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温暖化でグリーンランドの氷床が急速に減少し、地球の海面が7.4m上昇する

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年10月2日付]より参照。
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学術誌「ネイチャー」に発表された論文の要約

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グリーンランドの氷床が今世紀に6兆1000億トン失われると予測されています。地球上にある水の量は、すべてをあわせると14億km3にもなりますが、その97%あまりが海水で、およそ13億5,000万km3になります。

2020年9月30日付で学術誌「ネイチャー」に発表された論文は、グリーンランドの氷床が急速に減る時期に入っていることを、最新の証拠に基づいて明らかにしました。

ということで、グリーンランドの氷床には、全て解ければ地球の海面を約7.4メートル上昇させるだけの水があります。

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グリーンランド史

初めて居住した住民は、8世紀頃カナダ海域から移住してきたエスキモーである。 900年頃アイスランド人グンビョルンに発見され、986年からヨーロッパ人のエーリックにより植民が始った。

東植民地 (現ユリアネホープ) 、西植民地 (ゴットホープ現ヌーク) に計 3000人と推定される入植者がいたが、15世紀頃に消滅。

ノルウェー領、次いでノルウェーのデンマーク属領化とともにデンマーク領。キール条約 (1814) によってノルウェーがグリーンランドと切り離され、スウェーデン領になったことから領有問題が生じ、ノルウェー独立 (1905) 後、ハーグ国際法廷で、デンマーク領が確定して今日にいたる。

第2次世界大戦中デンマークがナチス・ドイツに占領されてから1年後の 1941年、グリーンランドは暫定的にアメリカの保護領となったが、53年植民地の地位を脱してデンマーク王国の一構成部分となり、現在にいたっている。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

陸氷に関する用語

日本雪氷学会(気象庁「海洋観測指針」(1999)より)

氷床:(ice sheet)広大な陸地が暑い雪氷に覆われたもの。海面上に張り出して浮かんでいる棚氷を含めることもある。現在の地球上では南極大陸とグリーンランドにみられる。

氷河氷:(glacier ice) 氷河の中の氷,又は氷河が起源の氷。陸上にあるか海に浮いているかは問わない。

棚氷:(ice shelf)海面上2~50m又はそれ以上のかなりの厚さで,海岸に固着して浮いている氷床。普通,水平方向に大きく広がり,表面が平坦か緩やかな起伏をしている。年間を通しての積雪と,時には陸の氷河が海へ延びることによって生成する。氷の一部は底着していることもある。海側の縁は浮氷壁(ice flont)と呼ばれる。

氷山:(iceberg) 氷河又は棚氷から割れて海に流れ出たもので,海面上の高さが5m以上の氷塊。浮いていても座礁していてもよい。氷山はその形状から卓状型,ドーム型,傾斜型,せん塔型,風化型又は氷河氷山などに分けられる。

氷河氷山:(glacier berg) 氷河から割れてできた氷山で、不規則な形をしている。

卓状氷山:(tabular berg) 頂上が平らな氷山。多くは棚氷から割れてでき水平なしまが見られる(氷島と比較)。

氷山舌:(iceberg tongue) 海岸から張り出している氷山群の大集合域で,座礁したり定着氷で連結されていたりする。

氷島:(ice island) 北極海の棚氷が割れた海面上約5mの大きな浮氷で,厚さ30~50m,面積は数km2~500km2又はそれ以上,通常表面は規則的起伏があり、航空機からはろっ骨状に見える。

氷山片:(bergy bit) 浮いている氷河氷の大氷片で,海面上の高さは1m~5mで、面積は約100~300m2の広さである。

氷岩:(growler) 氷山片や氷盤岩より小さな氷塊で,しばしば透明であるか,縁がかったり,ほとんど黒っぽく見えたりする。海面上の高さは1m未満で,広さは約20m2である。

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国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」

ここで論文を裏付ける元になった条約による報告書、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」についてご説明します。

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が共同で設立した政府間機構。

人間活動が活発化し、開発が進むにつれて二酸化炭素 CO2などの温室効果ガスの排出量が増え、地球温暖化が進んだ。その結果、気候が変動し、大洪水や干魃、暖冬、生態系の崩壊などさまざまな環境的影響、社会経済的影響が生じた。

