耳で聴く「Le Petit Prince -あのときの王子くん-」 王子くんの役作りについて
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耳で聴く「Le Petit Prince -あのときの王子くん-」 王子くんの役作りについて

STORYTELLER BOOK by 心尽

こんにちは。
ナレーターの佐々木健です。

声の仕事を始めた頃、アニメ「はじめの一歩」に出演しました。同級生や練習生の役で何度か。そこには事務所の先輩の石塚運昇さんや、内海賢二さん、喜安浩平さん、小山力也さん、高木渉さん、藤原啓治さん、関智一さんと、錚々たるメンバーがそんなに広くないスタジオにひしめき合っていました。そんな現場の熱い空気を、同じ時間を経験させてもらった事、今考えるととても幸せです。もっといっぱい盗めればー。

(前置きがどんどん長くなってきていますね。笑)


さて、星の王子さまの翻訳で知られるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「Le Petit Prince(ル・プチ・パンス)」。

その新訳「あのときの王子くん」のオーディオブックが、2021年12月8日に発売されました(iBooksとAudibleは12月17日発売)。

地語りとぼく(パイロット)の台詞を担当しています。心を込めた作品です。どうやったら多くの人に、大人にも子どもにも聞いてもらえるかなぁと、考えながらこの記事を書いています。


「王子くんの役作りについて」


朗読をするときの王子くんのキャラクターの作り方について、僕の考えていることを書きたいと思います。


王子くんがどんな性格かと言うと、本文の中からわかることがいくつかあります。

例えば
・質問には答えない。
・カラカラとよく笑う。
・いちど聞いたら答えてくれるまでやめない。

ちょっとしつこくて、イライラしてしまうようなキャラクター。

王子くんは子供です。

大事なのはまさにそれ。子供だと言うこと。

皆さんも自分の小さかった頃を思い出してください。もしくは小さなお子さんがいたり、親戚や近所に小さい子がいたら、よく観察してみてください。彼らは欲求に正直です。何かをしてほしいと思ったら、遠慮せずにこちらの空気など読まずに、〇〇してと言ってきます。それが子供です。


「ぼくにひつじの絵をかいて」


このセリフを誰かに伝えようとするところを考えてみて下さい。


大人である僕らは、相手の今の状況だったり、こういう風に言った方がやってくれるかなとか、そういったことを考えて相手にお願いをするかもしれません。社会に出てから、そうやって教えられた事もありました。

「今ちょっといいかな。羊の絵を描いてくれる?」

そんな頼み方をするかなぁ。きっと「なんで?」と返事が返ってくるでしょう。
王子くんは、それには答えずに、もう一度繰り返します。

「ぼくにひつじの絵をかいて」

それが王子くんです。


それって、大人になってしまった僕たちからするとすごく勇気がいるというか、なんだかドキドキしてしまうような言い方かもしれません。


主役キャラは、素直に要求を伝えられる人がキャスティングされるんじゃないかなと、僕は思います。


王子くんは、相手がどう思うかとか考えていないと思います。ただただひつじをかいて欲しくてその心100%で相手に要求をぶつける。それが王子くんのキャラクターです。


王子くんのキャラ作りは、こうやったらいいよと言うのをいくつか列挙することはできますが、ここでは、こうやったら王子くんにはならないよねと言うことを書いてみたいと思います。


なんで?と聞かれたら素直に答えてしまうようなキャラクターはブブー

僕はすぐ答えてしまいそう。笑


こう言ったらひつじを描いてくれるかなぁとか策略をねりながら喋るような王子くんはブブー

例えば、中身は大人の名探偵コナンくんとかは面白いけどちょっと違う。


今考えていることを顔や態度でわかりやすく表現しちゃう王子くんはブブー

僕は今切ないんですって王子くんが目をうるうるさせてアピールしてきたらちょっと違う。


かわいい声なんです!って「声」でかわいいを出すのもきっとブブー。媚は売らないのが王子くん。


元気100%の王子くんは、僕は違うと思う。これは後ほど理由を書きます。

あくまで僕の考えです。違う意見もあるでしょう。

王子くんは、大人にとっての優等生ではないと思います。


大人の言う事をハイと聞く子ではないんです。絵を描いてーとせがんで来る無邪気でシツコイ子どもなんです。


サン=テグジュペリは、少年だった頃の友人にこの物語を捧げています。

皆さんの中の子どもに向けて書いているのかもしれません。


パイロットに出会う前、王子くんはキツネから絆(きずな)の作り方を教わります。

それは、一緒に時を過ごすこと。

10万匹のキツネだったのが、たった一匹のあのキツネになる方法は、一緒に時を過ごす事なんです。そして、その人のために時間を使うこと。

だから、パイロットに友達になってとは言いません。ここにいて良い?とも聞きません。ただそばにいて、気ままに自分の欲求に従って生きて絆を作っていくんです。


どうでしょう?
王子くんのキャラクター、何かつかめそうでしょうか?


「頭の中であのキャラをキャスティングしてみよう」


僕がよく頭の中で妄想する方法があります。アニメなどのキャラクターに王子くんのセリフを喋らせてみるんです。


例えば、エヴァンゲリオンの綾波レイは、王子くんが似合います。


「ねぇ…わたしにヒツジの絵をかいて…」

「ちがう…ボアの中のゾウなんて欲しくない…。」


どうでしょう?脳内再生出来ました?

