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98万1200円で購入したDWEを1年間使ってみた話

1年前のこと、「ディズニー英語システムを98万1200円で契約した話」という記事が大爆発して、今でも毎週数千人の方々に読んで頂いています。子供・幼児向け高級英語教材の「ディズニー英語システム」(DWE)を1年間使用してみて、自分の子ども(1歳6ヶ月)にどのような影響があったのか?また自称英語教育専門家として活動してきた自分の目からどの程度効果があるのかを批判的に検証してみました。

なぜディズニー英語システムを購入したのか?

ディズニー英語を始めるまでの簡単な歴史をお話すると、生後6ヶ月の娘を連れて優雅に表参道を歩いていた妻が、無料体験という名の自宅訪問型営業を確約をし、年末に家庭にやってきた営業の方の話を聞き、その場で98万1200円を支払い、翌週には大量のダンボールが自宅に届いたという流れです。

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このダンボールを開くとディズニーの魔法にかかるという噂を聞いていました。ダンボールを開けて本棚を組み立て教材を格納して、部屋を掃除してゴミ置き場まで大量のダンボールを運んだ感覚は魔法がかかったようには思えませんでしたが…ところが娘は魔法がかかったかの様に、本棚にしまった教材を引っ張り出します。冗談はさておき、本題に入る前に簡単に自己紹介させてください。

英語教育専門家である著者の紹介

自称英語教育専門家の嶋津 幸樹(しまづ こうき)と申します。17歳の時のオーストラリア短期留学で目が覚め、帰国後、英語塾を創業し、青山学院大学に通いながら24歳まで700人の幼稚園生から高校生までを指導してきました。その後、ロンドン大学教育研究所応用言語学修士課程で日本人英語学習者がどのように効率的に言語を習得できるか、日本のような外国語として英語を学ぶEFL(English as a foreign language)の環境では何歳からどのように学ぶべきか?などを研究しました。最近ではAERA Englishで幼少期にどのような英語のインプットをすべきかをお話したり、インターナショナル幼稚園では保護者向けの講演をしたり、バイリンガル教育に関する発信をしています。近著『アジアNo.1英語教師の超勉強法(DHC)』をご覧ください

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私は日本の英語教育の被害者と自称しているだけあり、日本の英語教育をなんとかしたいという想いから全国の学校を巡り英語を教えたり、大学で英語を教えたり、英語学習本を執筆したりしながら、日々の子育てに奮闘しています。特に自分の子どもはバイリンガルではなくマルチリンガルになってもらいたく、私の全てのお金と余暇を費やして大切に育てています。私の月3万円のお小遣いからすると98万円は超高額ですが、33ヶ月我慢すれば子どもが英語を話せるようになると考えれば大したことないです。

ディズニーランドで魔法にかかる仕組み

そんな子どもに対する意気込みを発表したところで本題に入っていきます。時を戻してDWEを購入する2ヶ月前のこと、我が娘(4ヶ月)はディズニーランドのデビュー戦に望んでいました。事前にジャンボリーミッキーの曲を浴びるように聴かせ、テンションアゲアゲでミッキーやミニーと初対面しました。もうこのときからディズニーの魔法にかかっていたのかもしれません。

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DWEが到着して私が一生懸命設置した本棚がこちらです。特別特典のミッキー型のDVDプレイヤーとお喋りするミッキーのぬいぐるみは最も高い地位に置かせて頂いています。1歳6ヶ月になった今では、この本棚から如何にたくさんの物を引き出し、床にバラ撒き散らかすかを生業にしているようです。

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DWEの映像教材に関して

DVDの視聴スタイルはこんな感じでベッドの外側に固定してパパは見守るスタイルです。最初の頃は特に喜ぶ様子もなく、ただただ動く画面を見つめて集中していました。リピートすることもリズムに乗ることもなく、ただただ大量に映像を見つめているだけです。朝30分、暇なときや移動中には欠かせないアイテムとなりました。注意すべき点は映像でのミッキーを含むディズニーキャラクターの出演時間は想像以上に少なく、ほとんどが俳優や子役、他の動物達のアニメーションになっているということです。

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映像をどの程度集中してみるのかという実験を他の映像を使ってやってみましたが、結果としてわかったのは、この段階ではアニメーションであればどの映像でも集中して視聴します。ディズニー英語の映像だから集中できるというわけではなく、教育用の映像(声優の声が高い、顔と目が丸い、色鮮やか、テンポが早い)であれば集中できます。

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DWEのワークショップ

そんなディズニー英語は教材を買うだけではありません。教材の力を最大限発揮するためのワークショップやイベントが豊富に用意されています。DWE購入1ヶ月後には新宿にあるオシャレなディズニーのオフィスでこんな感じのワークショップに参加してDWEの基礎の基礎を学びました。モンクレールのダウンを着たお金持ちそうな夫婦がたくさん参加していました。ユニクロのダウンを着ていた私はそこで脱ぎ捨てようかなと一瞬思いました。

