言葉の技術とマインドフルネス
令和3年12月7日、NHKの番組『プロフェッショナル』に俳人・夏井いつき先生が出演されました。
先生と同じ愛媛県松山市に住む私にとって、夏井先生は、お会いしたことはないものの、とても身近に感じている有名人です。
以前に比べ、地上波を見なくなったこともあり、新聞の番組欄はまず見ないため、放送を見逃す可能性が高かったのですが、たまたま地方紙に掲載された番組紹介記事が目に入りました。その記事には、夏井先生が出演オファーを受けた理由が書かれていました。
≪俳句を掘り下げることを目的とした取材だったから≫
「個人」よりも「俳句」にフォーカスされているから取材を受けた、というご判断に、私は深く感じるものがありました。また、以前から、夏井先生のエネルギッシュな活動の原点を知りたいとも思っており、録画をして番組を観ることにしました。
機会があれば、ぜひ番組全編を観ていただきたいところですが、今回は、番組を通して私が感じた「夏井先生の活動と、マインドフルネス道の共通点」をお伝えしたいと思います。
ポイントは「言葉の技術の重要性」です。
夏井先生の
のご発言から、番組は活動の原点に触れていきます。
それは、中学の国語教師をされていた20代のとき。暴言と暴力が絶えない問題児を受け持ち、その生徒と格闘を続ける中で、あることに気付いたといわれます。
番組のこの場面で、私は胸の辺りが、強く“ブワーッ”と湧き立つのを感じました。夏井先生は俳句を通して言葉の技術・心の育成をされていて、それに救われている人が全国にたくさんいる。根底にある想いがマインドフルネス道と通ずる!と感じたからです。
私は子どもの頃、自分の考え・想い・感情を言葉で伝えることが苦手でした。姉には言葉で勝てず、学校では自分の意見が言えない。モヤモヤしながら学校から帰宅して、母から「何かあった?」と聞かれても、どう表現したらいいかわからないのであまり話さず、頑張って言葉にしても、何だか伝えたいことと違う、言葉が口から出た瞬間から一人歩きをしているような感覚がして、「本当はそれが言いたかったわけではないのに」と落ち込むことがよくありました。
幸い、3歳から習っていたピアノ、高校から始めたダンスが、感情表現・発散の方法として私の心を助けてくれました。また、読書が好きで本の世界に没入したり、こっそり文章や詩を書いて想いを言語化する、どうにもならない感情は神仏に手を合わせて鎮める、といった工夫と、周囲の方が温かく見守ってくれたおかげで、大きく道を外さず進んでこられたんだと思います。
しかし、それだけでは「心」に対する疑問が根本的に解決することはなく、唯識学を基礎理論とするマインドフルネス道の実践法に出会って、ようやく本当の意味で心が救われたのです。
夏井先生が言われた、
「自分が考えたことをちゃんと自分の伝えたい意味で、伝えたい熱量でちゃんと相手に伝えることができる言葉の技術」を身に付けるためには、まず、自分の感覚・思考・感情を正しく知覚する「覚力」が必要であり、さらに、知覚したもの・ことを的確な表現で言語化するための「概念力」が必要だと考えます。
人は、自分の中にある概念でしか、言葉で言い表せません。それぞれが持つ概念を通して、他者とコミュニケーションを図るしかないのです。スムーズに自分の思いを伝えたり、相手を理解するためには、いかに自分の中の概念を増やすかが重要になってくるのです。また、ストレス耐性のある方は、感情を表す語彙力が高いという研究結果も出ています。
マインドフルネス道実践では、身体調整をはじめとする各種実践を通して、いまここ、に立ち返り、何をどう感じているか、一瞬一瞬の自分自身に注意を向けていきます。一瞬一瞬の身体の感覚・思考・感情などに気付くトレーニングです。そして同時に、こころの構造や認知のメカニズム等の理論学習も行います。
マインドフルネス道8週間プログラムに取り組まれた方は、
「これを必要としている人は絶対たくさんいる」
「もっと多くの人に知ってもらいたい」
と言われます。
「生きることが楽になった」
とも言われます。
マインドフルネス道は、まさに自分自身を助ける方法であり、より良く生きるための方法です。
同じ愛媛で活躍される夏井先生に勇気をいただき、一人でも多くの方に生き方としてのマインドフルネス道を伝えられるよう、力を尽くしていきたい、と思っています。
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