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【連載】家族会議『わだかまりの解消に必要なこと』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

家族会議4日目#6|わだかまりの解消に必要なこと

――両親が結婚して48年経つ。その長い年月をかけて、たくさんのわだかまりを積み上げてきた。最初は小さかったわだかまりも、雪だるま式に大きくなっていった。

原因はひとつではない。

  • 話し合いができない

  • 気持ちを大事にできない

  • そもそも気持ちを感じることができない

  • 個人を尊重する意識がない

  • 意見を言うことができない

などなど。とくに母には、「意見を言えない」という特性がある。


:意見が2つ出たときに、どういうふうにしていくかなんていうことが・・・すごくできないね。

わたし:できない感覚があるってことだよね。

:うん。できない。できなかったというか。なに勉強してきたんだろう…。

わたし:そんなこと教えてくれないしね。

::そうだけど。小中高とやってるうちにいろいろなことがあるじゃん。勉強に限らず。みんなで何かを決めることだってあったわけだよね。


――学校など、多数の人が時間を共にする空間では、みんなが同じ勉強や行動をすることが求められる。それは主に、先生などの大人が決めている。

でも学習のひとつとして、意見を出し合って決めるという場もあった。あったけど、それをどうやるのか、どう意見を出せばいいのか、確かにきちんと教わった記憶はない。

本当は、そんなことこそ学ぶべきだった。と母は言う。


:意見を出し合って決めるとか、そういうのはできないって感じだったな。お父さんとの間で何か決めるときも。喧嘩になるかモヤモヤするかみたいな。


――「何かを決める」というタイミングは、生きていれば何度も訪れる。それが自分ひとりで決められる問題ならいい。でも自分だけの問題ではないとき、意見を言えないと誰かの意見に合わせることになる。もしくは誰かに意見を押し通される。

意見を言えるかどうかは、もともとの性格や考え方にもよるだろう。母の場合は、自分に自信がないことや消極的な性格、周囲の目を気にする親の教えが影響した。


わたし:お父さんもそう?多数の方に賛同したくなる派?自分の意見を貫く派?

:どっちかっていうとそっち(自分の意見を貫く)の方かな。仕事なんかでも、結構会社で少数派で動いてたよ。

わたし:お父さんはそうなんだね。


――父は逆に、周囲の目は気にせず自分の意見を貫くことができたらしい。らしいのだけど、それは時と場合による。

「長いものには巻かれろ」が基本理念の父は、自分の父親など、権力のある者には意見などしなかった。十分に、周囲の目を気にして生きてきたのである。

わたしの目から見た父は、確かに意見は言えるが、自分の意見を持っていない。つまり、誰かの意見(親や世間)に依存しているということだ。だから意見に反論されると、途端に自信がなくなってしまう。


わたし:お父さんはすごく自信がある分野と、すごく自信がない分野があるのかな。仕事とか勉強とか頭の良さを生かすことに関しては自信があるのかもね。違う?

:そうかもしれない。だけど、自分の頭限られてるっていうのを知ってるから、そういう場合は頼る。そこの使い方も結構、器用に使ってると思うけど。

わたし:うん。そういうところでプライドを優先して、意地になったりはしないんだね。

:プライドが前面に出てるって言うんだったら、こういう場(家族会議)はもうけられないと思う。

わたし:昔はそうだったでしょう?

:昔そうなのかな。

わたし:うん。そうだったと思う。今だからできることだとは思うよ。


――昔のわが家は、家族会議をするなどありえなかった。父を家長としたトップダウン方式だったからだ。

そんな父を、こういう場にひっぱり出したのは姉だ。うつを患ったことがきっかけで、お互いの気持ちを出し合い、話し合うことが重要だと訴えてきたからだ。


:これはお姉ちゃんの影響かな。そういう意味では変わってる。

わたし:変わったよ。すごく変わったと思う。

だから頭の良さを生かすこととか、ここは自分の限界だからあの人の知恵を借りようみたいなのは、頭の回転の良さを生かした仕事の仕方なわけじゃん。そういうのが得意ってことなんだろうなって。

