#3 唐揚げ

水曜日は少年野球の練習日だ。15時頃、学校から帰ったしょうとは急いでユニホームに着替え、お餅を食べた。集合時間に間に合うように、誘いにきてくれた上級生と自転車に乗って出かけた。

暗くなってしょうとが帰ってきた。「お帰り。しんどかった?。」「唐揚げ食べたい。」スパイクの手入れをしながらしょうとは言った。

しょうとの話しはこうだった。

練習中、唐揚げのことが頭にうかんだ。でも、「今は野球の練習中。集中しよう」と自分に言い聞かせた。しばらくするとまた熱くて、かりっと、ジューシーな唐揚げがうかんできた。その都度、「今は練習中、野球に集中しよう」と言い聞かせた。しかしまた唐揚げがうかんだ。今日はその繰り返しだったということだった。

「唐揚げ買いに行く?」
「うん。ママに漢字50問テストに合格するまでダメと言われてるけど~~~~~・・。ま~今日は特別やわ。」

しょうとと車で唐揚げを買いに行った。お金を持ってひとりでお店に入って行った。小学生にだけくれるおまけの缶ジュースを飲みながら唐揚げができるのを待っていた。しばらくして、1個おまけしてもらったとよろこんで車に戻ってきた。帰りの車の中で「熱い熱い」といいながら食べはじめた。

「今日は欲しかってん。野球の練習の時に唐揚げのことがうかんできて集中できへんだわ。」
「そんな時もあるわ。」

おじいちゃんに言って買ってもらおうかな~。ママに怒られるからやめとこかな~。練習からの帰り道、しょうとの中で葛藤があった。
そやけど「ほんまに今日は食べたかった~~。」

「熱い熱い」といいながら車の中で2個。帰って妹に1個。しょうとは2個。満足げな顔をして、食べた後の袋をすぐにゴミ箱に捨てに行った。

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