週の119件のうち69件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約2倍の規模になると考えられます。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の119件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、先週に引き続き、医療・健康の資金調達件数が最も多く、
合計で30件
となりました。
次いで、法人向けサービス、先進製造、Eコマースが上位に入り、
上位4業界だけで今週の件数全体のうち63.0%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、スマートハードウェアだけで、全体の57.8%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、
今週はEコマース、医療・健康、自動車・交通、先進製造の順に多く、
上位4業界で全体の92.5%
を占めています。

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1位のEコマース、3位の自動車・交通、4位の先進製造の調達金額が高い理由は、それぞれの業界で大型の資金調達が行われたためです。
大型資金調達を行なった企業をそれぞれ見てみます。

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Eコマースでは、兴盛优选(興盛優選)がシリーズDで、セコイアチャイナ・テンセント・テマセクなどから30億米ドル(約195億元)を調達しました。

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同社は2020年に中国で最もホットなビジネスとなった「社区での共同購入EC」や「生協型EC」と呼ばれる事業を行っています。
当該ビジネスについては、以下NewsPicksのレポートがわかりやすいので、おすすめです。

自動車・交通では、青桔单车(DIDI BIKE)がシリーズB+で、6億米ドル(約39億円)を調達しました。

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同社は中国を代表する企業である「DiDi」傘下の企業で、シェアサイクリング事業を行っています。

先進製造では、蜂巢能源(SVOLT Energy)がシリーズAで、中国銀行系の中銀投資やIDG Capitalなどから35億元を調達しました。
同社は次世代の電池材料、電池、モジュール、BMS、エネルギー貯蔵、ソーラー技術などの研究開発や製造を行っています。
後述にもありますが、同社は今回の資金調達を経て、ユニコーン企業になりました。
重要なので2回言いますが、シリーズAでユニコーンになりました。

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1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、
物流、Eコマース、医療・健康、自動車・交通の順に多く、
上位4業界だけで全体の65.0%
を占めています。
Eコマースは上述・兴盛优选(興盛優選)の1件で、
一気に2位へランクイン
しました。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の119件を都市別に見ると、
北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)の順にランクインしました。
今週は上位4都市だけで全体の68.1%を占める結果となりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.4%を占めています。
今週も5位以下には広州、蘇州、四川、南京、武漢、山東が安定的にランクインしています。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、
あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、
今週は長沙、北京、上海、常州の順にランクインしました。
長沙は上述・兴盛优选(興盛優選)、常州は上述の蜂巢能源(SVOLT Energy)案件によって上位に入りました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
北京、長沙、上海、深圳に集中していることがわかります。
このことからも、今回の長沙・兴盛优选(興盛優選)による大型資金調達はかなり大規模であることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)への偏りは未だあります。

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4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の119件では、シリーズAが43件で1位、シリーズBが24件で2位になりました。
これら上位2つのラウンドだけで全体の56.3%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
先週に引き続い、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、
アーリーステージの企業による資金調達が活発
であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、
シリーズDが最も多い199.2億元となり、全体の48.8%を占めています。
次いで、シリーズBが94.7億元で2位となり、全体の23.2%を占める形となりました。
これは、上述・兴盛优选(興盛優選)のシリーズD案件、上述・蜂巢能源(SVOLT Energy)のシリーズB+案件によるものです。
この2つのラウンドで全体の72.0%を占める結果となりました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
現状、シリーズA、シリーズD、シリーズBの順に多く
上位3ラウンドでの合計は全体の61.9%を占めています。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は2社が新たにユニコーン企業になり、
中国のユニコーン企業数は2021年2月25日時点で275社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

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[1社目]
企業名:摩尔线程
業界:法人向けサービス
拠点:北京
設立時期:2020年6月
バリュエーション:21.5億米ドル/140.0億元
主要な投資家:明皓投资, 红杉资本中国, 五源资本-晨兴资本, GGV纪源资本, 深创投, 字节跳动, 闻名投资, 第一创业, 海松资本, 融汇资本, 招商局创投, 小马智行Pony.ai, 和而泰
企業HP:https://www.mthreads.com/
※創業1年目で、セコイアチャイナ・バイトダンス・GGV Capital・Shenzhen Capital Groupなどから出資を受け、ユニコーン企業になりました

[2社目]
企業名:蜂巢能源

業界:先進製造
拠点:常州
(江蘇省)
設立時期:2018年2月
バリュエーション:26.9億米ドル/175.0億元
主要な投資家:长城控股, 常州创投, 浙大九智, 湖州铃轩 ,国投招商投资, IDG资本, 凯辉基金, 海通开元, 中银投资, 金融街投资集团, 德载厚资本
企業HP:https://www.svolt.cn/


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年2月19日〜2月25日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

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7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週9件の投資を行い、
先週に引き続き1位にランクイン
しました。
今週の投資先の業界は、法人向けサービスが最も多く、3件でした。
次いで、メディアが多く、2件でした。
その他、Eコマース(上述・兴盛优选(興盛優選)への投資)、教育、広告・マーケティング、ゲーミングで1件ずつの投資がありました。

セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は4件となっており、Eコマース(上述・兴盛优选(興盛優選)への投資)と法人向けサービス(上述ユニコーン・摩尔线程への投資)のほか、医療・健康や先進製造へ投資しています。


以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。

今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。



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竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

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