星めぐりの旅 盛岡までの道程
長年夢見てきたことが、いくつか実現しました。
一気に実現した感があるため、心の整理がなかなかつかず。
文字起こしすることにも、正直ためらいがあります。
実現した一つが、現在盛岡市のもりおか啄木・賢治青春館で開催されている「高校生が考える 賢治と北海道展-心象スケッチ「札幌市」から-」です。
札幌の高校生が、盛岡市にある宮沢賢治ゆかりの公共施設で「宮沢賢治展」を企画する。
???だらけのシチュエーションですが、実際に展示会は開催されています。
ことのはじまりは2018年。
生徒と一緒に作った副読本『青の旅路 宮澤賢治と北海道』。
全ては、この本がきっかけとなります。
詳しくは、北海道書店ナビさんの記事をご覧ください。
宮澤賢治と北海道の縁をもっと身近に感じてほしい、という想いで東京書籍から出版した高校オリジナルの副読本です。
副読本を用いた学習は、学校内外でのゼミ形式の学習や国語の授業での活用からはじまりました。
また、副読本を作成した生徒たちと札幌でイベントを開催し、市民のみなさんに参加していただきました。
花巻農業高校(賢治さんが教員をしていた花巻農学校)の「偲ぶ会」にも出席しました。
盛岡市で行われた岩手日報社主催の「北海道・胆振観光復興フォーラム」にて、発表もしました。
副読本から「銀河鉄道の夜」の一節を、女優の高橋恵子さんが朗読してくれるという嬉しいサプライズもありました。
などなど。
私たちの想像を超えた反響と活動の広がりに、当時は驚きを隠せませんでした。
これからもっと広がっていくだろうと考えていた矢先、作成した生徒が卒業すると同時に新型コロナウィルスの蔓延があり、そこから一時期活動が停滞します。
そんなときでした。
卒業した生徒と入れ替わりで入学してきた一年生の男女2名が、担任の先生に引きつられ私のもとにやってきます。
担任に聞くと、2人とも文学に興味があるとのことで、とりあえず私に紹介したかったとのこと。
女子生徒は明確に「若者の文学離れをなんとかしたい!」という目的を持っていました。
男子生徒は「銀河鉄道の夜」が好き、とのことでした。
2人とも授業は受け持っていませんでしたが、この子たちとなら面白いことができそうだと、定期的に集まって賢治さんの文学を学ぶことになりました。
それが、今回盛岡で展示を企画している「宮沢賢治文学を研究する会」のはじまりです。
本格的に活動しようという話になったのは、彼らが2年生のとき。
3年生の女子1名、2年生の女子2名、男子2名という構成になり、みんなで札幌市にある円山動物園のゾウ舎で『オツベルと象』展を企画しようと盛り上がります。
「文学離れをなんとかしたい」
という目的を彼らなりに考え、導き出した方法が企画展での展示でした。
しかし、当時園長だった加藤さんが異動になってしまい、その後の園の担当者とうまく話が進まなくなってしまいます。
結局、企画は頓挫してしまい、3年生の子は志なかばでの卒業となってしまいました。
コロナ禍もあり、しょうがない部分もあったのですが、”高校生を信用し切れない大人”という残念な構図が見えてしまったのも事実でした。
私が介入すれば展示会は実現できたかもしれません。
しかし、それでは意味がないと考え、見守ることに徹しました。
展示会の企画はしたけれど、場所が見つからない。
そんな彼らに、助け舟を出してくれた方々がいました。
北海道でドラッグストアを展開する「サツドラ」こと、サツドラホールディングスの皆さんです。
生徒たちの活動に共感し、本社ビル店舗にあるイベントスペースを無償で貸してくれるというのです。
メンバーのコロナ罹患により一度キャンセルになりましたが、2022年5月にようやく1回目の展示会が実現します。
その日までは、漠然と「展示がしたい!」という想いで企画していた生徒たちでしたが、この日を境に展示を通してやりたいことが明確になりました。
それが、お客さんとの「対話」です。
時に自分たちより詳しいお客さんを前に、対話を通して賢治さんのことをもっと深く学びたい。
お客さんが展示を見て感じたことを、対話によって自分たちも吸収したい。
そんな自分たちの展示スタイルを持って臨んだのが、札幌市役所での展示会でした。
展示会では、市民の方々だけでなく、後援してくれた札幌市副市長をはじめ、市議会議員の方など、市役所ならではのお客さまにも展示を見ていただきました。
生徒たちは、展示を見て来場者が何を思ったのか、また自分たちはどんな思いで展示を行っているのか、対話を通して交流を持つことができました。
通常、静かに鑑賞するのが一般的な展示会のあり方ですが、本展示会は声が絶えない活気ある場となりました。
一番驚いたのは、生徒たちのパッションに突き動かされ、どんどん大人が巻き込まれていくということです。
サツドラの皆さん、札幌市職員の皆さん、市民の皆さん・・・どんどん関係人数が多くなっていきます。
そして、みんなで学ぶ空間が創出されている。
昨今、探究学習が教育活動のメインストリームとなっていますが、これこそ本当の探究学習だと実感した瞬間でした。
詳しくは、本校校長の赤司さんのnoteにて。
展示会を契機に、より賢治さんへの想いを強く持った生徒たち。
12月に生まれて初めて、花巻と盛岡に向かいます。
そこで立ち寄った、もりおか啄木・賢治青春館で生徒から展示会の報告をした際に、青春館の方々から
「ぜひうちでもやりましょう!」
と声をかけていただいたことが、今回の展示会へとつながります。
生徒と活動をともにしながら、”いつか賢治さんの故郷で、展示会をしたい”という漠然とした想いがあったのですが、まさかそれが実現することになるとは・・・。
そうして、あれよあれよと実現してしまった、今回の展示会。
宮澤賢治と北海道との関わりについて、貴重な資料とともに、生徒たちの伝えたい思いが詰まった展示となっております。
4月16日まで、岩手県盛岡市の「もりおか啄木・賢治青春館」にて開催しています。
盛岡市がThe New York Times紙「2023年に行くべき52カ所」に選出されたこともあり、観光客&展示会への来場者も増えているとのこと。
入場無料です。
盛岡に行った際は、ぜひお立ち寄りください!
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