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なぜクロロは流星街の長老にならなかったのか 【HUNTER×HUNTER 考察】


結論から並べると

・クロロ達と長老は流星街の守り方で揉めた
・長老の防衛策(住民爆弾と住民提供)のほうが合理的で正しかった
・しかしそれでサラサの無念は晴れないとクロロ達は判断した
・クロロ達は独自のやり方で街を守ることを決意し、街を離れた


まず、流星街の体質として

・流星街は人間爆弾で報復を行っている

・魔物化した住民も仲間だと考えている

この2つに共通するのは
「コミュニティのために私情を捨てている」です

(HUNTER×HUNTER カラー版 22巻)


こんな化物、もはや仲間ではないのは住民達も分かってると思うのです

でもそういう「見捨てられた奴」の最後の漂流先として流星街があるわけです
「だからどんな奴が来ても受け入れるべきだ、オレ達だってそうだったじゃないか」
と私情を捨て去ってるわけです

そして殉法者(人間爆弾)のロジックも
「オレ達は命以外なにも持ってなかった」
「その命を流星街によって救われた」
「街に恩返しできるとしたらその命を差し出すこと」

だから「命は命でしか贖えない」という究極的な思想に至るわけです

サラサのような子供ですら、人間爆弾を志願してたのかもしれません

この長老達のやり方に対して、クロロ達はどう感じてたのか?

おそらく、若いノブナガやウボォーあたりが最初はキレ散らかしたんじゃないでしょうか?
「ふざけんじゃねぇジジィ!やりたきゃお前だけでいけや!」と

そして、長老にこう論破されたのではないか?

長老「お前たちは団長(クロロ)のために命を捨てれるらしいな?」

長老「儂とお前たちで何が違うんじゃ?」

……と

そう、流星街の考え方は幻影旅団とほぼ同じなわけです
どちらも組織を守るために究極的な覚悟と選択をしているだけ
それを咎める筋合いなどクロロ達にはありません

それでもノブナガやウボォーあたりが食い下がって

「お前らは俺達が守ってやるってんだよ!余計な真似すんじゃねぇ!」みたいな

しかしまだまだ力不足なメンバーが、サラサ報復作戦を遂行しながら
流星街全域800万人をカバーするのは困難です

それに、マフィアと繋がりだしてから住民が念を覚え始めたという事は
マフィア(外)から念がもたらされた可能性が非常に高い
つまり人狩りも念使いであるパターンが増えてきたということでしょう
ますます対処は厳しくなる

人間爆弾で脅しをかけつつ、住民を売り渡すことで
マフィアと手打ちした長老達の決定は極めて合理的です

しかしその決定に、クロロ達は納得がいかなかったのではないか?

マフィアと協力するということは、関節的にサラサを殺してるようなモノではないのか?

街を守るためにマフィアや人間爆弾になれて良かったねサラサ!ってオレ達は思えるか?

それは「街を守ってる」と言えるのか?

力不足ゆえにそれを口にできないでいるクロロ達に
殉法者として人間爆弾に選ばれたサラサと似た子供が近寄ってきて
こうトドメを刺したのではないか?

「大丈夫だよクロロ!私も命かけて街を守るからさ!あんた達も頑張って!」
「じゃあね!」


…と、ほんの少し寂しさと恐怖が入り混じった笑顔でそう言いながら
爆弾を抱えた大人達と一緒に歩いていくその子を見て

クロロ達は

コミュニティに対する「諦め」と、無力な自分達に「怒り」を抱いたのではないか?
それを原動力にして、長老(政治)とは違うやり方で、大悪党として、
暴れて 暴れて 暴れまくれば、何かを変えられる!と思ったんじゃないだろうか?

その意思表示として、クロロは逆十字を背負ったのかも


そして、ヨークシン編においてそれは実りました
(※ここは他所様ですでに考察されていましたが)
マフィアとの関係をメチャクチャにしたおかげで流星街は自立せざるを得なくなり
蜘蛛のおかげで流星街に対する恐怖が増して、治安はさらに向上し
人間爆弾システムの長老が謎の死を遂げて、クロロの手札として封印されました

結果的に、クロロが理想としていた街のデザインに近づいてます

……クロロはこれを狙っていたのか?
それをいよいよ実行できるからウボォーはあんなに興奮していたのだろうか?

そりゃ血が出るほど嬉しいはずだ
(HUNTER×HUNTER カラー版 8巻)


ここまでやっても蟻編で考え方が変わってない幹部達を見て
フィンクスが「付き合いきれねーバカ共だな」と、呆れたのかもしれません

前回の記事で
盗賊(ハンター)として役割を終えたからクロロ達は退場する
と書きましたが
クロロ達による流星街のデザインが完成に近づきそうだから退場する
と言い換えることもできそうです

その時、サラサの無念は少しでも晴らされて
クロロ達も少しは報われるのでしょうか

【追記】
クロロの二重人格の片割れである、冷徹で合理的な団長としてのキャラクターは
この流星街の長老からラーニングしたものではないかと思います
「人形と人間は大差ない」なんてドライな価値観を持てるリーダーなんて、あの街で他に居ないでしょうし
それも含めて同族嫌悪の腐れ縁なのだろうと

そして「もし街をデザインできたら人間爆弾システムは止めてやろう」
長老と約束していたのでは?ヨークシン編でそれが達成されたことにより
長老が約束を履行してスキルハンターに合意した
その後、今までの責任を取る形で自らも人間爆弾となって敵に特攻
それが死後の念として本に残っていたのでクロロは驚いた…説です


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