ふたご座うまれのひとりっ子 #3【連載小説】
「占いは信じない」という男に限って、朝の占いの結果に腹立てている気がする。
そして、子供ができると名前の画数を調べまくる。
姓名判断と占いは何が違うのか?
通勤電車に最近設置された、小さなテレビのような画面。
そこに映し出された「今日の最下位は・・・ふたご座のあなた!」の文字を見て湧いた怒りが、過去の陳腐な男たちへの怒りを反芻させた。
そんな怒りは、あと1時間もしたら再び社会の歯車となって働く日々が始まることへの恐怖心を隠してくれるのだから、最下位にしては朝からラッキーなことが起こっている。
今日はすべての星座がそれなりにラッキーな運勢の日なのだろう。
私はそれなりにメンタルを立て直すのが早い。
渋谷で乗り換えた内回りの山手線を五反田で降りる頃には、前向きな気持ちに自己完結していたのだから。
東口の改札を出るとスーツの肩が濡れないように少し背をすぼめ、クレージュの花柄の傘に収まり歩き出した。
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