もちろん王子くんにキャスティングするには無理がありますが、欲求に従って喋るってそう言う事だと思います。


次に、クレヨンしんちゃんのしんのすけで脳内再生してみてください。


「オラにひつじの絵をかいておくれ」

「ヒ!ツ!ジ!をかいておくれヨー」


こちらの質問には答えず、自分の欲求を純粋に伝えてくる、ちょっとムカつく子供が妄想できましたか?


ドラえもんに甘えるのび太くんではどうでしょう?


「ドラえもんー!ひつじの絵をかいて!」


ガンダムのシャアがアムロに言ったらどうでしょう?


「ワタシにひつじを描いてもらえるか?…もう一度言う、ワタシにひつじをかいてもらえるか?」


「なんで」とアムロに言わさない雰囲気、妄想できますか?


こんな妄想の中から、欲求に従って喋るには?相手の質問に答えないキャラの心情って?など考えて役を作ってみたら面白いと思います。

ぜひあなたの考える王子くんを演じてみてください。



「王子くん最大の謎」


さて、

僕の中で、王子くん最大の謎があります。


それは地理の博士のところで、バラは儚いと教えられて、自分の星にバラを残してきた事を後悔した場面。普通なら、星に戻ると思うんですが、王子くんは博士に聞きます。「おすすめの星はありますか?」と。


例えば彼女と喧嘩別れして家を飛び出した男が、彼女を残してきた事を後悔した上で、「どこかおすすめの土地はある?」と聞いて、旅を続けて帰らないんです。


そこの心情は本には、はっきりと書いてありません。キツネへのセリフで「友だちを見つけて、たくさんのことを知らなきゃなんない。」とあるだけです。なぜ、たくさんのことを知る必要があるのか?その理由があるはずです。

その理由を考えて腑に落ちたら、王子くんのキャラはいっそう良くなると思います。


王子くんは地球に来て、1年間旅をします。


バラ園で、バラはたくさんある事を知りショックを受けます。そしてキツネに出会い、絆(きずな)について教えてもらいます。そのあと、パイロットに出会うんです。砂漠の真ん中で、エンジンが壊れて寝ているパイロットに。


王子くんはもう旅の途中ではなく旅の終わりです。「ここで何してるの?」とは聞きません。ただただバラのところに戻るために、ひつじが必要だったんです。


「ぼくにひつじの絵をかいて」


テレビ番組の「はじめてのおつかい」で、子どもが、ミッションを終えてパパママの家に戻るためにお店の人に言うところを想像してみてください。もしかしたら、心の中では寂しくて泣き出しそうなのを我慢しているかもしれない。


「ぼくに〇〇をください」


元気100%の王子くんではブブーだと思うのは、こう言う使命感があるからです。もし元気100%でやるならば、実はそうじゃないかもと思わせないといけないと思うから。


今回、僕が参加したオーディオブック「Le Petit Prince あのときの王子くん

」では、小学生の秋山 晴(あきやませい)君が、見事に王子くんを演じてくれました。

オーディションで選ばれた彼の声を聞かせてもらって、僕はとても喜びました。僕の思い描いていた王子くんだったから。


彼は、テクニックで演じていない。それは彼が演技を学んだことがないからかもしれませんが、とても素直にその場に「生きて」くれているんですね。でもすごく心に響いてくるので、実はすごく演技が上手いのかもしれない。


スタジオ収録の前に、読み合わせをしましたが、晴くんとは、その時にはじめてお会いしました。お母さんと一緒に、自転車で登場した彼は、お母さんに、ほら名前言ってと言われても照れて笑っている、そんな子でした。欲求に正直で、笑顔のステキな男の子。将来、モテるだろうなと言うナイスガイです。スポーツも得意みたいで、読み合わせの会場を走り回ってました。

僕はただ、素直にその場にいて、ちょっと照れくさい感じのその時間を大切に思っていました。


お父さんお母さんも協力的で、一緒に台本で練習をしてくれていたそうです。お母さんのこの役は面白いんだよとか、照れながら暴露してくれたり、特に「キノコ!」のセリフはお気に入りで、何度も言っては親子で笑っていたそうです。お父さんもお母さんも晴くんも素敵。

「こういうの(演技をすること)好き?無理しなくて良いからね?」と伝えましたが、本人も「やりたい」と言って楽しんで収録に参加してくれたのも最高でした。


彼の王子くんは、僕にとっては100点満点の王子くんなんです。ぜひみなさんに聴いてほしい。


「あのときの王子くん」予告編はこちら


購入方法について


お好きな方法で購入ください。プレビューで王子くんとの出会いのシーンが5分くらい聞けます。本編は2時間10分。お散歩や通勤通学のお供として聴いてください。本作品には、朗読用台本が付いてきますので、親子で読み合って楽しめます。

  • パンローリング「でじじ」
    出版社であるパンローリングのオーディオブック配信サイト「でじじ」
    CD版とダウンロード版があります。

  • iTunes & iBooks Store

  • Audible (Amazon)
    CD版、Audible版があります。Audibleは月額会員制となっており、1月下旬からは聴き放題サービスに移行するそうです。1ヶ月以内にやめることも可能です。



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ナレーター佐々木健(心尽 kokorojin)によるショートストーリー番組を配信して行きます。 2-3分で聞ける優しい時間をお届けしたい。 ホームページ https://kokorojin.com Spotify, Apple Podcast, YouTubeでも配信中