危機感をいだいた世界各国は、1988年 IPCCを設立、11月にスイスのジュネーブで第1回会議を開催した。

IPCCには三つの作業部会および温室効果ガス目録に関するタスクフォースが設けられ、科学的知見、影響予測などを検討し、国際的な地球温暖化問題の対応策を科学的に裏づける。

会議には政府関係者と科学者が参加し、科学者は新たな研究に携わるのでなく、発表された研究を調査し、それに対して助言や評価をくだす。

そして 5~6年ごとに、評価報告書にまとめて公表する。これらの活動が評価され、2007年アメリカ合衆国元副大統領のアル・ゴアとともにノーベル平和賞を受賞した。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

これまで第1次報告書が1992年の気候変動枠組み条約(UNFCCC)、第2次報告書が1997年の京都議定書の採択にそれぞれつながるなど、地球環境にかかわる国際的合意に大きな影響を与えている。

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グリーンランド氷床 (Greenland ice sheet)

グリーンランド氷床 (Greenland ice sheet) は、グリーンランドの面積の 82%を占めている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は 2007 年の第 4 次評価報告書でこれが溶けることで全球的に 7.2m 海面が上昇すると予測している。

北極海の氷が海上に浮いているのに対してグリーンランドの氷は土地の上に存在しているのでその溶解は海面レベルに影響する為である。

日本の国立極地研究所を中心とした国際研究グループは、過去 4000 年間の温度変動を復元し、最近 10 年間の平均気温は、過去 4000 年間に出現した温暖期と同等であり、過去1000 年のなかでは、2 回しか起こらなかった特に気温の高い時期に匹敵することを突き止めた。

気候変動予測モデルによれば、人類が排出し続けている温室効果ガスによって温暖化がさらに進行することになっているので、今世紀の終わりのグリーンランドの気温は過去 4000 年の気温変動範囲をも超えると懸念されている。

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氷が解けても水と同じ量になるだけでは?という疑問

まず、厳密に言えば摂氏4度のとき、水1cm3あたりの重さは1グラムになりますが、ここではその温度差を誤差の範囲として、一般に水1000cm3、つまり1リットルはちょうど1kgとして考えます。この1リットルの水が凍った氷を水槽に入れた例で見てみましょう。

 水は氷になると体積が大きくなり約9%増えます。この氷を水槽に入れれば、同じ水同士なので氷は沈むことなく、氷の体積が増えた分だけ水面上に顔をだしていることが想像できます。

つまり氷山をイメージして頂ければ、と思います。

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科学者の予測を上まったもの

過去40年間、北極の温暖化の影響を受け、グリーンランドの氷床は加速度的なペースで減ってきた。だが、この傾向を長期的な視点でとらえるためには、数千年分の氷床の成長と後退の記録が必要となる。

かねて科学者たちは、完新世におけるグリーンランドの氷床量の変化を知ろうと試みてきた。その際、過去の気温の目安として一般的に用いられるのは、氷床コア内部の「酸素18」という同位体(普通の酸素より重い酸素原子)だ。

だが、こうした分析の大半では、1つの氷床コア(氷床を掘削して採取した柱状の試料)だけからグリーンランド全体の気候状況を推定していたため、不確実さがつきまとっていた。また今までの研究では、グリーンランドの過去の再現モデルと、今世紀に融解する氷床の量の予測をつなぎ合わせてこなかった。

「グリーンランドの氷床の過去をモデル化した研究も、未来をモデル化した研究もありました」とブライナー氏は言う。「しかし、過去から未来までの全体像を、一貫して同じモデル、同じ手法を用いて推定した研究はありませんでした」

89年ぶり気温54.4度を記録

2020年8月16日、米国西部を熱波が襲い、カリフォルニア州デスバレー(死の谷)国立公園の気温は摂氏54.4度に達しました。これは1931年以来の最高記録で、世界の観測史上で3番目に高いのです。

現在のアメリカでは、南西部アリゾナ州から北西部ワシントン州に至る西海岸を、熱波が襲っています。17日と18日に暑さのピークを迎え、今週後半には気温が下がり始めるとみられている。しかし、この猛暑は少なくともあと10日は続く予想だという。

