こうのかよ

・レックリングハウゼン(多発性神経線維腫症Ⅰ型) ・緩和ケア認定看護師 ・ねことごはんが好き ずっと病気を隠して生きてきました。人に知られるのも怖かった。 でも、病から気付いた事を話せる私になりたくて、noteはじめました。

こうのかよ

・レックリングハウゼン(多発性神経線維腫症Ⅰ型) ・緩和ケア認定看護師 ・ねことごはんが好き ずっと病気を隠して生きてきました。人に知られるのも怖かった。 でも、病から気付いた事を話せる私になりたくて、noteはじめました。

最近の記事

こころのかくれんぼ 21         ~本当に醜いものは~

今日も鏡を見る。 あぁ、本当に際限がないのだな・・・とほんの少し泣きたくなる。 取り切れるだけ取ってもらった腫瘍。 でも1年が経たずして、また次の腫瘍が現れている。 再び体表面が覆われるまでに、どれくらいの猶予があるのだろう。 今こうして、傷口を労わっていることや日々のからだへの気遣いが、全て無意味なもののようにも思えてしまって、テープを貼る手がふと止まる。 赤みを帯びている新しい傷。 薄茶の色素沈着を残している傷。 白い線の瘢痕に変わった傷。 そして、新しく生まれかけ

    • こころのかくれんぼ 20       【自宅療養編 〜からだと二人三脚〜】

      からだ中をひきつらせてきた、小さな小さな糸たちからは解放された。 ここで終わりのようだけれど、実はここからが本番でもある。 私が私のからだへ、どれほどの気遣いが出来るかが試されるところ。 改めて、衣服を脱いだ自分のからだを眺めてみる。 赤みを帯びた手術創の表面は、一見くっついているように見える。 けれど、表面を切り裂かれ抉られた組織は、7日やそこらでは回復はしない。 毎回思うけれど、傷がふさがってつながるって凄い事だと思う。 人間関係においても、互いに傷付いて離れ離れにな

      • こころのかくれんぼ 19 【自宅療養編〜抜糸劇場②〜】         

        診察室には、少しの焦りを含んだ静かな時間が流れている。 そして地味に痛い。 でも大丈夫、終わりは来る。 終わりが見える苦痛は、本当に救いだ。 終わりがあると思えるから、頑張れることは沢山ある。 耐えろ。耐えるのだ。 そう言い聞かせて目を閉じていたけれど、やはり先は長い。 顔・首・鎖骨と進むが、まだ広大な胸と腹部と腰部が残っている。 だんだん眉間にしわが寄り、身体が硬直してきている自分に気付き始めたその時。奥から声がして、誰かが入ってきた。 1人、2人・・・まさかの助太刀医師

        • こころのかくれんぼ 18     【自宅療養編 ~抜糸劇場①~】

          外来での抜糸。 待ち遠しい気持ちを抱いて、いつもの待合室に腰掛ける。 からだを動かすたびにひきつれる皮膚の違和感と、糸の端が布に引っかかる小さな煩わしさ、24時間チクチクする痛みから解放されたかった。 からだに意識が向き続けるという日常は、一見同じように生活行動をしているようでもその感覚は全く異なっていた。 決して楽な日々ではなかったが、これまで無意識で動いてきたひとつひとつの動きの連動性を発見するという意味では、とても学びとなった事は確かだった。 この感覚は、解剖生理学を

          こころのかくれんぼ 17     【自宅療養編 ~最初の困りごと~】

          首から腰まで、前面ほとんどに縫い傷がある状態で下着を身に着けるのは、なかなか難しいものだった。 (大丈夫な方は、かくれんぼ15の術後写真をご覧ください) 傷の上からモイスキンパットを当てていても、ブラの細い肩紐は鎖骨周辺の傷を直撃するし、アンダーバストの締め付けもそのまま響いてくる。 ショーツも同様で、やはりどうしても局所的な圧迫がつらい。 普段は何とも感じないことなのに、下着が肌に与える「圧」というものをひしひしと感じる。 しかも、おへそ周りはノーガードだ。 ブラ、腹巻

