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Vol.3 20代半ば:IT業界での挑戦と成長


就職活動せず、実家で過ごした焦燥感

大学卒業後、母親の体調悪化で実家の手伝いをしていましたが、20代前半の貴重な時期を田舎で過ごし、何も進まない自分に焦りを感じていました。「このままではダメだ」と感じながらも出口が見えない日々。自己評価はどんどん下がり、一時期は自殺を考えるほどでした。そんな時、心の中で「自分を変えなければ」と決意し、家を出ることを決断しました。そこから自分の人生が大きく変わり始めました。

インターネットへの確信とIT業界への挑戦

当時、インターネットが急速に普及し始めた頃、実家の民宿のホームページを独学で作りました。これが思いがけず成功し、多くのお客様が訪れたのです。「インターネットこそが未来だ」と確信した瞬間でした。それがきっかけで、私はIT業界に飛び込む決心をし、大阪のWeb制作会社にアルバイトとして入社。しかし、その時の住まいは阿倍野にある家賃2万円の中華料理店の2階。ゴキブリが出るような部屋でしたが、それでも未来を信じて突き進むしかありませんでした。

営業主体の会社で学んだ「お客様目線」

会社に入ったものの、Webデザインを学ぶために選んだこの道が、現実は営業主体の企業でした。社長には「君は技術職より顧客対応に向いている」と言われ、制作業務から外されてしまいます。最初は悔しい思いでしたが、社長のそばで「お客様目線」や「営業目線」の大切さを学べたことは、今振り返れば大きな財産です。顧客の本質的なニーズを汲み取り、ビジネスの核心を掴むスキルは、ここで培われたものでした。

技術を学びたい意欲と独学での挑戦

それでも技術への強いこだわりは捨てきれませんでした。制作の仕事がない中でも、知人のウェブサイトを作ったり、いとこの相撲部屋の公式サイトを手掛けたりしました。特に、そのサイトがデザイン雑誌に取り上げられた時の感動は忘れられません。自分の手で何かを作り上げた達成感。しかし、制作の仕事がほとんどなくなり、もっと本格的に学ぶために転職を決意しました。

挫折と発見:自分の適性に気づく

2社目に入ると、今度は電通や博報堂といった大手クライアントを相手にしたクリエイティブに強みがある制作会社でした。ここでも制作業務に就きましたが、またしても顧客折衝のポジションに。最初は抵抗がありましたが、やがて「自分の適性は、技術職ではなくディレクションにある」と気づきました。入社直後「時計の絵を描け」と言われました。実は絵が本当に苦手なのです。手描きが苦手ながらも、PCで角度や比率を計算して数値を使って書いてたら、美しい時計を描けたことには驚きました。けれども、8時間かけてできたものはありふれたもので、そこで「技術職ではなく、全体をまとめるディレクションにこそ自分の強みがある」と悟りました。この気づきは落胆ではなく、新たな道への転機となりました。

転機の瞬間:初めての成功

顧客折衝に配置されて初めて任されたプロジェクトは、誰もが知る東京の劇場ウェブサイトのコンペでした。プレッシャーは大きく、失敗を恐れましたが、クライアントの目線で提案を組み立て、心を込めてプレゼンしました。クライアントが頷きながら話を聞いてくれるのを見て、「これはいける」と確信しました。その結果、コンペに勝利。クライアントから「これなら期待できる」と言われた瞬間、技術職ではなく、人の心を動かす提案ができる自分に自信を取り戻しました。この成功が、ディレクションの道を確信させてくれました。

プロジェクトの成功と成長の実感

あるプロジェクトで、納品までのスケジュールが厳しく、混乱が続く中、私は進捗管理と決断に集中しました。社内調整をしつつクライアントとのコミュニケーションも重ね、何とかプロジェクトをまとめあげました。納品当日、クライアントが笑顔で「あなたのおかげだ」と言ってくれた時、全てが報われた瞬間でした。技術職ではなく、人を動かし、プロジェクト全体を成功に導くことが自分の強みだと実感した瞬間でした。

独立後に活かされたスキル

独立後、Web制作やデザインのスキルが大いに役立っています。「こゝちよ」のウェブサイトやパンフレットはすべて自作し、撮影から印刷会社への納品まで手掛けています。これは料理人としてのキャリアだけでは得られないスキルであり、IT業界での経験が今の経営にも活きています。また、マネジメントスキルや書類作成能力も、スタッフ管理や経営書類の作成に役立ち、外注に頼らずに自ら全体を俯瞰し、効率よく業務を進められるのが強みです。

まとめ:焦燥から希望への20代半ばの挑戦

あの時の自分は、自分が何者なのかもわからず、暗闇の中をさまよっていました。母の看病と実家の手伝いに囚われ、自分の未来が見えずに苦しんだ日々。しかし、「インターネットに可能性を見出した瞬間」、私は新しい世界が開ける感覚を得ました。そしてIT業界での挑戦が、自分の限界を乗り越える力を育て、プロジェクトの成功やディレクションのスキルが自分の新たな自信へと繋がっていきました。

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