カリフォルニア州で気温が上昇する中、ラッセン郡では15日に大規模な「ファイアネード」(炎の竜巻)が観測された。

当局は気温が32度を超え、高温多湿の状態が2~3日続く状況を猛暑と定義しているが、米疾病対策センター(CDC)によると、国内のほかの異常気象よりも熱波の死者が多い。

人間は熱波にさらされると、熱けいれんや脱水、さらには死に至る恐れのある熱中症を起こす危険があります。世界保健機関(WHO)は、猛暑によって呼吸器疾患や心臓病、腎臓病などの持病が悪化する恐れもあると指摘しているのです。

インフラに影響を及ぼす可能性もある。電力網に負担をかけて停電を引き起こすだけでなく、飛行機の運航が停止したり、道路が溶けたり、車内が危険なレベルまで高温になることがあります。

熱波によって野菜がしおれて枯れてしまったり、植物の病気がまん延するなど、農業にも深刻な影響を及ぼす恐れもあります。

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グリーンランド対策の現実

指摘されているのは、氷河の縮小によってその大部分が深い海の中に潜ってしまうと、水と接触している部分が多くなるため、暖かい海水によってさらに融解が進んでしまうという問題だ。

一度「ティッピングポイント」を超えてしまうと、これから人類がどれだけ努力したとしても、元の安定した環境を取り戻すことは難しい。ローラ・アーレンシールドは次のように書いている。

「たとえ人間が奇跡的に気候変動を止めることができたとしても、氷河から海に氷を排出することで失われる氷の量は、積雪から得られる氷の量を上回る可能性が高く、氷床はしばらく縮小し続けることになります」

もし人類が今すぐに地球温暖化を止めることができても、グリーンランドの氷床の縮小はしばらく止まらず、元の状態に戻らないという主張だ。

ティッピング・ポイント

これに対しては慎重論もある。

デンマーク気象研究所のルース・モットラムは、AFP通信に「温室効果ガス濃度がどの程度上昇するかは分からない」として、今回発表された結果は「気温(と温室効果ガスの排出量)を現在のレベルで安定させたとしても、氷床は溶け続けるだろうという話だが、それは氷床の大きさが気候とのバランスを取り戻すまでのあいだだけである」と指摘している。

急速に溶け出しているのは海に接している氷床であるため、氷と水との接触がなくなれば、大量の氷の流出はとまる可能性がある。

現段階ではすべての研究者が「ティッピングポイント」( いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか)に達したと同意しているわけではない。

しかし、グリーンランドの氷床融解が地球規模の重大な問題を抱えていることに関しては研究者のあいだで意見が一致している。

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温暖化の影響

まず、海面上昇が起こる仕組みについて整理しましょう。海面の水位は、過去130年間にわたって上昇し続けています。

地球温暖化に伴う海面上昇は、主に陸上の氷河・氷床が融解して海に流れ込んだり、水温が高くなって海水の体積が膨張することによって起こります。

1993~2003年の海面上昇を調べたところ、上昇幅のほぼ全てをこの理由で説明できることが確認されています。

ただし、北極海に浮かんでいる海氷は、いくら融けても海水面の上昇には結びつきません。コップの水に浮かんだ氷が融けても、コップの水位が変わらないのと同じです。

問題となるのは大陸や島全体を覆う氷床、山岳氷河など、陸上の氷河・氷床が融けた場合です。

最新の予測では、2100年までの海面上昇は18~59cmと見積もられています。最大の理由は海水体積の膨張です。

海抜ゼロメートル地帯がある東京湾、伊勢湾、大阪湾の海岸堤防は、台風や低気圧による2~3m以上の高潮を想定して整備されているため、上記の範囲内ならば水没する可能性は低いと考えられます。

しかし、海面上昇の理由として、2番目に大きいと予測されているグリーンランド氷床の融解については、温暖化がこのまま進行した場合、早ければ2100年までに融解量が降雪量を上回り、氷床が縮小し始めると指摘されています。

