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エッセイ【このくらいなら自分にも書ける】

高校1年の時、授業中に小説書いてる子が隣の席になった。
「私、これ狙ってんだよね」
そう言って教えてくれたのは、青春小説誌『Cobalt(コバルト)』で募集していたコバルト・ノベル大賞。
なにこれ?こんなおもしろいのあるの知らなかった。私も小説書きたい。新人賞狙いたい。でも、400字詰め原稿用紙に100枚もの作品仕上げる自信ないなぁ。
「じゃ、ショート・ショート書けば。コバルトでショート・ショートの作品も募集してるよ。星新一読んだことある?」と言って本を貸してくれた。

〈このくらいなら自分にも書ける〉

星新一の作品を読んで自惚れた私が、『Cobalt』に初めて送ったショート・ショートは選外佳作に選ばれた。

ほら、あっさり名前が載った。

高校3年の春に書いた自信作。これがもし入選したら真剣に小説家になることを考えよう。そう思ってた。
夏号秋号冬号……入選するはず!と自信満々だったのに、佳作にも選外佳作にも自分の名前は掲載されることなく一年が過ぎた。

卒業後の進路も決まらないまま次の春を迎えた私は、高校3年間毎号楽しみに買っていた『Cobalt』を全部捨てた。連日のように寄っていた本屋にも、まったく行かなくなった。
4月の半ばにやっと決まった就職。私ほんとはなにやりたいんだろと思いながら職場と家を往復する日々。
そんなある日久しぶりに入った本屋さんで、1冊だけ売れ残っていた『Cobalt 春の号』が目に留まった。

空っぽな気持ちのまま開いたショート・ショートのページ。
「その日の朝の目覚めは、最悪だった。」の一文が目に飛び込んできた。
昨年春に送った作品が入選作としてそこに掲載されていた。

心が笑っているのか踊っているのかそれとも泣いているのかわからない不思議な感情を胸に、その最後の一冊を買って家に帰った。
一年間今回こそはとページを開きがっかりしを繰り返し、完全にあきらめきった頃に入選って……。
高校生のうちに入選していたなら選ばなかった道に、私はもう進んでしまった。

「あっさりうまくいっちゃったら、死ぬまで書き続ける人間にはなれないよ」小説の神様からのメッセージ、だったのかな。

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