【連載】家族会議『本家と分家のわだかまり』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議6日目#3|本家と分家のわだかまり
――母のインナーチャイルドワークが進まないのは、案外根深いなにかがあるからかも。という姉の話を受けて、母が話し出したのは「分家」である母の実家と、「本家」との複雑な関係だった。(前回記事)
わたし:
そのおばあちゃんの根深さが、お母さんの根深さなのかな?
母:
かなぁ…
わたし:
まあ、どっちかって言うと今のはおばあちゃんの根深い話で、そういうのがお母さんにも影響してるのかな?って。
お姉ちゃんが言ってたのは、お母さんに何か根深いものがあるんじゃないかっていう意味だったけどね。
何かすごい嫌な思い…。もっと、今言ってないような何かがあったりするのかな?って感じだけど。
だから、そういうのに催眠療法とかがいいってことなんだろうねって言ったら、「そうそうそう」って言ってた。
母:
今思い出したんだけど、小学校の頃かな。習字やるんだよね。何年生かのとき。ずっとじゃなくて、授業の中でちょっとの間やると思うんだけど、その習字の道具ね、父親がいとこに借りればいいって言ったわけ。
わたし:
ずっとじゃないからね。
母:
買うんじゃなくて借りればいいって。で、借りたのよ。借りて使ったの。
だけど後からいとこに「貸したくなかった」と言われたことがあって。
わたし:
おじいちゃんが、ケチケチちっちゃな節約をしたせいで嫌な思いしたんだね。
母:
やっぱり、人は違うふうに使うじゃん。それってなんか、やだよね。そりゃわかる。
子供だしさ、その人の使ってたようになんて使えないから、借りたものだとわかってても適当に使ったと思うんだけど、返したときはすっかり元通りなわけじゃないよね。
そういうのはいとこにとっては嫌だったかもしれない。
わたし:
貸すのも借りるのも嫌だよね。結構いろいろ。
母:
うん、そうなんだよね。
わたし:
ちょっとおじいちゃんの配慮が足りなかったというか。兄弟だったらまだ違うけど…。兄弟でも嫌だってよく言われるのにね。
母:
兄弟みたいな感じでは育ったけどね。そんなことがあったりとか。
あと1個上のいとこが、なんかわたしの文句を言ってたらしい。ずっと大人になってから。
わたし:
大人になってから?
母:
うん。わたしが結婚してからだと思う。
結婚して地元を離れてから、いとこがお母さんの文句を言ってたらしいのね。やっぱ子供の頃のことだと思う。
それを言ったときに、先代のおじさんが「顔に傷つけたのはお前なんだぞ」とかって言って、いとこが黙っちゃったとか。何かそんなことがあったらしいの。後から聞いたんだけど。
――いとことは母が結婚してからも、年賀状のやり取りなどはしていたらしい。だけど母に対し、ずっと抱えていた何かがあったのだろう。そのいとこに幼いときに引っかかれた傷跡が、母の顔にあるのだ。
母:
なんか、ただ仲良く楽しく遊んだだけではない。何かがあって。いとこはいとこで何の文句言ってたかわかんないんだけど。
毎日行って一緒に遊んで、自分の家みたいにいたから。そんな中で嫌なことがあったんでしょうね。ちっちゃいときにお母さんは引っかかれて、向こうも、これはおばあちゃんにとっても、すごい嫌な思い出っていうか。
だからなんか、面白くなかったんだろうね。子供なりの喧嘩はやったとは思うけど、もっと何かね。
わたし:
まあでも、わだかまりがない方がすごいっていうか。
母:
そうだよね。
わたし:
なんか親たちが仲良くなかったんだから。親がそんなだったら、やっぱ子供には影響するよね。
そんな中でそこそこ仲良く、大きな喧嘩とかもなく過ごしたっていうところが、おばあちゃんらしいというか、おばあちゃんの血を引くお母さんらしいというか。あの辺の感じ。いろいろ思ってても表面上うまく付き合うことができちゃう。田舎特有のものがあるからこそだよね。
だけど、親たちの何か不穏な空気を感じてるから、時々そういうのが出ちゃう。出たり、不満がたまったり、いじめに繋がったりとかする。親同士の仲が微妙で、それが全くないのも変な話。
子供たちにとっても環境は悪かったなって思うね。
母:
なんとなく感じるよね。親のあれ。
わたし:
感じると思う。
そういう意味でもおばあちゃんは、本当は離れた場所に家を建てて、自分たちで独立した方がよっぽどよかったみたいな。感じになるんだね。
母:
そういう思いになったんでしょうね。
わたし:
それもわかるね、苦労したんだろうね。何かその辺が根深いのかな。
なんかおばあちゃんのことも癒してあげたくなっちゃうね。なんか、お母さんがおばあちゃんに言えないっていうのは、そういうおばあちゃんだから遠慮があるのかな。どっかで「かわいそう」みたいな思いもあって。
母:
なのかね。
――母と祖母は、どちらかと言えば本家側の親子から、なにかを向けられることが多かったのかもしれない。だけど母からは、本家の人への憎しみなどは感じたことがない。
母にとっては、家族のような存在で、お世話になった人たち。あくまでも。
そんな人たちからネガティブな感情を向けられることは、きっと悲しかっただろう。
- 今日はここまで -
今、祖母は認知症でグループホームに入所している。そこに、いとこたちは会いに来てくれた。母は数十年ぶりにいとこたちと再会し、祖母も母も懐かしさに涙を流した。
昔はいろいろあっても、歳をとってみればお互いに大切な家族のような存在だった。
いろいろあっても、再開して溢れ出すのは温かい感情だった。
放っておかれたわだかまりは、時間が埋めてくれたようだ。
そうなれたのは、それだけ濃い時間を一緒に過ごしたからだと思う。
<次回に続く>
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