水泳を見るなら個人メドレーが面白い。

2歳から17歳まで、水泳を習っていた。水が怖くて母の元を離れられず泣き喚くところからスタートし、小学2年でいわゆる選手コースという、タイムを向上させるためのコースに入った。初めての試合でクルッと回るターンのタイミングが早すぎて足が壁に届かず、失格になって大泣きした。そこから高校2年生の夏が終わるまで、何度も辞める辞めると言いながら、なんとか続けていた。選手としては結局泣かず飛ばずの結果しか残せなかったが、たまに水泳の試合がテレビでやっていると今でも手を止めて見てしまう。

水泳の試合はなかなか生で観戦する機会がない。特に近年入場が関係者のみに制限されていたりと、身内に選手でもいない限り気軽に見に行きづらくなってしまった。昔の経験があるからこそ、こうやってたまにテレビで観戦することがあるものの、そうでなければレースとレースの間は長いし、知らない人ばかりだし、泳ぎ出してみれば水飛沫で見えないじゃないかと、ルールはシンプルだが見ている側は楽しみ方の難しいスポーツだなと思う。

そこで今日は水泳をより楽しく観戦するための方法?として個人メドレーという種目に注目してご紹介したい。自分自身、選手として現役の時はこの個人メドレーを専門として日々練習に励んでいた。他の単体の種目を専門とする選手からは「いいよな、色々泳げてさ。気分転換できるもんな。」などという理不尽な言葉をかけられがちな種目なのだが、今でも水泳の試合をみるならこの種目が一番面白いと信じている。近年男子の水泳界は萩野選手と瀬戸選手が牽引しているといって問題ないと思うのだが、その2人が揃って出場しているのがこの種目ということもあって、そういう意味でも今アツい種目だと言える。

まず個人メドレーとは、その名の通り1人で全種目を
①バタフライ→②背泳ぎ→③平泳ぎ→④クロール
の順に泳いでいく。距離は各種目50mずつ泳ぐ200mと、100mずつの400mの2種類がある。

基本どの種目も得意不得意があまりないですよーという人が出場することが多いのだが、そうは言っても人によって得意不得意があるのがこの種目の面白いところ。例えば前述した萩野選手は②背泳ぎと④自由形を得意とし、瀬戸選手は対照的に①バタフライと③平泳ぎを得意としている。個人メドレーに出場している選手は基本、単体の種目でも出場していることが多いので、他の選手の試合を観戦する時も、他にどんな種目に出場しているかを確認することで何が得意かを大体予想できる。

また、200m、400mの距離となると最初から100%で押し切るというわけにもいかないので、選手はある程度ペース配分を考えなければならない。このペース配分にプラスして、得意不得意な種目が絡んでくるのがこの種目の面白いところ。シンプルに最後まで結果が予想できない。得意種目で引き離すか、苦手種目でできるだけ遅れを取らないようにするか、クロールまでの種目は周りに引っ張ってもらって最後にスパートをかけるか。他の種目に比べて駆け引きに要素がプラスされるのだ。

あと実際に泳いでいると両隣の選手くらいまでは視界に入るので、ラストスパート時に両サイドとの差を体一個分以内にできていれば見えるので、スパートをかけやすかったりもする。ちなみに、飛び込んでしまうと残念ながら歓声はひとつも聞こえない。あの、応援の掛け声って、スポーツによって違って面白いですよね?水泳も多分独特なのがあって、今思うとへんちくりんな音頭をとっていたなと思う。

そんな感じで、街中で偶然たまたま水泳の試合を見かけた時にはぜひ足を止めてみて欲しい。現在、オリンピック開催についてあれこれと言われているが、開催の可否にかかわらず是非、個人メドレーという種目に注目してみてもらえればと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?