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〔北海道旭川〕持続可能なコミュニティ “OMO7 旭川” に泊まってみた



星野リゾート第4のブランド 1号店

2018年、星野リゾートが第4の新ブランド"OMO"を発表し、同年4月に北海道旭川市にて旧旭川グランドホテルをリノベーションした "OMO7 旭川" をオープン。
今回は、そのOMO 第1号店である旭川へ宿泊。

そんなOMOだが、現在は旭川のほか "OMO5 東京 大塚" を開業し、2020年に ”OMO3 川崎” 、2022年4月には "OMO7 大阪 新今宮" 、2023年春には山口県下関市の関門海峡に面したエリアにも新たに開業を予定している。

詳しくは以前投稿した私のノートでも綴ってるので気になる方は是非ご確認を。

開業 :2018年4月28日(旧旭川グランドホテル:1994年5月14日)
場所 :北海道 旭川
躯体 :リノベーション
運営 :株式会社 星野リゾート
設計 :日本設計(設計:旭川グランドホテル)、乃村工藝社(内装)
客室数:237室/グレードあり
格付 :★★★


公式サイト引用
富良野や美瑛にも好アクセスな拠点都市「旭川」。
見どころ満載の旭山動物園やご当地グルメのハシゴで出会う旬の美味など、訪れるたびに街の個性に魅了されます。
北海道の風土とこの地に伝わる新旧カルチャーを、思いの限り遊び尽くす都市観光のためのホテルです。


2月に氷点下36°を記録した旭川市

今回の滞在は、8月、お盆明けに行ったものだが滞在中の最低気温は14°と、夏服で過ごす気温ではなかった。

着陸時、飛行機から見た景色は今までで一番美しい着陸風景だったと思う。
広い盆地に緑がずっと広がり、民家がぽつぽつと立っている景色を見たときには「こんな人口密度で暮らしてみたい」と本気で思った。

「まもなく北海道の真ん中、旭川空港へ着陸致します」というアナウンスが流れ、「富良野の人が聞いたらどう思うんだろう」と余計な事を考えていたら着陸。

小さな空港なので飛行機を降りるとすぐにバスターミナルがある。市街地行のバスのチケットを買おうとインフォメーションカウンターで尋ねると、「クレジットカードは使えますがICカードは "Kitaca" しか使えません。」と言われた。初めて聞いた。

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ムササビが控えめに飛んでいる、ゆるめのデザインのカードだったがこのカードしか利用できないとのこと。少し前まで広島の路面電車もそれ限定のICカードしか使えなかったな…


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空港から市街地まではずっとこんな景色。
「あ~白樺の林、今回は見れないや。」と落胆している私みたいな弾丸ツアラーの方、ご安心を。白樺は市街地の一部に普通に生えていたよ、街路樹として。


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着いた。バスの終点で、ここまで乗っていたのは私一人。
道端にほっぽり出されるも、目の前がホテルだった。

このとき17:30頃だったが、気温は既に18°と肌寒い感じ。 


格式高いホテルから一転、活気あふれるロビーに

リノベーション前の姿を知らない私にも立派なホテルだったことがわかる佇まい。

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入るとすぐに白樺の木が迎えてくれる。
ここは季節ごとに飾り付けが異なるらしい。

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ウェルカムドリンクはセルフ式。壁から出ている蛇口から季節の飲み物が出てくる。

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蛇口はよく見ると熊の木彫りを模したデザイン。
デザイナーによると、入口の白樺然り、ホテル内には旭川を思わせる要素が散りばめられている。このハンドルもその一つだが、いつも熊の勝利を表している熊の木彫りと違い、熊と鮭がフェアに闘っている姿にしたとのこと。


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ペンギン。旭山動物園の動物たちのぬいぐるみがロビーに散らしてある。


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これは "Go-KINJO MAP"。大塚のOMO5にもあったと思う。
500歩圏内のお店を "ご近所" と呼んでいる。


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ロビー奥には図書コーナー。"ブックトンネル" という名前だったと思うが、なぜトンネルかというとここはエスカレーター下のスペースであり、建築基準法では物を置いてはいけないスペースであったため、トンネル型の構造物を収め、その中を行き来できるようにしている。
雪国であるこのホテルの床下にはリノベーション前、床暖房が納まっており、構造物と同重量のモルタルを床下から取り除き、躯体への負荷をトントンにしている。


また、ロビーに配置されている家具は全て旭川家具のものらしいのだが、中には造作の照明もある。
これは、旭川の木材を用いて制作されたもので、これもまた旭川を思わせる要素であるとともに、訪問者の気づきを促し旅を意外な方向へと導く工夫でもある。

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ブックトンネルの中は不思議と落ち着く。ここがロビー階の中で最も、且つ急激に天井が低くなる場所だが、圧迫感もなく、本が照らされる明かりも心地よい。

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座ってみた。本棚に並ぶのは大人向けから子供向けまで様々で、カテゴリーわけなどのタグは一切ない。並ぶのは全て旭川に関連する書籍となっている。

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お土産も充実。空港や街のスーパーには並んでいないお菓子が買えたり、センスがいい。
地元の作家の作品も買えたりするが、特に気になったのはホテルグッズの多さ。ここまでホテル関連のグッズを揃えているのは珍しい。それだけファンも多いのだと思う。