そこに気持ちとかはないでしょ。足りない分をこれで埋めるぞってやってるだけだから、そういうのをばーっと考えて。

:そういうの得意だわ。気持ちがないところが。確かに。

わたし:そうだよね。ある意味仕事はそれでいい。目標目標達成のために必要なものを集めれば、それで結果が出る。もちろん気持ちがゼロじゃできないけど。
だからお父さんは、そこにはすごく自信があるんだけど、やっぱり気持ちの部分なのかな。

:気持ちだと思うよ。だって泉が、昔は違うって言うんだから。仕事でやった考え方を家庭にまで持ち込んでるわけだ。
スイッチがないんだよ。うちに帰ってきたら、会社と違うでしょうよというスイッチがなかったんだろうな。

わたし:うんうん。

:スイッチがないというか何だろう。その仕事の反動なのかストレスなのか。それをうちで出すって感じで本当に。それだって、自分の意見を通すっていう感じ。


――確かに父は、仕事も家庭も組織運営のように考えているところがあったと思う。家庭では自分がトップで、妻も子供も組織の一員。だからトップの言うことが絶対だと、横暴にふるまってきた。

気持ちを言い合う、話し合うなど、そんなことができる環境ではなかったのだ。だからこそ、わだかまりが膨らんでいった。


わたし:仕事でいくら嫌なことがあっても、家でニコニコするみたいな人も中にはいるけど。それはそれで無理があるんだよね。仕事で嫌なことあって、家で何事もなかったようにするなんてできない。

だから本当であれば、「仕事でこんなことがあった」っていうのを言う。状況がわかれば、ちょっとイライラしてたり落ち込んだりしてるのが、何でなのかがわかる。家族が。
それによって家族の対応も違ってくるし、お父さんのストレスもちょっと緩和されるみたいなことができたと思う。だけどお父さんの中で、「家族に言うもんじゃない」とか「言いたくない」とか、そういう気持ちがあったんだろうなって。

:仕事で悩んでる話なんて、うちで喋ってないな

わたし:きっと、「言ってもわかってもらえないだろう」とか、「言ってもわかんないだろう」って思ってたんでしょ?でも言えばある程度は伝わるんだよね、本当は。
もちろん仕事の詳しい内容まではわかんないんだけど。でも、「どうせ言っても」みたいなところが、お母さんとのわだかまりを生んでる。

お母さんは「何なんだろう」って察しなきゃいけなかったけど、あまりにも状況がわからなすぎるから、お父さんがイライラしてるときにどうすることもできなかった。

逆もそう。お母さんがイライラしてるのだって、日中別々に過ごしているんだから、言わなければ何があったのかわからない。そのくせ察してほしいって思う。言いもしないのに。

:痛いとこつくね。その通りです。

わたし:そうそう。それってすごく難しい。察してくれる人もいるかもしんないけど、めちゃめちゃ高度なことを要求してるっていう話。言わないとって感じ。

:だから今は、相手の目線で考えるようにしましょうっていうのが、お父さんの結論なんだけど。

:相手目線も、相手の気持ちがわからないとわからないから、やっぱり話しすることだよね。

:だからこういうところで話すればね、わかってくるから。


――父の理想は、母とのツーカーの関係なのだろう。それが無理だったから、気持ちを出し合おう、話し合おうっていう話なのだが、「相手の目線で考える」ことからやろうとする。

それができればいいだろうが、父の考える「相手の目線」は結局自分の目線であって、相手の立場にはたてない。大抵、勝手な思い込みで誤解し、そこにわだかまりが生まれるのである。

だから気持ちを聞きたいし聞いてほしい。それが父には、なかなか伝わらない。


- 今日はここまで -


わだかまりは大きくなると、扱いが厄介になる。小さなうちに解消しておく方がいいのだが、小さいわだかまりは取るに足らないものとして扱いがちだ。

そうやって放っておくうちに、取り返しのつかない事態になる。わが家のように。

家族崩壊の危機を迎えたくなければ、小さいわだかまりを軽視せず話し合うしかない

<次回に続く>


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