その後、氷床は数百年以上かけてゆっくり縮小していき、グリーンランド氷床が完全に消滅すると、海面水位は7m上昇すると見込まれています。

したがって、温室効果ガスの排出を大幅に削減しない限り、数百年後、現在の海岸堤防のままでは、海抜ゼロメートル地帯が水没の危険にさらされることも十分に考えられます。

しかも、海面上昇は気候を安定化させた後もすぐには止まりません。海面水位は過去の温暖化の影響を受けるためです。

それも考慮に入れた上で、氷床消滅のリスクがどの程度あるのか、また消滅を防ぐにはどのような対策が必要か、現在も精力的な研究が進められています。(独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター)

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世界で一番早く、そして深刻な影響が出ている北極

北極協議会(ACIA) と国際北極科学委員会は、北極における地球温暖化の影響について科学的な分析を行った結果をまとめた報告書を発表しました。

北極協議会には、アメリカ、カナダ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランドが加盟しており、今回のイベントはアイスランド政府が主催しました。

まず、北極協議会のロバート・コーレル氏は報告書の全体像についてふれ、「我々の海面上昇の予測は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測している高さを超えたものになった。」と話しました。

さらに、アビスコ科学調査ステーションのテリ・キャラハン氏が、「永久凍土の融解は、生活基盤に大きな影響を及ぼすだけではなく、生態系に影響を与 え、さらには永久凍土の下に眠っているメタン(二酸化炭素の約30倍の温室効果がある)の排出につながってしまう。」と永久凍土の融解による影響について話しました。

最後にラルス・オット・レイエルセン氏が、先住民への影響について話しました。レイエルセン氏は、「今は、伝統的な方法で天気を予報することが難しくな り、氷の上を犬ソリで移動し狩猟するという文化も大きな影響を受けている。

気候変動は、人々が適応することができないほど早いスピードで進んでいる。」と話しました。

これらの報告に対し、会場からはいろいろな意見や質問がでました。なかでも影響を受ける国の人たちからは、叫びにも近い早急な支援を求める意見が出されました。

バングラディシュから来た人は、「海面上昇によって自分達の国がなくなれば、バングラディシュの人たちはどこに行けばいいのか。受け入れてくれる土地を用意してくれるのか。」と発言しました。

また、アラスカの先住民の人たちからは、「自分達が毎日経験していることを科学的と裏付けてくれるとてもすばらしい報告だ。

しかし、自分達の生活がどんどん悪い方向に行くことを示していて、とても悲しい。我々先住民は、非附属書国でもなく、国連をはじめ国際社会から支援を直接受けることができない。

すでに深刻な影響をうけながらも支援の対象となっていない我々をどのように支援できるのか真剣に考えて欲しい。」と会場にいる全ての人たちに強く訴えました。

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気温上昇

北極の平均気温は、世界のほかの地域に比べて2倍の速さで毎年上昇しています。多くの地域では、夏より冬の気温上昇が大きくなっています。

アラスカやカナダ西部の冬の平均気温は、この50年間で3〜4℃上昇しました。このまま温室効果ガスを減らさなければ、北極地域の平均気温は、100年後には大陸部で3〜5℃、海上では最大7℃上昇すると予測しています。

また、冬の平均気温は、100年後には大陸部で4〜7℃、海上では7〜10℃上昇するとしています。

氷の融解

平均気温の上昇に伴い、北極の氷がとけています。この30年間で、100万平方キロメートルに相当する面積の海氷が、とけてなくなりました。

これは、ノ ルウェー、スウェーデン、デンマーク(もしくは、テキサスやアリゾナ)をあわせたのと同じくらいの大きさがあります。特に夏の終わりはもっとも少なく、9 月だけでみると約20%減っています。

さらに、2100年には、9月だけでみた場合、2050年には50%以上減ると予測しています。 

また、北極の陸氷の大部分が存在するグリーンランドでは、氷床のとけている地域が1979年から2002年の間、平均で16%増えました。これは、年々違いがあるもののほぼスウェーデンと同じくらいの大きさです。

