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エッセイ【だから私は本を読む】

「あなたみたいな子が将来少年鑑別所に入ったりするんだろうね」
そんな言葉を親から言われた子どもはどう生きればいいのだろう?

思い返せば、私はいつも頭も心の中も混乱している子どもだった。この『ケーキの切れない非行少年たち』という本に触れた時、そういえば私もケーキを切り分けられない少女だったなと、思い出した。

小学1年の時、数字を1から100まで数えることができなかった。1から10はわかるのにそこから先も同じように数字が増えていくというルールが、どうしても理解できなかった。そして、親も先生も私が何を理解していないのかということをわかっていなかった。毎日のように、学校から帰ると1から100までを間違いなく言えるかテストされ、言えないと家に入れてもらえなかった。仕方なく私は、1から100を暗記することによってこの問題をクリアした。あの毎日毎日怒られながら数字を「言葉」として必死に暗記していた自分の姿やあの時の感情を今でもありありと思い出すことができる。

そんな私だったから、「分数」なんて、意味のわかりようもなかった。黒板を、先生を、親を見ながら、わからないわからないわからないの渦でぐるぐるになって、バカな自分をどうしたらいいかわからずいつも混乱していた。

唯一心を落ち着かせることができたのは、本の世界にいる時だった。
幼稚園の頃、一人で絵本が読めるようにと父が字を教えてくれた。それまで、ただの記号でしかなかった文字が、言葉として文章として、自分の目に飛び込んで来た日の感動を私は覚えている。

心の中が荒れ狂い暴れそうになった時は、手当たり次第に本を読んでその中に入り込み心を静めた。横道にそれておかしな方に行きそうになる時に、私を真ん中に戻してくれたのは本だ。

今でもうまくケーキを切ることはできない。けれど、等分じゃないケーキを笑ってみんなと一緒に楽しむ方法ならわかる。本の中には、人生の歩き方を示すヒントが沢山詰まっている。だから私は今日も本を読む。

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