          こころのかくれんぼ 17     【自宅療養編 ~最初の困りごと~】

          こころのかくれんぼ 16     【自宅療養編 ~安心と心配~】

          自宅で初めてのシャワー。 普段何気なく肌に当てているけれど、沢山の傷に直に水流が当たると結構響くものだ。勢いよいスコールのようなシャワーは、目覚めに最適でさっぱりするけれど、今はそんなことしたらきっと叫んでしまう。 温泉のお湯をくみ上げてかけ流すような気分で、ゆるゆるとシャワーを浴びる。水圧を緩め、なるべく肌に近い位置からゆっくりと流していく。お湯の柔らかさを感じて、なんともゆったりした気持ちになった。 やっぱり「あったかい」ってしあわせだ。 傷口の感染予防には、創部の清潔

          こころのかくれんぼ 16     【自宅療養編 ~安心と心配~】

          こころのかくれんぼ 15     【自宅療養編 ~地図のある身体~】

          ご注意:今回は術後の傷の写真を、記事の最後に掲載しています。 術後にお世話になったHCUから、一般病棟へ移動した。 変わらずに4人部屋の廊下側のベッドだ。 太陽の光はあまり届かないけれど、行動がゆっくりゆっくりの今の私には、ベッドからトイレに向かう道のりが少しでも短縮されることが、有難い。 意識がはっきりするにしたがって、仰向けの状態から側臥位になって起き上がる…と言う、普段なら何も意識しないで行える一連の「ねがえり動作」のひとつひとつに、細かく注意を払う必要が生じていた

          こころのかくれんぼ 15     【自宅療養編 ~地図のある身体~】

          こころのかくれんぼ  14 【入院徒然日記 ~解放の日~ 】

          朝食を終えてベッドの背にもたれ、ほうじ茶を頂きながらひと息ついていた。お茶の香ばしさと共に、プラスチック食器の独特の香りが微かに鼻をかすめる。病み上がりや空腹時には、味や香りが普段よりも鮮明に感じることがある。時にそれらはむっとした気分の悪さに変化することもあるのだが、今はその敏感さは不快ではなく「様々な感覚が戻ってきている」という安堵に繋がっていた。なによりも、温かいものを口にすると身体の内側からじんわりと全身に広がっていくような安心感が、しみじみとうれしかった。 傷の痛

          こころのかくれんぼ  14 【入院徒然日記 ~解放の日~ 】

          こころのかくれんぼ 13     【入院徒然日記 ~なぐさめの朝~】

          #創作大賞2024 喉のうるおいに心安らいで、ふっと眠りにつく。 だが、1時間もしないうちに仰向けの同一姿勢がつらくなってくる。 点滴を気遣いながら両腕に力をいれて、そっと腰を浮かすたびに尿道カテーテルの違和感と傷の痛みの刺激で目が覚める。 深く長く眠れた感覚がするのに、実際にはほんの30分しか過ぎていない。「早送りで朝にならないかな」と、子供のように非現実的な事を考えてしまうほどに、病棟の夜は長いものだ。 看護師さんが押しているカート。 廊下に響くナースコール。 遠くか

          こころのかくれんぼ 13     【入院徒然日記 ~なぐさめの朝~】

          こころのかくれんぼ 12     【入院徒然日記 ~渇きの夜~】

          静かな環境と鎮痛薬のおかげで、眠っていたようだ。 目が覚めた時には身体が温まり、震えも治まっていた。 腹部の焼けつくような痛みも少し落ち着いている。 呼吸をすると胸やお腹が連動してひきつれて痛むけれど、十分我慢できる。本当にありがたい。 が、今度は身体が熱を帯びている事に気付く。術後の体温の上昇。 これもまた自然な体の反応だ。よし、生きてるぞ、わたし。 痛いなあ、と言う言葉の中でふっと意識が途絶えて、痛いなぁと言う言葉と共にふっと目が覚める。 それでも「術後急性疼痛は24時間