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自転車やベビーカーも貸してくれる。

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さて、Go-KINJO MAPに戻ってきた。

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テーブルには人工芝の板と動物のフィギュア。
この人工芝は、本当は客室のテーブルに貼られていたはずのもの。清掃性の観点から剥がされ、ロビーにこうして置かれたのだと思う。

少し悲しい気持ちになった。

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オセロ。これも地元の木工作品だろうか。

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上を見上げてみる。
観たときには空間やテーブルに対してやや小さめに思えたランプシェード。

これは地元のラーメン屋さんから譲り受けたラーメン鉢
すべて異なるお店からもらったもので、それぞれのお店のこだわりがここにも垣間見える。

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こちらはカフェ&バー。いまは営業していない。
朝食会場はここになるが、朝食は通常通り頂くことができる。

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クラシカルなエレベーターで客室へ移動する。
2階~6階は会議室や宴会場となっている。本当に立派なホテルだったことが伺える。

地下にはサウナ施設があるが、換気ができないという理由から今は営業していない。スタッフに尋ねても再開する目処が全くないとのことだった。

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当時の面影を感じるが、このホテルのストーリーを分かったうえで訪れると、こうしたところにも趣を感じることができる。

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家族と、友人と、"だんらん"できる客室

扉を開けるとポップなカラーの客室。ファミリー向けの広い部屋も後から追加されたようだが、ここは一番狭いスタンダードな部屋となる。

カップル、友人、どんな関係性の人と訪れても団らんできるようレイアウトされている。もともとはベッドが一台あるごく普通の部屋だったが、リノベーション時にシングルベッドを2つ置くレイアウトに変更された。
寝る機能と、腰掛ける機能を一緒にすることでこのベッドの上で両方が完結する。

ちょうど板で枕が隠れて見えないのも、意図したところ。
どんな関係性の相手であっても相手の寝ている顔が見えてしまうのはよくないと、顔が隠れるように設置された。

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ベッドの下にラゲッジスペース。

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シーツの質感は2台のベッドで異なる。
1人で滞在する際には窓側をソファやデイベッドとして、もう一つをベッドとして利用する想定だろうか。
大塚のOMO5でも、やぐらの下部分はソファにもベッドにもなる仕様だった。

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バスルーム。ここはほとんど当時のままだと思う。
壁がタイル風になっているおかげでユニットバス感は軽減されている。

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冷蔵庫がないなと思ったら入口の扉のすぐ横にあった。

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チェックイン時に渡されたもの。
封筒に入ったルームキーと、ホテルとその周辺の案内。

朝食は混雑回避のために15分単位で予約時間が区切られていた。
早い時間から順に埋まっているようだったが、実際、朝食を食べる時間に制限はないのでご安心を。

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旅のテンションを上げる仕掛け

20時から「動物の話をしない旭山動物園講座」というものが始まった。
子供たちがバラバラと集まってくる。みんな好きな動物のぬいぐるみを抱きながらスタッフの方の話を聞いている。

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本来であれば "レンジャー" と呼ばれるスタッフが街を案内してくれたり、こうしたワークショップを "ご近所" さんを巻き込んで開催したりとにぎわっていたはずのこのホテルも、今はこの講座に留めつつ、次のプランを計画しているとのこと。

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斜め上の旭川を楽しめる朝食

朝。予約の時間に朝食会場へ。
カフェ奥にあった壁が90°回転しバイキング形式の食べ物が並んでいる。

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この日の朝は14°。薄手の上着は持ってきていたが寒すぎる。

案内されたのはブックトンネルの中。ここもこの時間は朝食会場の一部へと変わる。
異なる空間がシームレスに繋がるこのホテルのロビーならではのフレキシブルなレイアウトであった。

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開店した壁の奥へ。ここでもまた新しい旭川を発見できる工夫がある。
北海道に来たら何が食べたくなるだろうか?海鮮丼?実際、モスクワのマリオットホテルもそうしているように朝から海鮮丼のバイキングというのも悪くないだろう。

しかしここでは、そうしたゲストの期待を違う角度から上回ることでゲストのテンションを上げてくる。

旭川ではワッフルも有名らしく、他にも旭川の食材でつくった和食、洋食、様々な種類のパンやスイーツも並び、ドリンクの種類もとても豊富だった。
選びきれない…

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とりあえずワッフルと野菜で無難な朝食にしてみた。

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その後、しらすご飯とヨーグルト。この食べ合わせは誰に話しても笑われる。

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昨日18時頃チェックインした後、朝8時にはチェックアウトしなければならないスケジュールだった。
名残惜しいけどチェックアウト。旭山動物園、いつか行くぞ。

ゲストと街との新たな関係性を生み、且つそれを持続可能なものにしていたOMO7はこんな状況でもほんの少し活気があった。
次に訪れるときには、本来の姿に戻り、更に進化したOMO7の姿を見てみたい。

楽しい時間をありがとう!

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最後に、初日の夜に震えながらすすった旭川ラーメン。
山頭火の塩ラーメン。おいしかった。寒かったから余計に。

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〔OMO5 東京大塚の宿泊レポート〕


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