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ここで学んだ大切なことはやはり継続させて習慣化させること、そして励ましや声がけをすることです。聞き流すだけで英語が話せるようになるという大人向けの教材がありますが、聞き流すだけで英語は話せるようになりません。ディズニー英語は映像を見るだけで英語が話せるようにはならないことを熟知しているようで安心しました。ワシントン大学教授のPatricia Kuhlの有名な実験で、6ヶ月の子ども脳の中で何が起きているか解き明かした研究を紹介しています。所謂、臨界期仮説に挑む研究をいくつか紹介していますが、その中でも注目すべき点はアメリカ人の赤ちゃんに中国語を学ばせる実験で「音声」や「映像」のみでは学習が起きず、人間の介入が不可欠であると結論付けています。つまり映像を流すだけでは効果は期待できないということです。

DWEのマジックペン(魔法のペン)

それでは教材を覗いてみましょう。マジックペン(魔法のペン)でタッチすると音が流れる仕組みになっている本が限定的ではありますが、存在します。全ての本がマジックペンしようかと思いきや数冊のみなので、子どもの魔法の効かない本を何度もタッチする現象が起きます。英単語が中心ですが、ここに書かれている表現は本物の(authentic)表現が多く、日本人教材開発者によくある不自然な表現は掲載されていません。

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DWEのトークアロングカード

そしてディズニー英語システムの象徴とも言えるトークアロングカードと呼ばれるカードを使ったスライド式のマシーンです。トークアロングカードが510枚には3,000以上のフレーズを収録されています。私自身、ほとんど流し聞きしましたが、例文の良し悪しはあります。殆どの例文がThis is a ...という文脈(context)から学ぶ偶発的学習(Incidental learning)ではなく意図的学習(Intentional learning)になっています。ペンが書かれたカードを見て、This is a pen.という音が流れてくるわけですが、この半強制的なインプットには賛否あります。トークアロングカードをやりまくったところで偶発的学習が起きる環境がないと形式的な学びになってしまいます。

このトークアロングカードの優れたところはカードによって効果音が含まれている点です。whistle(口笛を吹く)は口笛の音と共にMickey is whistling.「ミッキーが口笛を吹いている。」という文脈のある例文が流れてきます。またlisten(聞く)もMinnie is listening.「ミニーは聞いている。」という何を?という目的語が気になるところではありますが、一応文脈があります。やはり子どもはその効果に反応して世話する人(Caregiver)の顔を伺ってきます。

1歳3ヶ月を過ぎるとこのトークアロングカードを使って一人で遊ぶようになります。この機械自体も相当改善されたらしく少しでもカードをはめると自動的に音が流れてきます。夜の寝かせつけに失敗したときにはここで一遊びさせるとだんだん眠くなります。寝かせつけに最も効果的な魔法の本は『きんぎょがにげた(福音館書店)』ですので是非この方法を試してみてください。

こどもちゃれんじEnglish

自称英語教育専門家の私がDWEだけを信じて教育をするわけがありません。世の中のあらゆる英語教材を検証しています。こどもちゃれんじEnglishも勿論体験済みです。これについても単独の記事を執筆予定です。

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間違いなく断言できるのは、英語教材ではなく、メジャーな方のこどもちゃれんじ幼児教育教材はコスパ最高なので0歳児から入会することをオススメします。世界2位の教育企業ベネッセだけあり、英語教材は改善ポイントが多々ありますが、幼児向けのおもちゃのクオリティと幼児研究がしっかりなされている印象です。

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海外からも輸入教材を大量に仕入れて実験しています。これについてもニーズがあれば執筆予定ですが、安くてDWEの代替になるような教材が世の中には山程存在します。ちなみに我が家では上海人妻が子どもに中国語(普通語)で話しかけ、お祖父ちゃんお婆ちゃんがいると上海語になり、私は英語と日本語と中国語で話しかけ、保育園では日本語で話しかけられるというトリリンガルの環境にいますが、母親の言葉(motherese)の影響力が強く圧倒的に中国語に反応します。

DWE1年間の成果発表

最後に1年間DWEをほぼ毎日使ってみた成果をお見せします。まず基本的な動作、Yesは首を縦に振る、Noは首を横に振る、hands up(手を挙げる)やjump(飛び跳ねる)は出来ます。そして前回の記事でも書きましたがTPR(全身反応教授法)に基づいたアクティビティは成果が出やすい感じがします。

検証結果

当たり前のことですが、毎日30分間英語に接しても母国語である中国語が優勢です。母親から愛情たっぷりに注がれた言葉が最も定着しています。もう私が理解できない中国語を理解しているかのような反応と振る舞いを見せています。この小さな脳で莫大な情報を処理して必死に言語習得をしていると考えると神秘的です。

それでは1年間DWEを愛用した感想をまとめていきます。
・98万1200円の価値はあるのか?
まず1年間では98万1200円の価値を感じることはできませんが、ディズニー英語システムはなんと弟や妹はもちろん、何世代にも渡って家族内で教材を分け合うことができるのです。つまり私の孫の世代への投資とポジティブに考えることもできます。この価値を最大化できるかどうかはまだわかりません。
・本当に英語が話せるようになるのか?
よく講演会等で頂く質問の一つですが、ディズニー英語システム(DWE)だけでは英語がペラペラ話せるようにはなりません。この教材を有効活用して言語習得を促進させることは出来ますが、必ず世話役(Caregiver)の存在が必要です。こちらの動画をご覧いただき、子どもが随時、世話役の表情を伺いながら遊びを進行させているのがわかりますでしょうか?子どもの心的安全性が保たれた状態で1つの時間を共有する、この相互作用により言葉を身に付けます。

続編



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