2002年は過去最大規模で氷床がとけ、標高2000メートルにある氷床までとけました。

また、氷の融解は地球温暖化の悪循環を引き起こします。太陽からの光は、土、海、氷などに反射して宇宙に出ていきます。

しかし、土などが25%、海が 10%太陽からの光を反射するのに比べ、氷は80〜90%反射し、宇宙に光を効果的に出す重要な役割を果たしています。

地球温暖化によって、その氷が溶けると、宇宙に出る光の量が減り、土や海が太陽からの吸収する量が増え、地球温暖化を加速させてしまいます。

さらに、海の氷がとけると、北極の周りを通る新しい海洋船舶による物流ルートが確保できるようになります。スエズ運河を通るルートより45%も短くなります。

しかし、事故による油漏れや沿岸の海洋汚染などいろいろな問題を引き起こす可能性もあります。 

また、まだ手をつけていない石油・ガスなどの天然資源の25%が北極にあります。皮肉なことに、氷の融解によってそれらの開発が可能になります。

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北極以外に及ぼす影響 (海面上昇)

海面上昇は、海水温の上昇による海水の膨張と、陸地にある氷がとけ海の水の量増えることによって起こります。

100年後には、地球全体で平均10〜90 センチメートル海面が上昇し、毎年とけるスピードが速くなると予測しています。

また、このままグリーンランドが気温上昇したら、グリーンランドの氷床が全てとけ、海面が7メートル上昇すると予測しています。

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生態系への影響

ホッキョクグマは、氷に住むアザラシをえさにしています。アザラシが住む海まで続いていた氷の廊下がとけ、えさがとれなくなっています。

ハドソン湾のメスのホッキョクグマは、平均体重が220キロなのですが、1980年から1992年の間に体重が毎年4.7キロ減りました。ホッキョクグマは、189キロより体重が少なくなると、繁殖が難しくなります。

この地域の生態系の頂点に立つホッキョクグマの数が減れば、北極の生態系に大きな影響がでると予測しています。

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先住民への影響

北極に住む人の3分の2は、イヌイットと呼ばれる先住民です。彼らは、氷の上を伝統の方法で移動し、ホッキョクグマ、セイウチ、アザラシ、カリブーなど を獲って生活しています。

しかし、氷が薄くなったせいで、これまでのように氷の上を安全に移動することもできなっています。

また、北極には、オゾン層破壊によってガンを引き起こす有害な紫外線(UV-B)が降り注いでいます。

現在の北極に住む人たちは、これまでの世代が浴び てきた量より30%も多く有害な紫外線(UV-B)を浴びており、彼らの健康にも大きな影響が出るとしています。(全国地球温暖化防止活動推進センター)

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IPCC第6次評価報告書及び統合報告書:環境省

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2月24日~28日にフランス・パリで開催した第52回総会において、IPCC第6次統合報告書のアウトライン(章立て等)が合意された。

環境省は3月2日、今回合意した第6次統合報告書のアウトライン(2月28日合意版に基づく仮訳)をとりまとめ、同総会の結果を報告した。統合報告書は、第57回総会(2022年5月予定)にて承認・受諾される予定。

環境省の仮訳によると、第6次統合報告書のタイトルは、「AR6統合報告書:気候変動2022」。報告書は、前付と政策決定者向け要約、
1.「序」
2.「現状と動向」
3.「長期的な気候及び発展の将来」
4.「変化する気候下における短期的な対応」
の4セクションで構成される。

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IPCCの報告書とは?

IPCCは、これまで5回にわたり地球温暖化に関する評価報告書を作成・公表し、国際交渉や各国の政策決定の基礎となる科学的知見を提供してきた。現在第6次評価報告書(AR6)公表に向けた作業が進行している。

IPCC第41回総会(2015年2月)において、AR6とその統合報告書は、5~7年の間に作成すること、18カ月以内にすべての評価報告書(第1、第2、第3作業部会報告書)を公表することなどが決定されたている。

第1、第2、第3作業部会評価報告書は、それぞれのテーマ
第1部作業部会:「自然科学的根拠」
第2部作業部会:「影響・適応・脆弱性」
第3部作業部会:「気候変動の緩和策」
を対象としたものだ。統合報告書はこれら3つの評価報告書の知見をまとめたものとなる。

