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スタートアップは実はフィードバックがかかりにくいんじゃないかという仮説

仮説です。

仮説です。
仮説っていうと、ちょっと賢そうに聞こえるよね。
でも的外れでもあしからず。仮、だからね。

フィードバックの総量も質も下がる可能性

スタートアップ, コンサル, 事業会社, PEで仕事をしてきました。
どの会社も色々学ぶことはありましたが、その中でもスタートアップは事業も組織もどんどん拡大していくこともあり、単位期間あたりに経験することの幅が広く、勉強になるなあと思います。巷でも「スタートアップ!成長!!ユニコーン!!!」みたいな話はよく聞く気がします。

そんな中で、スタートアップにおける個人の成長について考えてみます。
これまでの 自身の経験を振り返ってみると、色々と上司だったり同僚(ときには後輩)からもらったフィードバックによって気づけたこと、振り返れば成長に繋がったなと感じることがあります。その中で、スタートアップだと、適宜対処しないと、全社の中でもそのフィードバックの総量も質も下がる可能性を孕んでいるのでは?と感じました。事業も組織も大きくなるけど、所属するメンバー個人に対して、かかるべきフィードバックがかからなくなる可能性がある。結果として数年のスパンで見た際に、その人の成長角度は本当に理想の曲線に達していなかった可能性もあるんじゃないかってことです。
なお、主に人数50〜数百人くらいでいい感じに伸びて(そうな)スタートアップ、ビジネス系の職種をイメージしています。

理由

1, 「変化が早いから」で片付けられてしまいそうだから

スタートアップでは半年で組織の規模も売上も倍になる!みたいなことが起きます。半年前と全然違うことやってる、みたいなこともよくあると思います。そうすると、どこかで経験を積んだ人が入ってきて、「こういうものは〜で〜すべきで〜」とか言ってると、いやでも変化早いんでそういうことじゃないんです、ってもっともらしい反論ができそうです。

しかも、大体成長期は自律的に動けるメンバーが全方面でうおおおって頑張ってる状態だと思うので、そういう状態で半年・1年走っていると、その人個人の中でも試行錯誤のサイクルを何度も回すことになり、その人なりの「型」ができてきます。その「型」は会社として定義したものに近づくというよりも、ストリートファイトを重ねた結果形成されるタイプのものが多いだろうと推察します。

そしてその「型」で成果を上げてきた自信と自負もあるので、なかなかクリティカルなフィードバックをされた時に、上記のような反論をしてしまう確率が上がりそうです。フィードバックをする側も、後から入ったとか最近入ったとかだと目に見える成果を自分が上げているわけではなかったりするので、そっとしておくか… という判断を取りやすくなるかもしれません。
これが理由の(1)です。

2, 個人の日々の営みにあまり関係なく事業が伸びたりするから

次に、外的要因について。スタートアップは(大企業に比べて)個人の頑張りの積み上げが結果につながりやすいと思います。ですが、個人の頑張りと事業の成長は時間軸としてズレたりもするので、必ずしもこの半年Aさんが最高に頑張ったので売上が伸びた、でかったりすると思います(いわゆる営業だと直接結びつくかもしれませんが)。

売上が伸びて事業が成長してくると、会社が注目されるようになります。その中で働いている人たちも、比例して注目されるようになります。「あの会社の人だ」というブランドもつくかもしれません。そうすると、仮にその個人としては1年間でそんなに成長していなかったとしても、「すごいことした感」や「やったった感」が出てくることがある。

そうすると、事業も伸びていることだし、改善に向けたフィードバックよりも、「よくやったな!最高」みたいなコミュニケーションをされる確率があがるのではないかと思います。結果的に、その個人の行動やアウトプットに対してフィードバックがかかることが減る可能性を孕んでいます。
これが理由の(2)です。

