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エッセイ【私だって、捨てたもんじゃない】

バカでのろまで泣き虫。なんでもすぐあきらめて辞めちゃう……どうせ私はダメな子だから。
小学生の頃、自分のことをそう思っていた。自信なんて持てたこともない。小学1年の時の担任は、私のことを「知恵遅れ」と親に言ったそうだ。
勉強できなかったし、体育は一番成績が悪い。体育の出来る子がちやほやされ、できない子はいじめられるクラスにいた時は、体操着を見ただけで吐き気がするほどだった。

中学1年の夏、泳力テストはF判定。まったく泳げない子チームに入れられた。夏休みの学校の水泳教室は自由参加。当然泳げない子は参加しない。それなのに何を思ったか、夏休み初日の水泳教室に参加してみた。

部活には入っていなかった。どうせ何部に入ってもちゃんとやれるわけがないと思っていたし、親にもそう言われていた。スイミングスクールに通っている妹たちを羨ましいと思ったこともあるが、「お姉ちゃんには習わせるだけムダ」とあしらわれた。

水泳教室に来るのは、運動の出来る子がほとんど。まったく泳げないのに参加する子なんていない分、目立つ。でも目立ったからよかったのだ。

憧れの体育のM先生が「やる気があって偉いな。泳ぎ方ちゃんと教えてやるから、がんばれよ!」と私に声をかけてくれて、マンツーマンで指導を受けることができた。嬉しくなって必死に練習した。夏の終わりにはなんとなく泳げるようになっていた。
そのまま2年3年になっても夏休みの水泳教室は休むことなく通った。3年生で学校のプールに通ってる子なんてほとんどいなかったけど……
水泳教室の最後の日、チームに分けて対抗リレーをすることになった。3年が私しかいなかったためか、リーダーに選ばれアンカーとして泳ぐことに。体育が苦手で自分に自信がなく、すぐにあきらめて辞めちゃう子だった私が200M泳ぎ切り、チームの子たちの「先輩やった~!勝った勝った!!」の声を聞いた瞬間の気持ち。

こんな私でも、やり抜けた!

夏の学校プールで私が得たものは、泳ぐ力だけじゃなかった。
やればできると信じて努力することによって、やり抜く力を手に入れることができる。そのことをこの身体が覚えたこと。これは、私が生きていく上での宝となっている。

★エッセイの元になった課題本

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