3つの評価報告書のアウトラインは、第46回総会(2017年9月)で合意されており、それぞれ第54回総会(2021年4月予定)、第56回総会(2021年10月予定)、第55回総会(2021年9月予定)にて承認・受諾される予定。

次回、第53回総会は10月6日~10月10日に、ケニア・ナイロビにおいて開催される予定。議題は未定。

各セクションの概要

IPCC第6次統合報告書のアウトラインにおけるセクション2~4の概要は以下の通り。

セクション2:現状と動向

社会経済的発展と気候変動、地域をまたぐ気候変動対策(アクション)。
年間量と累積量の両側面からみた、現在・過去における、排出源、除去及び吸収源からのCO2排出量、並びに短寿命気候強制因子を含むCO2以外の強制因子(の排出量)。

排出量を増加・減少させる社会経済的・技術的な駆動要因。
気候システムにおける地域/世界全体における変化とその原因。
過去の排出量と地球物理的、社会経済的システム的における惰性に起因する回避できない気候変動。

人間システムと自然システムが現在受けている影響:脆弱性、残存リスクを含む部門及び地域の影響及びリスク。
適応と緩和の取り組みの現状、資金(ファイナンス)、能力開発と技術、並びに持続可能な開発への示唆。

セクション3:長期的な気候及び発展の将来

シナリオと予測、地域と世界全体の気候変動、変化の速度、強制力の性質に対する依存性。

世界全体と地域における影響、コストと便益、自然システムと人間システムに対するリスク、昇温の水準への依存性、社会経済的発展への示唆。

適応:選択肢、機会、限界と残存リスク、社会経済的発展への示唆、昇温の水準。

緩和の経路、人為起源の温室効果ガスの排出量、除去量と吸収量の間の世界全体のバランス、総カーボンバジェットと残余カーボンバジェットとそれらの過去の累積排出量との関連、衡平性、社会経済的発展への示唆。

適応、緩和と持続可能な開発、相互作用。これらは直接的・間接的なコスト、便益・共便益(コベネフィット)、リスク、経済、並びに衡平性を含む。

深い不確実性、ティッピングポイント、不可逆性、複事象、影響力の大きい事象、社会への示唆。

オーバーシュートを伴う経路、CDR(二酸化炭素除去)、SRM(太陽放射性管理)。及びそれらの示唆(影響)。
短期と長期の相互作用。

セクション4:変化する気候下における短期的な対応

短期的な気候変動、並びに自然システム・人間システムに対する、変動性、脆弱性、曝露、影響、コスト及びリスク。

異なる水準に昇温を抑えることに整合する短期的な社会経済的経路、持続可能な開発と適応の強化に整合する開発経路。

変化する気候下において、早期に対策(アクション)をとる場合の便益の便益とコストやその障壁の可能性、対策(アクション)が遅れた場合のロックイン、残存リスク、スピルオーバー、及び不可逆的な変化を含む影響。

部門と地理的スケールの内外にわたる、多様な対応の選択肢、便益、共便益(コベネフィット)/相乗効果と直接・間接コスト、並びにトレードオフ(適応、リスク管理、緩和)。

持続可能な開発、貧困の撲滅、食料安全保障と衡平性の文脈における、適応と緩和に対するものを含む、公正なシステム移行の強化と開始(の促進)。

資金と投資、能力、制度的調整、国際協力、技術革新及び技術移転、並びに幅広い主体にわたる行動変容を含む、支持的条件と手段。
【参考】
環境省-気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第52回総会の結果について

最後に

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における取組は、多くの民族や生態系や環境を守れるものではない。

では、何が必要なのか?

それは既にSDGsの2030年を無視して、2050年の目標を「温室効果ガス0%」打ち出している国があるということだ。勿論、日本もそうである。菅総理自らが宣言した。

まず、理念として、経済優先をやめ温室効果ガスの排出削減を、即座に実行するべきなのだ。それをやらない限りこの問題を2030年後に持ち越すことはままならぬことだ。

逆なのです。大阪・関西万国博覧会までに目途をつけるスピード感で産学官民あげて改めて試行錯誤するべきである。

経済の豊かさより、自然の豊かさに由来しましょう。

(瑚心すくい)


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