3, コミュニケーション&アウトプットの型が必ずしも定義されてないから

最後に、より仕事の仕方に近い部分に関連して。
コンサルやPEといったプロフェッショナルファームでは、アウトプットの型やコミュニケーション(含む フィードバック)の型がかなり細やかに規定されています。よくある話ですが、スライドのフォントの文字のサイズや配色(もはやRGBレベルで覚えうる)や出典を入れる際のルールなど、そのルールだけで50枚近いスライドで解説するドキュメントがあります。そのルールは、グローバルでも統一されてるので、アメリカでもヨーロッパで仕事してた時も、同じルールでアウトプットを出すことができました。

一方、スタートアップでは、当然そこまで細かく定めません。そもそもコンサルで言うところの3種の神器(パワポ、Excel、thinkpad)も決まってないので、社外向けの資料作成の際にGoogleスライドを使うこともあれば、Keynoteかもしれないし、そもそもnotionベースのドキュメントかもしれない。アウトプットとして使うツールが定まっていないので、当然細かいルールも定めにくくなります。なので、クオリティの差分が生まれやい。でも「何が良いアウトプットなのか」があまり定義されてないので、フィードバックをかけづらくなります。あるべき姿が定義されてないと、その差分が可視化されないので、フィードバックを受けた側の納得感も下がってしまいます。

また、コミュニケーションについても、「何が良い所作で何がもっと改善した方が良い所作なのか」が言語化されているとは限らない、もしくは具体的にはなっていないので、フィードバックをする基準をフィードバックする側が色々考えなくてはいけません。コンサルを礼賛したいわけではないのですが、数ヶ月のプロジェクトの終わりにジュニアのメンバーに対してかけるフィードバックをする際、かなり事細かにこのレベルだとこれが出来ててほしいということが言語化されていたので、フィードバックがかなりしやすかった記憶があります。例え5歳上の部下に対して改善に向けたフィードバックをする際も、参照しているものがグローバルで共通のものなので、納得感を得られやすい(もちろん、こいつ鼻持ちならんなとは思っているかもしれませんが)。

上記のアウトプットならびにコミュニケーションの型が定義されていないので、いざしようと思っても、フィードバックをするコストが高く、もう事業も伸びてるし忙しいしいいや、となる。アウトプットに対していわゆる「赤ペンびっしり」みたいなことがあまり起こらない。結果的にフィードバックの総量も質も下がる構造があるのでないかと考えました。(なお、これはディスカッションをしてての所感ですが、エンジニアリングの場合は「早く、安定して動き、そして短いコードが良い」みたいな共通言語がある気がするのであまり論点にならなそう)。

じゃあどうする?

結局(コンサルビジネスでないのなら)ドキュメントといったアウトプット自体がキャッシュを生むわけではないので、美しいスライドを量産せよ!とは思いません。ただ、なんとなく事業は成長しているが個人が意外とついていってない、みたいなことはあるんじゃないかと思います。そういう時は、上記で書いたような、構造的な要因があるかもしれません。

変えられることは個人のマインド、及び仕組みです。
マインドとしては、フィードバックをしてもいいし、受けることはいいことなんだということを全社に伝えるようにする。フィードバックは気をつけないと、意図と反して個人への攻撃と受け取られる可能性もあるので、全社としてそういうのがいいことなんだというメッセージをする(そう思っているのであれば)。

そして仕組みとしては、そのフィードバックをする際の型を作ってあげる。1on1のあり方を(ギチギチでなくとも)定義するというのもいいかもしれません。良いフィードバックの例、みたいなものを作るのもいいかもしれません。加えて、アウトプットの型を定める意欲を持つこと。これは、上記のコンサルの例のように、細かく定める必要はないと思います。でも、別に文字サイズを54ptにするもか50ptにするのかを迷う意味はあまりないので、54ptに統一、などと定めることで意味のないことに頭を使う時間を削減できる点は見逃せないと思います。大事なのは、そのアウトプットの型を整えていこうねという意欲を共有し、変わってもいいから型を作って運用していくことだと思います。


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