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『H×Hは無駄にセリフが長い』←反論したい 【追記アリ H×H考察】



↓このページについて

「単語や固有名詞の重複が多い、無駄だし読みにくい」

という意見を見かけました。「警察」とか「マフィア」とか重複しすぎだろう、と

(HUNTER×HUNTER モノクロ版 38巻)

考察を混じえながら反論したいと思います


先に結論から

① 漫画における絵やセリフは、単なる説明ではない
  歌でいうサビ、お笑いでいう天丼、としての役割を持つ

② 過密な群像劇において、セリフ(文字)でそれを行うのが
  最もページを節約する方法である

③ H×Hの台詞劇は冨樫義博のラップソングである

以上です


さて、まず、重複うんぬん言うのであれば、そもそもこのページ自体が

『ツェリの友人達がずっと重複して映っている』ページです


絵(キャラ)が重複しているから、セリフも重複している。というだけの話ですよ


なぜ重複させるか?

ツェリの友人達が“初登場”だからです

1コマで退場させるわけにはいかない、その姿形だけでなく
彼らの立場や目的を刻み込むために、基本情報を重複する必要があるということ

群像劇だから、いつ再登場するか分からない
群像劇だから、ページも割いていられない
群像劇だから、前後の流れも途切れやすい


だからツェリの友人達が置かれている状況
「軍」「警察」「護衛任務」「マフィア」などの概念やその対立構造を
セリフによって重複させることで、読者に刻み込んでるのです
“ツェリの友人達はその狭間にいるんだ”
って事を強調するためにです

歌でいうサビと同じです
お笑いでいう天丼ってやつです

「マフィア」を歌のサビだと思って詠んでみてください
スッと入るでしょう?(※1)

なぜセリフでそれを行なったか?

セリフ(文字)が最もページを圧迫しないからです

実に合理的です

限られたリソース内で最大限の演出効果を狙っている
これに気づいた時つくづく完成されているなと唸りました


これを無駄だと言ってしまうならば、極論、
ツェリ友の絵だって1コマで済ませればいいってことになる
姿形が伝わればいいのなら一番ムダが無い、しかしそれを漫画と呼べるでしょうか
なぜキャラクターの絵が重複するのはOKで
セリフが重複するのはダメなのか?同じ“情報”なのに


漫画は契約書でもなければ、家電の説明書でもありません
「隅っこに書かれた内容を見逃したお前が悪い」というわけにはいかない
歌のサビしかり、ギャグにおける天丼しかり
同じフレーズを繰り返して印象付けるのはエンターテイメントの基本です

それを読みにくい、分かりにくいというのは
単にツェリ友に興味が沸かなくて読む気が起きなかっただけの話では?と思います

なるほど確かに、まったく興味のない歌のサビを聞かされても
「何回同じこと言うとんねん」「さっさと次いけや」となりますよね


そういう感想であって、漫画の構造的欠陥(わかりにくさ)によるものではないと思います

感想で言うなら、私は文字量なんていくら増えてもいいから
『中央警察署の若手キャリア(現場のトップ()』
こういう冨樫節、面白い言い回しをいくらでも読みたい派ですね

何より、これだけ群像劇とコマ割を極めてる作家が
そこのリソース管理に直結する「文字量」「情報量」に配慮してないわけないでしょう


むしろそこに1番力を入れてる作家でしょう

この批判意見により
新しいHUNTER×HUNTERの凄さを発見できるキッカケになりました
ありがとうございました

【※1】追記
サビ部分を順に並べると

「マフィアの抗争」
「マフィアの血の癒着」
「マフィアの掃討」
「マフィアの退治」
「国対マフィア」

ちゃんと歌詞(リリック)としてのサビになっていますね
マフィアの抗争がだんだん内戦に発展していく不穏な未来を歌った
冨樫義博のラップソングです

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