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自分との対話の重要性を知る本の話

何を読んだらいいかわからない、と言ったあなたへ、私の好きな本の話をしよう


突然やってくる編み物旋風に強襲されて、謎にかぎ針でバッグを編んでいます。編んでいる間は、一心に目を数えているだけで無です。瞑想か?!
今回のバッグは、編みはじめは円に広げていき、そこから縦に延ばしていくスタイル。編んでいる途中は完成図の想像がいまいちつかず、本当にバッグになるのか疑ってしまいます。このまま丸い敷物ができたら、もう敷くしかないな、と思ってしまいます。
さて、出来上がりはいかに?!

そのとたん、怒りにさらされて乾ききっていた砂地に、ぽつり、ぽつりと雨が降りはじめたように、なまあたたかい哀しみが、胸にあふれてきた。

あの炉ばたに帰ろう。──そして、この旅の話をしよう。

闇の守り人 上橋菜穂子  


『精霊の守り人』という本を知っているかな?
アニメにもなって、NHKでは綾瀬はるかさんが主役でドラマ化もされた話。
皇子が精霊の卵に憑かれちゃって、それを守る依頼をされた女用心棒の話。精霊なんて言葉が出てくるくらいなので、いわゆるファンタジーの世界の話だ。
女用心棒がこのシリーズの主役のバルサ。30歳になる凄腕の用心棒だ。女性の用心棒だが、若くてかわいくてキラキラではない。年齢通りに、いや年齢以上に経験を積み、否応なく凄腕となった。どちらかというと渋い感じ。
旧Twitterで『イケオジがあるなら、イケオバもあっていいはず』というような話を見かけたが、バルサはどう考えてもイケオバ一直線だ。
時に揺めきながら、時に柔軟であり、それでいて芯がある。

さて、このバルサの話はシリーズ化されている。『精霊の守り人』が一冊め。今回話したい『闇の守り人』は二冊目。

バルサは訳あって子供の頃に生まれた国を出て、ジグロ、という人と旅をすることになった。旅といっても、用心棒をしてお金を稼ぎながらの逃亡生活だ。
ジグロはバルサの父親の友で、バルサのことを頼まれて逃げることになった。

柔らかに健やかに育ってきた子供に、親でもない人との突然の逃亡生活は辛い。
ジグロたちの逃亡への追っ手も、これまた残酷な人選をされている。
とある陰謀による残酷な過去を経て、今のバルサは在る。

一冊目はバルサの仕事の話だったが、二冊目はバルサ自身の物語だ。
バルサが過去の自分と向き合う話だと思っていいと思う。

自分と向き合う、って、誰であっても言葉では言い尽くせないくらいに大変なことだと思う。
バルサの過去には、バルサ自身だけではなく、たくさんのことが関係してくるから、なおさら。

それでもいつか、自分と向き合う時が誰にでもあるのではないかと思う。
いいとか悪いではなくて、好きでも嫌いでもなくて、いつか自分のことは自分に戻ってくるから。

バルサは完璧で美しい勇者ではない。
もっと泥臭くて血の通った、30歳の女性だ。
だけどこの二冊目で自分と、過去と向き合ったバルサだからこそ、この先のたくさんの出来事への一歩を踏み出せるのだと思う。そしてその一歩を踏み出せたのは、たくさんの偶然が重なったとはいえ、きっとバルサしかいないのだと思う。

若い頃、じゃなくて、ある程度の年齢になってから読むと、また違うんじゃないかな、と思ったりする一冊。
自分には光も闇もある、と自覚したからこそ、バルサの立ち位置がしみる気がする。

あなたはファンタジーって苦手かなぁ?
ちょっと特別な用語は出てくるけど、内容的には全くふわふわ夢がある内容ではなくて、ガッツリ渋くて重いから。
あまりファンタジーという目線で見ずに、よかったら読んでみてね?

ではでは、またね。

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