          こころのかくれんぼ 12     【入院徒然日記 ~渇きの夜~】

          こころのかくれんぼ 11     【入院徒然日記 ~術後HCU~】

          「こうのさん こうのさん わかりますか」 頭の上の方で、名前を呼ばれている気配がする。 私・・・?と、目をあけようとするが、うまく開かない。 自分の瞼の形で縁取られた紡錘形の視界の中に、何人かの人が見下ろしている様子がぼんやりと見える。 手術、終わったのか。 返事を返したいけど、声がうまく出ない。 少しだけ首を縦に振って答えた。 睡眠からの目覚めとは違う、強烈な違和感に少し混乱する。 意識が強制的にシャットダウンされて、また強制的に引き戻された…と言えば伝わるだろうか。1秒

          こころのかくれんぼ 11     【入院徒然日記 ~術後HCU~】

          こころのかくれんぼ 10     【入院徒然日記~手術当日~】

          手術当日の早朝。目覚めは良い。 廊下に出て大きな窓から外を眺めると、晴れた空が広がっている。 まだ低い位置の太陽の光が生命の暖かさのように感じて、静かに目を閉じて全身で受け取ってみる。 廊下のスピーカーからはエルガーの「愛の挨拶」が聞こえてきて、なんとなくその場でお辞儀をしてみた。 こちらの病院は、朝から消灯時間まで院内にクラシックのBGMが流れているのだが、注意深く聞いていると各時間帯によって曲調やテンポが違う。 朝は軽くて少しゆったりめ。昼は軽快なピアノ曲が中心。そして

          こころのかくれんぼ 10     【入院徒然日記~手術当日~】

          こころのかくれんぼ 9      【入院徒然日記~初日その②~】

          カーテンで四方を区切られているので、廊下側は昼でも薄暗い。 昨夜の睡眠不足を補うべく横になってみると、天井の照明が直接目に届いてとても眩しい。しばらくすると目がチカチカと痛くなってくる。 あぁ、そういえば入院患者さんに「眩しい」と言われて、バスタオルをつるして光を遮って差し上げた事があったなぁと思い出す。 仕方なく、ハンドタオルをアイマスク替わりにして目を閉じる。 うん、いい感じ。 どの施設にも共通するのだろうけれど、照明位置などもう少しベッド周辺の環境を見なおしても良いの

          こころのかくれんぼ 9      【入院徒然日記~初日その②~】

          こころのかくれんぼ 8      【入院徒然日記~初日その①~】

          増えてきた腫瘍を可能な限り摘出するために、昨年は手術と回復に時間を使うことを決めていた。背中側とお腹側。二度の全身麻酔を受ける事になるため、体力的にも傷の回復にもある程度時間と余裕が欲しかったのだ。 発汗や紫外線による傷への影響を考慮して、寒い時期に行うことにした。 1度目の手術の際には、自分の事をこうして発信するとは想像もしていなかったので、日々の詳細は記録に残してこなかった。 2度目の手術の際には、写真を含めて記事にしようと決めてメモを残してきたので、それらを少しまとめな

          こころのかくれんぼ 8      【入院徒然日記~初日その①~】

          こころのかくれんぼ 7      【目で見える姿のその先に】

          先日「やっとできたこと」として、外観に障害やコンプレックスを持ちながら生きている方たちのエピソードに触れることができた…と綴った。 手に取った本のひとつ「顔とトラウマ」の中で、顔にあざを持つフリーライターの石井さんがこのように述べていた。 何が美しくて、何が醜いのか。 それは定義があるようで無いようでもあり、やっぱりあるような気もする。 実際にそれぞれが持つ価値観や常識を超えた、いわゆる「普通ではない」姿形をもつ人に出会った時というのは、瞬間的に本能的に驚いたり、慄いたり

          こころのかくれんぼ 7      【目で見える姿のその先に】

          こころのかくれんぼ 6      【いま やっとできたこと】

          noteを始めて、ひと月が経とうとしている。 自分の事を書くと決めてから、ひとつの変化があった。 これまで避け続けてきた「皮膚や外観」そして「当事者達の感情」に触れる作品や書物を、やっと手に取れるようになったのだ。 本当に、やっとだ。 これは自分にとって大きな進歩だった。 ハンセン病療養所の方々の詩集 見た目問題に関わる方たちの語り 障害や差別をテーマとした映画 身体表面に疾患をもつ人のトラウマ etc・・・ 外観に病気を持ち、生き難さを抱える方たちの語りに深く触れるこ

          こころのかくれんぼ 6      【いま やっとできたこと】