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ただ一人の読者のために参加してたコミティア

今日のコミティア146は久しぶりに欠席した。

私は15年ほど前に同人を再開してからほとんど休んだ事はない。
今よりずっと売れてなくてもコミティアを継続できたのは「いがぐりさん」のおかげだ。

「いがぐりさん」

もちろん私がつけたあだ名である。
短髪でメガネをかけた男性。
物静かで何も語らない。

私は昔、来てくれたお客さん一人一人を記録してブログに書いてた。
お礼の意味を込めてだったが、それを見てお客さんが「あれオレの事ですか」と話しかけてくれることがあったからだ。
そうして一生懸命コミュニケーション取ろうとしても、数年経てば皆いなくなる。

そんな誰も私の事を見向きもしない時代にも、ただ一人必ず来てくれる男性がいることに気づいた。
それが「いがぐりさん」だった。

ティアマガに掲載されても売れない本

同人再開時、商業の総集編を作るとすぐティアマガに掲載された。
軽く天狗になった。
そんな私を突き落とすようにその本は全く売れなかった。

ここからが本当の同人活動の始まりだと思った。

誰に求められるわけでもなく勝手に書いて出す本。
分かってはいるが心が折れそうになったことは何度もある。
それでも必死にコピー本を出し続けた。


そうして10年経った頃、恥を忍んで売れ残った総集編をお客さんに無料で配布することにした。
皆が受け取っていく中、いがぐりさんだけが

「いや、持ってます」

と言ってくれた。
その時、本当に初期から来てくれてたことを知った。

必ず来てくれるけど必ず中を精査する緊張感あふれる読者さん

それから私の中でいがぐりさんがコミティア参加の一つの基準になった。
必ず立ち寄ってくれるが、必ず中をしっかり吟味する。

「あなたの本は買うに値するか?」

目の前でじっくり私の本を読む読者さん。
緊張感あふれる時間が流れる。

お礼を言おうとしてもいがぐりさんは決して馴れ馴れしくしない。
お金を払ってくれる手は、いつも震えている。

次第に私は

この人に買ってもらえなくなったら、出直して来いって事だ

と考えるようになった。
同時に

この人が来てくれる限り、他に誰もいなくてもコミティアに参加し続けよう

と決めた。


「いがぐりさん」の正体判明の日

それから数年後のティア、遠くにいがぐりさんの姿が見えた。
ホッとしてると、隣の友人のスペースへ行った。
「ああ、私じゃなかった」と恥じてると

「やあ、元気ですか」

…いがぐりさんが友人と喋ってる???

なんといがぐりさんは、私の友人のお知り合いだったのだ。

しかもその友人は遥か昔に関西ティアマガに私の本のレビューを書いてくれてて。
いがぐりさんはそれを見てウチのサークルを知ったのだと言う。

「なんだって…???」

カミサマはこんな近くにいたのか??!!!!


初めて見るフレンドリーないがぐりさんの姿に呆然としてると、ニコニコとうちのスペースにも来てくれた。

「そういう事なんですよ」

少しはにかみながら語ってくれた。

15年近く経ってようやく判明した「たった一人の読者さん」はすぐ近くにいた。
一人でこっそり泣いた。


その後も変わりなくいがぐりさんは毎回来てくれる。

私の作風が変わろうと、ティアマガでインタビューを受けようと、いがぐりさんは変わらない。


9月のティアで、12月は欠席する事を話すと

「では良いお年を」

と少し照れながら言ってくれた。


コミティアには思いがけないカミサマがいる。
今日のコミティア146もきっと色んな奇跡があっただろう。

この場を借りて改めて、いがぐりさん。
本当に本当にありがとうございます。

そしてうちのサークルを見守ってくれてる皆さん、本当にありがとうございます。


永遠にこの活動を続けられますように。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。


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