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なぜHUNTER×HUNTERは1番面白いのか 【永遠の夢を叶えた漫画家】


それは冨樫義博先生が、漫画界でただ1人

『作家の永遠の夢を叶えた』人だからです


作家の永遠の夢とは? 以下の3つ

① 隅々まで世界を構築したい
② 好きなものを好きなだけ描きたい
③ それで売れたい

これ、クリエイターなら一度は妄想する夢なんです

打ち切り漫画やコケたゲームでよくあるでしょう
『舞台を壮大にしすぎてピントがボヤケている』
『設定を増やしすぎて説明書みたいになってる』
『キャラクターが多すぎて誰が誰だかわからない』

客からも『作り手のオナニーやめろよ!』と散々ツッコまれてるのに
なぜ性懲りもなく同じ失敗を繰り返すと思います?

それが、作家の永遠の夢だからです

作家は、宇宙を創造したいんです

作品という小さな箱に収まりたくないんです、本音は
何百ページでも何千ページでも描いて、宇宙そのものを創造したい
モブの1人1人の人生ですらちゃんと設定したい
道を歩いてるだけのサラリーマンの鞄の中には何が入ってるかも設定したい
作家とはそういう生き物です

『ふーん、じゃあアマチュアで好きにやればいいんじゃねーの?』
と思う人もいるでしょうが、そこで③の問題が出てきます
漫画家だって人間ですから、読者の応援がガソリンになってる面はあります
『売れたい』という野心が作家を成長させている面は絶対にあります
好きだからって誰にも見られず1人でシコシコ作るのは辛いものがあります
完全に1人(フリー)だとどこかで楽をしてしまうかもしれない

『好きなものを好きなだけ描きたい』でも『売れたいから諦めなくてはいけない』
このジレンマに苦しみ続けるのがクリエイターの一生です

このジレンマを乗り越えてしまったのが冨樫義博先生なのです

業界最大手である週刊少年ジャンプ作家として人気を得ながら
まるで同人作家のような自由な創作スタイルが許されている

これはつまり

プロとしての野心やモチベーションを維持しながら
アマチュアとしての自由な創作スタイルを確保している


こんな環境で描いてる漫画家、他に存在しません

いわゆる大御所漫画家が好きに描かせてもらってるパターンはあります
しかし世界一売れてる漫画週刊誌で数年単位の休載期間を設けながらという事例は無いでしょう

この矛盾した環境によってプロとアマチュアの良いとこ取りを実現している

『本来、作家のオナニーにしかならない過剰な群像劇を
プロの娯楽作品として読めるように仕上げている』

それが暗黒大陸編なわけです

プロとして締切や打ち切りの恐怖を忘れてはいけない
という事でしょうか

「え?冨樫はもう締切や打ち切りを恐れる立場じゃないだろ?」
と思ってる人が多いかと思いますが
私は違うんじゃないかなと思っています
もしそうならジャンプから離れて別誌で好きにやらせて貰えばいいからです
冨樫先生がジャンプを離れないのは、少年漫画の金字塔という伝統
「週刊少年ジャンプ作家」としての夢、野心、責任、誇りを失いたくないからだと思います

「だったら休載するんじゃねーよ!」と言いたい読者もいるでしょうが
そこが冨樫義博の作家として通すべきワガママなわけです


作家はワガママを忘れてはいけないし、プロとしての責任や恐怖も忘れてはいけない

その2つを高いレベルで両立させてしまったのが冨樫義博という作家だと思います

両立させた結果が、あの特殊な連載スタイルなわけです

唯一無二の創作環境で、唯一無二の作品が生まれる

まったくもって、辻褄が合う話だと思います


次回は、もう少し具体的にHUNTER×HUNTERの面白さを語りたいと思います

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