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シンガポールで現地採用で働くまでの道のり③~人生はそんなに甘くない



31歳独身女子、無職の日々


彼氏はいないがキャリアはある、なんて見栄を張っていた私は、無職になった。


そのころ私は東京で、弟と2人暮らしだった。正確には、私の借りてる家に弟を住まわせていた。

そこそこの貯金はあったが、再就職のあてがないのに会社を辞めたため、もちろん不安は募る。


こんな時、「お金のことは気にせず僕が養うから少し休みなよ。」なんて言ってくれる彼氏や夫がいてくれたら心穏やかでいられるだろうに、私は養われるどころか、身内を養っているというこの皮肉な状況。


私が職をすぐに見つけないと、安月給の弟に頼ることはできない。会社を辞めることを反対していた親に泣きつくわけにもいかない。


毎日飲んでいたプレミアムモルツを、味のないクリアアサヒに代え、再就職にむけて動き出した。


楽勝の再就職!?


外資系企業で働いていた時の友人たちに、日系の会社が肌に合わず2か月で辞めたこと、仕事を探していることを伝えると、すぐ面接の話をもってきてくれた。


持つべきものは人脈だ。


元上司の転職先で、私の職種のポジションがあいているという。同じく外資系金融。


面接の連絡をくれた元上司に「面接は形だけで、その後チームのみんなを紹介するから」と言われたら、それは受かったってことでOKだよね。


皇居が一望できる一等地にあるビルの会議室で、元上司と固く握手をし、業務内容の説明をうける。


紹介をうけたチーム内に、かなり素敵な男性がいたので、指輪をしてないのをすばやく確認して、笑みがこみあげる。こりゃ、キャリアも彼氏もゲットかな、なんて下卑たことを想いながら。


人生楽勝じゃん、転職なんてすぐできるじゃん、しかもかなりいい条件で、と有頂天になった私は、その日は大好きなプレミアムモルツを1人で浴びるほど飲んだ。


人生はそんなに甘くない


今週中にメールで雇用契約書を送ると言われていた私。


仕事も決まって暇なので、友人達を呼びつけ大盤振る舞いをしながら、再就職がいい条件ですぐに決まったと自慢していたりしていた私。


1週間たってもメールが送られてこないときに、元上司にメールをしてみたところ、メールが受信できないと戻ってきた。


は??


急に焦りだし、すぐさま共通の知り合いに連絡をして確認してみると、元上司は、私の面接をした次の日に、会社を解雇されたということがわかった。


しかも元上司だけではなく、働く予定だったIT部署の数十人が同じ日にいっせいに会社を解雇された、ということも。

人件費を抑えるために海外に部署をかまえることになったというのだ。


私が一瞬、素敵だと思った男性も解雇されたらしい、なんて同情している暇はない。


すぐに再就職が決まったと有頂天になっていた私は、再度現実に戻された。



どこからか、人生はそんなに甘くないよ、と私を笑う声が聞こえた。

つづく




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