20%伝達 穴掘りまくり 01秋のはじめ
穴を掘った。それも普通じゃないほどにほった。谷に抜ける岩の横のけものみちに3つ、沢に降りるけもの道に2つ、いのししが泥あびをする場所に入るところに2つだ。どれも深さは俺の背丈の半分くらい。かたい地面にはほれなかったからけもの道の真ん中からずれちゃったけれど、間抜けなイノシシだったら落ちるかもしれない。掘った穴の上はうすく枝を置いて上にたっぷり落ち葉を敷いておいた。見た感じぜんぜん穴には見えない。でも、人がおちたら困るから、ちょうど人の目の高さくらいに目印の枝を折っておいた。仲間には、目印のあるところを走るな、と言っておいたけど、速足自慢のカワはいまいちな顔をしていた。でも、穴に落ちたイノシシをつかまえられれば、カワも俺のことを好きになるかもしれない。
ジジイとツチが狩りをする日付を話し合っている。ジジイはツチの記憶と判断の正しさを当てにして話しているんだろう。「しばらく前から夜が涼しくなったから、晴れの日と雨の日が交互に来る頃だ」とツチが言っていた。ここしばらくケガするやつも風邪ひくやつもいなかったから、皆の体調がよい。雨の日の次の良く晴れた日を選ぶはずだ。足跡を追いやすいからだ。
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